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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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 7 

戦は勝利に終わったものの、エブラーナ城内では慌しい動きが続いた。
城下の被害は早急な対策が取られ、バロン派遣の白魔導師達もしばらくエブラーナ国内で活動してくれた為、街の復興は早かった。
 
また、エノールの街の不正な経理の流れを解明したが、知事に接触をしていたウォルシアの手先は既に自害していた。そしてバブイルの洞窟の、厳重に隠された隠し部屋の中から、失われて久しいエブラーナの王勺が見つかったと言う事は大いに城内を沸かせた。
 
エノールの街で、交渉の席に代表としてつき、爆発に巻き込まれ殺された哀れな男は、幼少の頃少数民族の集落から人買いにさらわれ逃げ出し、行商人に拾われて商人となった者だった。微かな郷愁もあったのだろう、少数民族の中では絶大な力を持つ存在である廃王の末裔に目をかけられ、自治と言う言葉を信じ彼の為に働いた。
 
知事を支配していたウォルシアの手先達と共に、エノールの自衛団を集め内乱の情報を流し、陽動された国軍の出発と共に、反乱勢力の本隊が海路でエブラーナの城に向かう計画は順調に進んだ。彼は交渉を無難にまとめたらすぐに国外へ逃げ出すはずだった。自分が消されるとは全く思いもしてなかったのだろう。
 
反逆者ウォルシアは裁判にかけられ公開処刑の判決が下ったものの、かつての王族と言う身分を考慮し、200年前にさかのぼり廃王の血を引く者、全ての王族身分を剥奪、配下の海賊・山賊が彼に納めていた金品などの全財産を没収、生涯孤島の神殿に役職・身分を持たぬ一介の神職として奉仕、関わりを持とうと接触した者は厳罰に処する、と言う温情ともいえる恩赦が与えられた。
 
彼には妻と幼い子が居たが、同じ様に遠く離れた砂漠の神殿に移し、生涯を神職奉仕に努める事とされ、妻子の命を助けられた事でウォルシアは身分の剥奪と神職出家を受け入れ、自ら王勺のありかを教えたと言う。
また、少数民族の自治においては、元々いずれは歩み寄らなければいけない問題ではあった為に、徐々に話し合いを進める事になった。
そして反乱勢力の魔導師達は魔力を侵略利用したとして、ミシディアに引き渡され裁きを受ける事となった。
  
この内乱でエッジの手腕は更に評価を高め、エブラーナ新王としての即位を望む声も大きくなりつつあった。
 
戦の区切りがついてからと言うものの、周りはエッジとリディアの事を静観している様だったが、王妃候補としてのリディアの扱いに戸惑いを感じている様子も伺えた。勿論誰からも反対する声はないが、特殊な状況下で出来上がってしまった事実をすんなり受け入れがたい、と言うのはあるのだろう。
 
―――どうしたい、か…
 
内乱の後処理でエッジは城を空けがちになり、現実的な不安が時々リディアの心をよぎっていた。ローザから問われた言葉にも、答えを出せずにいる。
 
幻界で大切に育てられた。
戻ってからも、セシルやローザ、エッジ、影ながらカインにも守られていた。
そんな自分が本当にエブラーナで、王子と共に一生生きてゆけるのだろうか?
生活も変わる。覚える事もたくさんある。意地悪な人もいるかもしれない。
 
―――考えていても仕方ないけど…
 
逃亡し、今になって戻って来た大貴族達は、エッジと共に国を守ったリディアを歓迎してくれたが、そうせざるを得ないと言うのもあるだろう。
リディアが忍術に縁の無い事を残念がる声も少なからずあり、また、若い女性ながら魔法に長け、幻獣を召喚する様に驚き、妖かしの化身では、と心無い事を言う者もいた。
ただそう言った事は無礼な下々の噂に過ぎないし、大臣達や武官貴族の中ではエッジの不在に城を守る為に奔走したリディアの評判は良かったのだが、それはリディアが知る由もなかった。
 
もっともリディアにとって大切な事がもう一つあった。
魔道師達の処罰の報告の為、エブラーナを訪れたミシディアの魔道師からエッジに告げられたのは、思わぬ場所からの言葉。
 
「幻界の王と女王は、今回の件、非常にリディア様の身を案じておられます」
 
リディアにではなく、ミシディアを介して直接エッジに告げられた言葉。
幻界は外界との繋がりは無いに等しいが、人間界に大きな用事のある時だけ、極秘にミシディアの長老や世界の重鎮を頼る事もあると聞いたが、人間界の小さな国の内乱と言う、幻界に関わりのない事に口をはさむなど考えられない事で、エッジに対して何かを言わんとしている事は明らかだった。
 
―――私、このままここにいて良いのかな…
 
―――何か忘れている気がする。でも…



  [101日目のプロポーズ 8]

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『   ―――ローザへ
 
ローザ。
お陰で無事、エブラーナは危機を乗り切る事が出来た様です。
本当にありがとう。魔導師を派遣してくれた事も勿論、ローザが私に勇気を与えてくれました。
これから色々、反乱勢力の首謀者・魔導師の事、また少数民族の自治の事、国内の被害の事で色々あるけど、エッジと皆は一丸となって乗り越える、と張り切っています。
 
―――私は…
 
正直ね、色々迷っているんだ。
実はミシディア長老から知らせが来て、幻界は私が、戦に巻き込まれた事をとても心配している様だ、って言うの。
人間界に滅多に関わりを持ちたがらない幻界から、そんな知らせが来るなんて…
あと、この戦いで私はすっかり“エッジのお妃様”みたいになってしまったの。皆の力になりたい、って頑張って受けたんだけど、色々な事がありすぎて、急に不安になっちゃって…
 
幻界の皆にも、心配かけてるのに黙ったままでいいのかな、とか、でも今エブラーナを離れたらいけない様な気もするし…
 
う~~ん。どうしていいのか判らない。
 
ローザ、私、どうしたらいいんだろう?
 
 
                         ―――――リディア 』
 
 
 
 
 
『  ―――エブラーナ王子正妃候補 様 (…早いかしら?)
 
 
エブラーナの内乱が沈静化した事、心からお喜び申し上げます。
色々悩んでいる様ね。えーと、つまり…マリッジブルーかしら?(にっこり) あなた達程、お似合いの二人も居ないと思うけどな?
 
…って事はさて置いて…
 
たくさん、考え事があるようね。無理もない。でも…
 
でも、そうね。色々な悩みよりもまず一番に、あなたがどうしたいのか、って言うのをはっきりしないと、エッジもエブラーナの人々も、幻界のご両親やお友達も困ってしまうと思う。
 
じゃあまず、エッジと一緒に居てもいい?幻界に帰りたい?何処にあなたは居たいのかしら。いいえ、それとも、バロンで魔導師の仕事をしてみたい?(歓迎するわよ。勿論!)
何があなたを迷わせているのかしら?
 
エッジの傍に居たいけど、幻界が心配なら、一度帰ってきちんと王と女王に話をすればいい。逃げる事でも、おかしな事でも何でもない。
成り行きでエッジの傍に居たけど、本当は幻界で暮らしたいなら、そうエッジに言わないと。本当にあなたが望んだ選択なら、それは仕方ないと思います。
 
 
―――リディア。
 一人で悩まないで、あなたを愛してくれている皆に、そしてエッジに相談して下さい。
彼はあなたを戦の一切に関わらせない事も出来た。民の為だけにあなたに王妃の役をお願いする程、弱い男ではないと思います。あなたへの信頼と取って間違いないでしょう。そしてあなたも、エブラーナの人々の為だけに、その役を受けたのかしら?
 
不安になるって言うのは、誰でもある事です。
新しい道に踏み出す時や、誰かを、心から愛した時には特にね。
 
リディア。あなたの幸せを、心から祈っているわ
 
 
 
       
                            ―――ローザ 』


[101日目のプロポーズ 7] 

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「勝った―――エッジが、勝ったんだね!!」

勝利を告げる城壁の鐘が鳴り響いた。兵達の勝どきの声を聞きながら、リディアは女官2人と抱き合って喜び合った。
 
「皆、本当に良かった!!」
「リディア様のお力あってこそですよ!!」
顔を上げ、身を翻して駆け出すリディア。二人は急いで、その後を追いかける。
「エッジを迎えに行ってくる!!」
「あ…お迎えの用意…ってそんな状況じゃないわ。行きましょカレン。」
「そーね!何してもいいって声が今、天から聞こえた、以上!!」

家老は回廊を猛スピードで通過する三人を必死で呼び止めたが、全く気付かず走り去る。中庭を通り過ぎ、街の人の避難場所となった城門までの庭園にたどり着くと、ここでも人々は手を取り合い、抱き合って喜んでいた。

途中、馬で城に向かってきたオルフェと鉢合わせ、やっとの事で追いついた家老と輪になって無事を喜びあった。
「リディア様―――エブラーナ軍、完全勝利でございます!!」
オルフェの目にも涙が浮かぶ。
「良かった!!本当に良かった―――!!」
「っと…リディア様…それは?」
 
しかしふと、オルフェはリディアの手に握られた杖を見て声を上げた。  
そう言えば、とリディアも手にしていたものに目を落とすと、黒塗られた塗装ははげ落ち、所々亀裂が入っている。
「これ、玄関に飾ってあったのを借りちゃったんだ。壊れちゃったな…」
「リディア様…ではこれは、エブラーナ城にあったのですか…?」
オルフェの視線の先には、小さな杖には不似合いな大きな先端。そこもひびが入っていたが、よく見ると中から鮮やかな翠色がわずかにのぞいていたのだった。

「何かな、これ。」
手でひびの入った先端をつまんで取り除くと、握りこぶしほどもある、龍の模様の施された翠色の珠がリディアの手に零れ落ちる。
「こんなのが入ってたんだ。頭でっかちだと思ったよ。」
家老が目を見開く。
「リ…リディア様…まさかそれは…お…王位の宝珠では!?」
「へ…?」
手の平の中でそれは穏やかに光を放っていたが、やがて静かにその光を内に秘める様に収まって行った。だがリディアは驚く様子も無く、そうなんだと頷くと、家老にぽん、と鮮やかな宝珠を渡したのだった。
 
「じゃあ、大切なものなんだね!家老さんから、エッジに渡して下さい!!」
「ひ、ひぇええええええ~!!!」
 
リディアはかまわず駆け出し、女官もそれに続く。オルフェは笑いながら、家老に布の袋を差し出した。
「本当にエブラーナの王位の宝珠なら…リディア様のお手に戻られたのも、何かのご意思かもしれませんね。」
「まぁなぁ…ワシは判ってはいたんじゃよ。オルフェ…あの方と知り合われてからの若の変化に気がつかぬ程、ワシも馬鹿ではない…じゃが、老婆心ならぬ、老爺心でな…」
家老は少しだけ気の抜けた、ともすれば寂しそうな表情を一瞬浮かべたが、黙って頷いたのだった。

「参りましょう。エッジ様のご帰還です。」

王宮前の広場には、どこからともなく街の人が集まり、大通りを進むエッジの隊を待ち構えていた。
隊の中ほど、馬に乗せられ頭からローブを被せられた男に、人々は口々に謀反人、反逆者と罵声を浴びせたが、男の乗せられた馬には兵の警護がついていた為に暴動には至らなかった。

しかし、王宮の方から飛び出してきた一人の少女を見た者達から、にわかにざわめきが起こる。

―――やっぱり、あの方だよ!!
―――本当だったんだ…

隊列の先頭が王宮前の広間に差し掛かると、先頭の男は乗っていた馬をひらりと舞い降りて、真っ直ぐに駆けて行った。
「若様!!その…民の前ですぞ!!その辺は程ほどに…って若様!!」
控えていたガーウィンが申し訳程度の静止をするが、男は足を止めなかった。
 
「エッジ…!!!」
少女はその男の姿を見つけると、同じく真っ直ぐに駆け出した。二人は広場の中央で出会い、少女は涙で目をはらし、男は少女を抱き上げて再会を喜んだ。
「エッジ!!!エッジ――――!!!」
「リディア!!!」

それを見ていた人々のざわめきは大きな歓声となり、広場を埋め尽くしてゆく。

―――よかった、エッジ、本当によかった!!

エッジは歓声の中、リディアを抱きしめていたがその手を離し、小さな顔をまじまじと見つめた。
「な、何よぉ!!」
「いやぁ、おめーやっぱり、その方がいいわ!面倒くせぇ出迎えよりな!!」
エッジの刀を受け取った事を思い出し、それだってあんたの差し金じゃない、と言おうとした時。

「じゃ、おし、早速ご褒美を頂くぜ!!」
いきなり自分の唇に乱暴に喰い付きかけたエッジに、リディアは目を丸くする。
「ななな、何すんのよ!!こんな所で―――!!!」
全力の突き飛ばしに、ふらふらとよろめくエッジの身体。

「リ…リディア様…」
その場の皆が目を丸くするものの。二人は既にいつもの言い争いに入っている。
「いてーなてめー!王子様への反逆罪だ!一生俺の傍に拘束の刑~~!!」
「冗談じゃないわよ!!あんたの方こそずるいじゃないの!?」
「なにぃ~!?約束破りはずるくねーのかよっ!!」
 
間近に迫ったエッジの顔には幾つもの傷が残る。リディアは思わず手を伸ばしそうになったが、口をへの字のまげてその頬を押さえた。


「え、えええ、えーいっ!!!!」
気合と共に繰り出されたのは、固く唇を結んだリディアの口付けだった。鼻がぶつかり、いでっ、と声を上げたエッジは、途端に満面の笑みに変わる。
「うわ~!!俺もう死んでもいいわぁ!!!」

「わ…若様ぁ~…」
近衛兵隊長にも何者かが忍び寄る。その大きな影はいきなりガーウィンを背後から羽交い絞めにした。思わず兵士達は飛び退る。
「あんた!無事だったんだね!実家爆発しちまったよ!でもあたしは無事だよ!」
「ゴ、ゴモラ!!良かった…って、部下の前だぞ、止めてくれ!!く、苦し…い…」

半ば家来達は呆れ果てたが、にぎやかな騒ぎの波は、夜まで延々とエブラーナを歓喜の渦に巻き込んでいたのだった―――
 






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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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