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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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good morning 


朝から騒がしい。 
睡眠が浅くなると、この男は時々とんでもない寝言を吐き出す。大体は決まったものだが、それがまたおぞましい事限りない内容だ。
お陰でこちらはいつも寝覚めが悪い。
「おおぅ~ダメだ~リディア~お兄さんは我慢できないぞ~」
 
また始まった。まったく、まだ夢の中か。何してんだこいつは。やめろ気持ち悪い。そもそもどうしてこいつはこんなに都合のいい夢ばかり見るんだ。少なくとも、俺と同室の時は殆どだ。

などと幾ら恨み言を言うなり思うところで、隣のベッドの上で、おそらくは熟睡している銀髪の男は、モフモフモとわけの判らぬ効果音を口から発しながら、一向にその奇ッ怪な動き―――何か、小さなものが横に隣に寝ているかの如くにシーツに身体をすりすりしている―――を止めようとしない。
「逃~げ~る~な~」
 
遂には床に落ちて転がりだした。しかもシーツを抱きしめながらこちらに転がってくる。
何とおぞましい姿。誰か助けてくれ。
 
ガシッ―――
 
「いってぇ~~~!!!」
最早勘弁ならず、俺は起き上がり床に転げた男の尻に蹴りを入れた途端、眠っていたとは思えない声でそいつは目を覚ましたのだった。

「医者を呼ぶか。それとも、リディアが良いのか?」
「カイン・・・起こすんじゃねーよ。てめー・・・いいところだったんだぞ!?」
床からのろのろと立ち上がるこの男。ぼさぼさの短髪で恨めしそうにこちらを見る眼差し、おおよそ年上とは思えない。しかも王子様とは世も末だ。知るか、いい所だった、なぞ。
 
「エッジ・・・お前と同じ部屋だと、明け方が辛い。言ってる意味、判るな?」
「ああ!?俺だって、好きでてめーと同じ部屋で寝てるんじゃねぇ!!」
邪魔したとでも言うのか、こっちが。
「全く同感だな。それで結構。先に水場、使わせて貰うぞ。」
こら待てカイン、てめー朝からケンカ売んのか、おい・・・ 後ろの声を無視して、部屋を出る。

全く、あの男のリディアに対する入れ込み様と来たら。 
夢にまで見る位だが、本人の前では憎まれ口の叩き合い。無意識か計算か判らないが、ともかくも怖がらせない様に接している。泣かした女は数知れず、等と自称する割には妙に紳士的な事じゃないか。泣きを見るタイプだな。
結構だが、俺の隣で妙な夢は見ないでくれ。

井戸の近くにこしらえてある水場へたどり着くと、思わぬ先客があった様だった。
 
―――ごしごし
 
そう音が出る位に、懸命な手つきで髪の毛を拭いている。時々ふるふる、と頭を振るい、顔にかかった水をはねのけていた。
 
同じ女性でも、ローザとはまるで違う身づくろいの仕方。それでも朝日に映える碧髪のせいか、その不器用な仕草までも微笑ましく映ってしまう。一瞬でも幼少の姿を知っている自分には、変わらず子供にしか見えないが、あの男が惹かれるのも判らないでもない。
「リディア。」 
背後から声をかけると、少女は一瞬ぴくり、と驚いて振り返った。
「おはよう、カイン!早いんだね。や~だ、まだ誰も来ないと思ったのに。」 
慌てて髪をごしごしタオルでこするが、そんなにすぐに乾く物でもないだろう。
 
「何してんだこんな所で。髪は普通、風呂で洗うものだろ。 昨日風呂には入らなかったのか?」
「入ったよ!身体は洗ったってば。眠かったから髪は洗わなかったんだ。朝流せば良いかなって。」
そして相変わらずごしごしと手荒に髪をタオルで丸めだす。さらには絞ろうとしだしたので、慌ててタオルを取り上げた。
「・・・分け目はここか?」
「うん。あれ、拭いてくれるの?」
「髪が痛むぞ。全く。ローザに拭き方を教わるんだな。」
手荒なりにしっかり拭いていた様で、地肌の方は乾いている。
髪のかたまりを手櫛で整えてから毛先をタオルに包み、丁寧にぽんぽん、と押さえてやると爆発寸前だった髪の毛は徐々に落ち着きを取り戻した。

ローザの子供の頃からの方法を真似しているうちに、自分にも身についてしまった髪の拭き方。見た者は意外な顔をする事も多いが、髪の毛が早くまとめやすいので気に入っている。
 「ありがとう!そっか、カインも髪の毛長いもんね。でも、私よりさらさらしているし、すごいね。ちゃんと手入れしてるんだね。」
リディアはと言えば、乾きだした右側の毛を手に取り、くるくると丸めていた。
「・・・頭を動かすな。」
「えっ?何?」
 
ぶわん
思い切り頭が振られる。
「動かすな、と言ったんだ、全く!」
こいつの子供の頃の面倒なんて、俺はとても見れたものじゃないだろう。つくづく、セシルの懐深さには脱帽するというものだ。いや、親心と言うヤツか?
小さな頭を自分に預けて嬉しそうにしている姿。確かにいい子、と言う言葉も合うだろう。

シュッ…
 
「…」
「どうしたの?カイン」
「リディア。いいか、動くなよ。」
落ちてくるはずのない様な物が足元に刺さっていた。
「うん。今度は大丈夫だよ。」
 
シュッ…
 
「…」
「カイン、今何か言った?」
今度は反対側の足元だ。
「あのバカ忍者…」
がさっ、と少し離れた木の上で一瞬音がした。
 
「…もう大丈夫だ。リディア。そろそろローザを起こしてこい。」
「うん。ありがとうカイン。じゃあね。」
がさごそっ
さっきの木の上で、また音がする。いつまで、隠れているんだか。

と、その時。
「どおりゃあぁぁあっ!!覚悟ぉおおお!!!」
 
首を動かすのも億劫だった。
不意をうったと思ったのか、大声でそいつは真上の木から落ちてくる。そのまま左に身をかわし、横をかすめたその脳天に拳で一撃を見舞ってやった。
 
ごちん、と派手な音がして、そいつは地面に倒れる。
 
「痛ってぇ~!!!」
「頭上攻撃は竜騎士の得意分野だ。あんな見え透いた音に引っかかると思ったか…全く。」
足元に刺さったくないは、綺麗に離れた木から投げられた方向に刺さっている。だが、見え透いた事だ。
「まぁ、真上からこの角度に刺せるのは、見事だがな。」
「て、てめぇ…頭の急所に当たったぞ…」
 
エッジはのろのろと立ち上がるが、たまらず腰をぺたん、と付いた。油断していたのはこいつの方で、綺麗にこめかみに一撃を食らった様だった。
 
「もう一度聞く。医者がいいか?リディアがいいか?そんな調子じゃ、リディアを嫁にはやれんがな。」
リディアを嫁に、の言葉が効いたのか、目を吊り上げるエッジ。
何がこいつをこうさせたってリディアの事位しかない。皆の子供みたいなもんじゃないか。何を怒っているんだ、この男は。なんて、こんな事をこいつに言う辺り、俺にも親心が伝染したかな。
「てめぇ、いつか、ブッ飛ば…す…」
 
―――バタン。
 
「おいリディア!!エッジが怪我した。手伝ってくれ!!」

宿の中から、パタパタと小さな足音がかけてくる音が聞こえた。全く、揃いも揃って幸せなヤツらだ。



  END

 

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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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