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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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朝、エブラーナ城壁付近で、開戦を知らせる笛が響き渡った。
 
「―――いよいよ、始まりです。」
女官達、そして家老がリディアの脇に従い、最上階のバルコニーで外の様子を見守っていた。先日の様な不意打ちとは違い、今度は互いに陣を構えた体制での戦い。城下への魔法攻撃も封じた。中にはミシディアから派遣された魔導師も居る。
十分に持ちこたえる力はある。だが、指揮官不在のまま、勝利を収めるのは難しい。
一刻も早いエッジの帰還は、国中の者達の望みだった。
 
「エッジ様がお戻りになるまでは、なんとしても…」
壊滅と言う事態はひとまず避けられたものの、安心は出来ない。心配性の家老は目が覚めてからずっと、何やらぶつぶつと呟いていたが、ふとリディアの手元を見て声を上げる。
「…リディア様、その杖は?まさかご出陣されるつもりではありませんな!?」
「えっ!!だ、大丈夫ですよ!!」
リディアと、女官2人も一瞬身を震わせ、持っていた杖を後ろ手に隠す。
「ならばよろしいのですが、くれぐれもご無理はなさらんで下さいまし!!」
 
そういい残し、家老は城内の守りを確認する為に立ち去った。
 
「よかったぁ…ばれたのかと思った…」
 
実は今もっているリディアの杖は、自分の物ではなかった。
持ってきた小杖はオルフェに渡したまま、彼は出陣してしまった。魔力を増強する杖等の法器が無くとも、指先で印を作る事で、魔法や召喚獣を呼ぶ事は出来るが、あるに越した事はない。そんな訳で、城の中を何か変わりになる物を探していた時、迎えの間にある守護神の像に目が行った。
 
二つの像の背の壁にかけられた沢山の武器の中、辛うじて見える一番上の段に一つ小振りの杖があったが、忘れ去られていたのか、黒い塗りが古く剥がれていたそれは、手を伸ばす前にリディアの手元に落ちてきたのだ。
勿論、古い時代に異国の芸術品として作られたもので、本格的に法器として使える代物ではない。
「それでも…とりあえず、今だけ借りようか…」
とそのまま持って来た、と言うのが事の次第。
しかし、王宮の骨董品である事を思えば、家老には隠しておく方が無難だろう。
 
所々で、兵士達の叫び声と爆音が聞こえる。
「あ!!あそこ…右翼から投石が来た!!」
「大丈夫ですわ。あの距離では、城壁には届きません。陣の背後に弓兵団も回っています。」


3人は遠眼鏡を奪い合う様に最上階から戦況を見守った。やはり少数とは言え援軍の力は大きく、じりじりと反乱軍は城から遠ざけられる。昼も近い頃、近郊より騒ぎを聞きつけた同盟部族の友軍が駆けつけ、戦況は有利に運びつつあった。
 
「あっ!?」
不意に、西方を見ていたカレンが、遠眼鏡を手に二人を手招きする。
「リディア様―――!!あちらをご覧下さい!早くこっちへ!!」
「カレン、あなた遠眼鏡リディア様に渡さないと!」
指差された西の方を見渡すと、彼方にかすかに、猛スピードでこちらへ向かう一群があった。
 
徐々に隊の到着を告げる角笛の音が大きくなり周辺に響き渡る。遠眼鏡を通すと、エブラーナ王家の旗印がひらめくのが確かに見えた。



―――エッジだ…


―――エッジが帰って来たんだ!!!!


「エッジ―――――!!!!!」
 
「エッジ様のご帰還です!!西の方より、国軍の旗印が上がりました!!」
アイネが駆け出し、大声で城の皆に城主の帰還を告げた。その声を聞きつけた者は皆、西方の窓へ顔を出す。エッジの隊を見つけると、城内に喜びの声が上がった。
 
リディアは杖を天高くかざすと、その先端に意識を集中した。徐々に黒く塗られた先端が輝きだす。そして先端から幾筋もの光の筋が放たれ、輝きを増していった。
 
「リディア様…?」
カレンは間近のまぶしさに目を伏せながらも、リディアの行動を見守る。やがて光の筋は大きな二つの筋になり、杖の先端で回りながら、小さいながらも灯台の灯火のように城の上から輝いたのだった。


その光はエッジの隊にも届き、帰還に気が付いた反乱勢力は恐れおののき、エブラーナ兵達は歓声を上げる。


「若様…あれは!?」
「あれは…リディアだな!!あいつしかいねぇ!!」
エッジの率いた軍の到着に、反乱勢力に動揺が見え始めた。
戦場にたどり着いた軍は圧倒的な強さで、見る間に反乱勢力を後退させてゆく。
 
「投降しろ!!反逆の徒よ!!お前達を指揮した者は、既にエブラーナ国軍により拘束された!!」
一際大きな角笛の音と共に、近衛兵隊長が岩場に駆け上り叫ぶ。
その足元に、黒いローブを被せられた男が、縛り上げられ引き据えられる。フードが上げられあらわした面は、反乱を指揮したウォルシアそのものだった。
 
そして―――
 
「速やかに投降しろ!さもなくば立ち去り、二度とこの地に足を踏み入れるな!」
 
近衛兵隊長の後ろから現れたエッジの姿に、エブラーナ兵は沸き立つ。
もはや勝負は明らかだった。反乱勢力の兵達は途端に武器を捨てちりぢりに逃げ出し、その軍は見る間に影もなく消えてゆく。海賊や無法者の集まりでもある寄せ集めの軍に、正式な投降など知るものはなかった。
 
エブラーナ国軍は完全な勝利を収める事となったのだ。
  
 [101日目のプロポーズ 5]

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「うっ!!」
後を追って来た一人の魔導師が放った矢が、左の腕をかすっていた。

ウォルシアは、冷徹な微笑を浮かべ、地に膝をついたエッジを見下ろす。
「重ね重ね、お見事ですな…あの者は弓の名手。心臓を貫く矢筋だったものを…」
「とことん…汚ねぇ手を使うな…」

徐々に、左腕がしびれる。
かすったとは言えおそらく仕込まれていたのは猛毒だろう。
「まぁ、お静まり下さい。私はあなたの命までは頂こうと思っておりません。私が欲しいのは―――あなた様が継ぐべき王位。どうでしょう?取引は?」
ウォルシアは懐から小さい瓶を取り出し、エッジの前に掲げた。
「解毒剤はここにあります。貴方の刀と引き換え、と言うのは?エブラーナの戦士にとって、刀は命。それをお渡し下さい。私の持っている王勺と合わせ、王家の刀の変わりに王位の印にいたしますよ。」
「ふざけるな…」
 
呼吸が乱れるのは、毒のせいか、激しい怒りのせいか。エッジは震える手で、隠していた懐刀を右手に握り締めた。だが、余程の近間で隙を見せない限り、小さな刃でこの男を貫くのは難しい。
だが、この男に自分を生かす気は無いだろう。
「…ならば果てる事ですな。とどめは刺しません。見届けて差し上げますよ。あなたのご選択ならば、致し方ない―――ご安心なさい。」
男は屈みこみ、エッジの髪を掴んで引き上げた。
「あの美しい方…あなた様の翡翠の姫君は、この私の側室として、この国に残って頂く。噂では大きな力をお持ちの召喚士。是非、如何なる手段を使っても、我が意のままになる様にせねばなりませんからな―――」
 
「な…に…?」
一瞬の間に湧きあがった強烈な不快感。
だが、言葉の意味が一瞬理解できなかった。
この男がリディアをかこい者にする、と言う事。自分の野望に利用すると言う事。どの様な手段を使っても。
 
―――意のままなる様に…だと!?

その言葉の意味に気がついた時一気に、エッジの怒りが爆発し、全身の血が逆流する様な感覚に、僅かの間、猛毒の効果は力をなくしていた。
 
「てめぇ!!!」
エッジは懐刀を男に一閃し、なぎ払うと、次に自らの左手の傷口に刺す。鮮血が流れ出し、痛みと共にエッジの意識をゆり戻した。
「何!?」
そのまま懐刀を魔導師の方に投げつけると、魔導師は悲鳴を上げて倒れた。
「てめぇみたいな薄汚ねぇ外道には渡さねぇ!リディアを!この国を!!」
 
思わぬ反撃に腿に傷を負った男は、怒りの声を上げ刀を振り下ろした。
さすがのエッジも右手だけでは避けきれず身体を崩し、地面についた左腕は力を失っていた為完全に体を倒してしまう。顔を上げた時既に男はエッジの頭の上に立ち、刀を構えていた。
 
身をかわそうにも既に至近距離。エッジの背筋に寒気が走る。既に男の刃先は自分の胸元に向けられていた。
確実な死の感覚が、エッジの胸によぎる。
男は勝利を確信したのか、冷徹な中にも恍惚とした面持ちで、エッジの凍りついた表情を見つめていた。
 
―――これまでか…
 
「さらばだ、エブラーナ王子よ!!」
男が刀をエッジの胸に突き立てようとした瞬間。
 
不意に、二人の間に幾つもの光の筋が走った。
 
――― !!
 
それは男の周りを回り、必死にエッジから引き離そうとしている。
「な、何!?」
その内一本の筋がエッジの傷口にまとわると、妖精の姿を現し、見る間に腕の痺れは消えていった。

「シルフ―――!?まだ、居てくれてたのか!」
繊細な自然霊であるシルフは、血なまぐさい、戦士達が武器を合わせる場には、僅かの間にしか降りられない。だがそれでも彼女達は、最大の危機に陥ったエッジを助けると言う命令を忠実に実行したのだ。
男は何が起こっているのか判らず、まとわりつく光を必死に振り払っている。
 
エッジは礼を言い立ち上がると、視界をふさがれ逃げ惑う男に駆け寄った。
「覚悟しやがれ!!エブラーナの面汚しが―――!!」
 
その刀は最上段に構えられ、男の首筋に叩きつけられた―――
 
遠くで、近衛兵隊長がエッジを呼ぶ声がした。本隊の先頭が追いついたのだ。
  
 
[101日目のプロポーズ 4]
 

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「うっ…ぐっ…はぁっ!」
「!?トマス!!どうした!!」
突然、くないを受けたトマスが身を仰け反らせ血を吐き出したのだ。
「毒!?」
 
手段を選ばない。
かつてエブラーナの兵法にはその様な事が書かれていたが、常に命を奪うと言う前提は、時代にそぐわないと遥か前に封印された。
「…許さねぇ…!!!」
エッジの中に、エノールの街で軍が受けた屈辱がよみがえる。
 
「エブラーナ伝統の兵法を、時の流れに変える必要はない。卑怯者とは誉れよ!」
急を告げようと兵の一人が角笛を出した時、男の後ろに控えていた兵が矢を放ち、笛を砕いた。それと同時に黒衣の一群も刀を抜き、その中の半数近い男たちは杖を構える。
「たったそれだけの人数で、この数の魔導師に勝算はあるまい!!他も皆、エブラーナ古式忍術の精鋭、なまりきった王族など、無力と思い知れ!!」
「若様!!」
近衛兵隊長が駆け寄る。
 
「先をお急ぎ下さい。我らとて精鋭忍者の近衛兵、引けはとりませぬ!!」
「そう言うの、なんて言うか知ってるか?寝言は寝て言えって言うんだよ!」
大柄で屈強な近衛兵隊長に、エッジは片目をつぶって合図する。
「だがお前らに雑魚は任せた!俺はあの男をとケリをつける。頼んだぞ!お互い必ず、生きて帰ろうな!!」
「若様…武神の加護を!!」
 
近衛兵隊長とて同じだった。エブラーナ近衛兵の任務に誇りを持っているからこそ、王族を騙るこの男は到底許せるものではない。
隊長は兵に、他には聞こえぬ様に令を出した。
「武器には毒が仕込んである、敵は手段を選ばぬ輩だ。情けをかけるな!!」
エッジと男は既に2、3刀を交えている。兵隊長は他の兵、魔導師の攻撃からエッジを守る様に、二人を背にして刀を抜いた。
「王族を騙る不届き者だ!!叩き潰せ、エブラーナの戦士よ!!」
近衛兵隊長の声が、朝の山中にこだました。
 
エッジと銀髪の男は、未だ薄暗い木々の間を渡る様に、時に接近し、時に武器を投げ合いながら互いの力を図っていた。
「はぁっ!!」
男は、エッジが刀の連撃の最中に繰り出した蹴りを避けると、一気に間合いを詰め、仕込み刀の突きを繰り出した。間一髪逃れるも素早い動き。古式の忍術を体得している。廃王の末裔と言うのは本当かも知れない。


――― 生け捕れる相手じゃないかもしれない。


しかしそれとて、国を滅ぼすと追われた者だ。
 
「ほう…さすがに奥義を受け継ぐと言われている王子!お見事な腕だ!!」
「は!こそこそろくでもねぇ事考えるよーな、うつけモンとは違ぇんだよ!」
ウォルシアは醜く唇を歪めて笑う。
「フッ…絶対唯一であるエブラーナの王家の血こそ、世界を統べるのにふさわしい!!国の…王族の血の誇りを忘れ果てた者どもに成り代わり、崇高な理想を実現するまでよ!!」
 
一瞬、背筋が凍りつく感覚がエッジに走る。男の世界は、完全に閉じている。
「それが…お前の理想か!!滅んだ奴らは、皆同じ様な事ぬかすな!!」
国を守る為、自国の誇りを歪めた形で蔓延させた国は歴史に幾らでもある。その行く末は、国の荒廃以外に無い。
 
―――負けられない。この男には!
 
負ける事はこの男が玉座に座る事。
その結果国を荒廃させ、世界に恥をさらし、エブラーナの尊厳を貶める事だ。乱世が終わり、小さいながらも平和な生活を送っているこの国の人々を。
エッジとウォルシアは木々の間を駆けながら、兵達の戦場と離れ進み、ついには頂上と思しき平野にたどり着き、合間見えた。
 
ここから東は、エブラーナ城の直轄領地だ。
エッジは一瞬後方を見やり、朝日に照らされた城の方角に異常が無い事を確かめた。
 
「ここから先は…行かせねぇぜ。」
「…よい景色ですな。あなたのこの世の見納めには。」
「ほざけ!!てめーにそのまま返してやるよ!!」
再び刀が突き合わされ、両者は離れる。
 
エッジの脳裏には、先ほどから一つの疑問があった。この男は、火遁等と言う忍術を体得しているのだろうか。
これだけの体術の応酬では、忍術を使うのは隙を作る事になるだろう。とは言え、南側は緩やかな崖になっている。うかつに南に背を向けると想定外の忍術の攻撃を食らい、転落するかもしれない。
エッジがウォルシアの横に間合いを縮めようと飛ぶのと、ウォルシアが気合を一閃するのは同時だった。
 
「砕破!!」
 
途端にエッジのいた場所から、小さな爆発が起こる。
 
―――!!
 
「忍術は、こう言った形もあるのですよ。私達には煙玉の術はこう伝わっております。逃げる為の術ではなくね…」
 
―――何てヤツだよ…
 
今の爆発は、まともに当たれば足が吹き飛んでいたかもしれない。
「ハァッ!!」
男は気合と共に、次々に小さな爆発を起こす。
火遁、雷迅、煙玉の融合術。最初は危うかったが、初動動作を見切った後は難なくかわし、エッジは間合いをつめようと飛び上がった。
 
―――!!
 
その時。視界の端に黒いローブの影をが走る。
その者の腕に小弓が見えた時、エッジは既に避けきれない空中に居た。反射的に体勢を変え、身を反らせたが、瞬間に痛みが腕を貫いた。
 

[101日目のプロポーズ 3]  
 

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プロフィール
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tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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