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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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そして。
その頃、エブラーナ城のリディアの元に、ローザからの筆魂の手紙が届いたのと、エッジが魔物による焼き討ちにあったとの情報が入ったのは、ほぼ同時だった。
エッジは既にエノールへ向かったが、それは忠臣達以外には極秘とされ、怪我をして待機している、と言う話が流れていた。
 
「エッジが…もしかしたら、この城も…?」
リディアは震える手先で、一句も漏らさぬ様にローザの手紙の内容を確かめている。
「リディア様…!?」
差し出された手紙は魔導師の文字ではなく共通語で書かれ、バロンの印章とローザの署名がされていた。リディア以外の人間に注意を促す狙いがあるのだろう。
三人は手紙を受け取り、覗き込んだ。

 
『―――リディア
 
幾つか気になる話があるので伝えます。
今から言う事に何か関わりがある様なら、すぐに行動を起こした方がいいわ。
 
まず、ミシディアが一人の魔導師を拘束しました。
バロン貴族の依頼で、禁忌の品である兵器『ボムの指輪』を作ったとの事。
それが海商人を通じエブラーナへ入った様です。この者を拘束し取調べを
した所、エブラーナ王族を名乗る者に頼まれ、高値で請け負った、との事。
その者は『国賊征伐』目的と言い、王家の印章の入った杓を示した様です。
 
その貴族の名義で、エブラーナのエノール港より、バロンへ輸入品運搬船が
10隻入港予定と記録があるのですが、実際こちらには向かっていない様です。
バロン近隣の港では、そう言った船は一切目撃も入港の記録もないと。
船の記録を改ざんし、どこかでその船が悪用されている可能性があります。
 
あと、これは関係あるのか…
少し前、エブラーナからアガルトに行く船に魔導師が保護されました。
その者はミシディアへの渡航を強く希望しており、アガルトの漁師が
ミシディアに届けたとの事。もしかしたら、関係者かもしれません。
 
リディア、今すぐ、エブラーナの城の守りを固める必要があります。
この手紙を、信頼できる人に見せてください。
動きがあったら一言でもいいわ、すぐに伝えて下さい。
 
                     ―――――ローザ・ファレル 』
 
 
「これは…禁制の兵器がエブラーナに入り…これ、エッジ様を焼き討った兵器の事!?更にエノール出港の船が悪用されている可能性がある、と言う事は…」
頷いたきり、震えるリディアの身体。
「これは…これは村一つ、焼ける程の力があるの…」
「何ですって!?そんな物が…家老様に報告しましょう!!カレン、一緒に来て!!」
カレンとアイネが部屋を飛び出すと、リディアは椅子に倒れこんだ。
 
―――間違いない…ボムの指輪…!
 
ミストの村を焼き払った、忌まわしい魔物の兵器。闇で高額で取引される、禁忌の品の一つだ。魔物による焼き討ち、と言ったらそれ以外考えられない。そんな物に、まためぐり合うなんて。
 
「リディア様!?」
カーテンの引かれた自分のスペースに入り、手早く服を着替えるリディア。
「城の外を見てくる!!」
オルフェはとっさに、その手を強く掴んだ。
「いけません!!お留まり下さい!!」
「だって、今にも誰が来るか判らないのよ!?」
 
しかし細身の魔導師は、普段の穏やかさとは裏腹に力を緩める事は無かった。

「いけません。今のあなたは―――王族も同然です!!ここに居るのはご本意ではないのかもしれない。でも、今は、あなたしか居ないのです!!」
「どうして!?私、まだ何日かしかここにいないよ。幾らでも皆―――側近の人とか、家老さんとか、エッジを支えてきた人達が居るじゃない!!私は何もないよ!!城が焼かれたらどうするの!?あの指輪―――」
「リディア様!!」
 
―――!!
 
普段は穏やかな目の厳しさに、リディアは我に返る。オルフェに掴みかかりかけた手を離し小声で、ごめんなさい、と呟いた。

「…ご心労もさぞと思います。ですが、エッジ様はあなた様を頼られて、あの様なお願いをされました―――勿論簡単な話ではないと、あの方も判っていた。エブラーナ国内の身勝手な事情である事、承知しております。ですが…そうせざるを得なかったエッジ様のお気持ち、どうかお汲み取り下さい。」
「…あ…」
膝をつくオルフェの姿。
 
―――どこかで…
かつてのローザの言葉。氷の壁の前で、幼い自分の前にひざを着き、優しく顔を覗き込んでくれたローザの姿。
 
―――リディアお願い。勇気を出して!この氷を溶かせるのはあなたしかいないの!!

ボムの指輪のために、恐れていた炎。自分が炎の魔法で、氷に閉ざされた山の入り口を開く事が出来たのはローザのお陰だった。
 
―――リディア。今は私達の分まで、エッジを助けてあげて―――
―――リディア―――城を頼んだ―――
 
強く杖を握り締めていた指を、一本一本緩めてゆく。
 
―――私はここから…離れちゃいけない…よね…

「…うん。判ってたの…」
リディアは閉じていた目を開いて、オルフェに答えた。
「私の母は火事で亡くなって、だから…街が焼けるって思ったら…ごめんなさい。だからもう立って、ね?」
 
瞬間に、胸に去来した様々な思い。
村を焼いた指輪。それを持ち込んだセシルに対しての憎しみは今は完全に信頼に変わっているが、あの出来事が忘れられる訳はない。
「ごめん―――でも、あなたでよかった。何だか、セシルに怒られたみたいだったよ。」
「…リディア様?」
 
そして、オルフェが立ち上がると同時に、部屋には家老が走りこんできたのだった。
「リディア様!!!こ、この手紙は…」
「はい。紛れも無く、バロンの次期王妃ローザ様からです。ごめんなさい…勝手に情報収集をしてしまって…」

秘密裏に進めてはいたけれど、さすがにもう隠す訳には行かない。余計な事をしたのかと、いささかばつの悪い思いもある。
「と、とんでもございません!!実は、先ほどのエッジ様陣営の焼き討ち…どうやら禁制の兵器が使われたらしい、との事でしたので、おそらくこの指輪かと!なればすぐにもう一つ、海岸の監視を強める必要があります。わたくしどもで城下に残った隊は動かすしかありません。」
「…私に出来る事があったら、教えてください。」
自分が口を出すなど、おかしな話かもしれない。ちらりとオルフェに目をやり、つぶやく。
「これで、いいのかな…」

見えない敵。だがそれは確実に、エブラーナへ近づいている。
そして先日自分達を襲った魔導師の遺品を調べた所、恐らくは自分達で作った杖とローブに、ミシディアの特徴が見られるのが判った。まさかあの国が何かをたくらむ事は無いだろうが、何処が敵なのかもわからない。ミシディアに渡航した魔導師は、関係者なのだろうか。
 
「オルフェ…あなたが私の代わりに、城下に行く事は出来る?」
「可能ですが…どういった事をすれば…」
自分の持っていた星屑が模された小さな杖を渡したのだった。
 
「城下を見回って、魔術的な仕掛けがないか調べて欲しいの。この間、城の外を回った様に。例えば城下に、外で見たような魔法陣が作ってあったら、小さな物でも爆弾や…炎や毒の魔法を直接送ったりできる。だから―――」
杖を軽く振ると、先端から星屑の様な閃光が迸る。

「これで魔力を増強すれば、大体は探知できるし塞ぐ事も出来る…あと、魔力をここから込める様に放出すれば、小さな光の弾が幾つも飛び出す。炎の属性はないから、火事の危険は少ないけど…どうしても、って時に使って。」
オルフェは、高等な魔法の込められたロッドを前にやや戸惑っていたが、やがて頷いた。
「判りました。では、城下に赴きます。」
「気をつけてね!!」
 
オルフェを見送り、リディアは息をつく。シルフからエッジの無事は聞いていたが、それがなければと思うと寒気がした。
敵はまずエッジを殺そうとした。少数民族独立と言うのは兵を集める建前だろう。相手の目的が最初からエッジ、そしてエブラーナ城と思えば全て納得が行く。回りにあった小さな魔法陣は、城内、城下に出入りした残骸。城に奇襲をかけるのなら、無防備なうちに城下に何かしら攻撃の準備をしてあってもおかしくない。再び作られたエブラーナの城壁は堅固だ。投石器や火器よりも、内部から壊したほうがいいだろう。

港町に入り込んでいたなら、恐らく相手がいるのは海。エノールの街を支配し、海運記録を改ざんし物資や兵を集め、密かに計画を立てていたのだろうか。エブラーナ城は海から近い。しかも、今回の内乱では城内の兵を集めた為、港は無防備な状態になっているはずだ。
 
―――全ては戦の準備…
―――エッジと精鋭をこの城からおびき出し、始末し、そして―――
 
「この城を、奪う気なのね…」
エノールの街でのエブラーナ国軍への侮辱。味方を犠牲にしてまでのその策略、エッジの気性を良く知っている。恐らく出陣してなくても、あの話を聞けばすぐに城を飛び出したはずだ。そこを焼き打つつもりだったのか。
幸いにも難を逃れたエッジは今、エノールへ向かっている。命を奪うという狙いは外れたものの、城は手薄になりエッジは城から最も遠ざかった。まだ城内にも守る兵はいるだろうが、エッジが居ない今、少ない人数でどう統率を取ればよいのか。
 
「リディア様…」
戦支度を終えた女官2人が部屋に戻った。
「家老様よりのお言伝でございます。大事があった時は、リディア様は、お城をお出になってはいけません。もしもの場合は、魔力をお使いになり、お落ち下さいます様―――」
「わかったよ。」

そう言いながらも、既軽装の若草色の服に袖を通す姿に、二人は苦笑する。
「…と言ってもお止めは出来ませんわね。何処までも、お付き致しますわ。ね。カレン。」
「勿論です。」
「ありがとう。あなた達も、だめって行っても来ちゃうよね。」
「言わずもがな、です。」

カレンがごそごそと包みを取り出し、いくつかの砂糖菓子を二人に手渡した。
「貴族用のお菓子から、失敬しちゃいました。いいでしょう?食べちゃいましょう。」
「ちょっとカレン~…ま、逃げ出されてしまった方々ですもんね。」
「そうだね。ちょっと元気、出さないとね。」
 
三人の顔に、笑みがこぼれた。



[廃位の王 10]  へ

 

 

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エノールの手前にある集落で、情報収集をしていたエッジの元に、
エノール駐留隊からの知らせが来たのは、出陣二日目の事だった。
 
「何だって…!?」
エッジは報告を聞き、立ち上がった。
「…恐らくは、交渉に出向いた反乱勢力の代表は捨て駒だった、と言う事でしょう。」

爆発に巻き込まれたエブラーナの護衛が一人、奇跡的に一命を取りとめ、意識を回復した。そしてその報告内容は、驚くべき物だった。

先日の反乱勢力との交渉で、互いの代表者は5人の精鋭護衛を引き連れ、街の商工会施設で席に着いた。しかし、その護衛の見た限りでは、反乱勢力の代表で来たのは商人風の男であり、代表格の様には見えなかったと言う。
 
特に衝突もなく要求を出し終わり、皆が席を立とうとした時、その護衛は出口に一番近い所に居た反乱勢力の護衛の兵士の様子がおかしい事に気が付き、駆け寄った時には遅く、兵士の手元から炎が噴出し辺りは火に包まれた。
そして、施設が爆発したほぼ直後、エブラーナ軍は当然それを敵の策略と取り、反乱軍への攻撃を開始したのだった。
「兵士に化けた魔導師だった、って事か…だが何故味方まで!?」
「…爆発直後、一人の兵が火傷を負って駆け出して来たと聞きました。恐らくその魔導師でしょう。」
その男は、外へ出るなり両軍がぶつかり合う中、取り巻いていた街の者たちに叫んだのだった。

『エブラーナ軍の裏切りだ!!』と―――

「な…に…!?」
「本来、席に着くはずの将校が、身代わりを立てた事が裏目に出ました。街の者は我が軍が先制をしたと言う事もあり、こちらが交渉の場で反乱勢力の暗殺を企てたととらえてしまった様です。」
そして驚くべき事に、エブラーナ軍の中にも、反乱軍の暗殺を企てていた…と言う偽の情報が末端のごく一部に流されていたのだ。出所ははっきりとせず、それは恐らく、軍の混乱を狙った敵の作戦。
だが、事実確認などの混乱の中、それはほんのわずかに後発の情報としてエッジの元に送られる事になってしまった。
それは、事実確認の間第2陣の情報になるだけでも、致命的になる内容だろう。
 
―――俺達を貶めたのか…仲間を犠牲にしてまで…
 
エブラーナ国軍への侮辱。八つ裂きでは済ませたくない程の屈辱。手近の台を叩き割りたい衝動だが、唇をかみ締めて怒りを押し殺す。
「許せねぇ…そんな卑怯なやり方!!王家を名乗るヤロウは何処に居るんだ!?」
「街を密偵に探らせていますが、姿を見せません。しかし爆発後に、反乱勢力に若干の乱れが見える様です。統制が取れていない様子が見えると。」
 
統制がとれなくなった。それはどう言う意味だろう。首謀者が姿を消したのか。それとも、反乱勢力内で想定外の事が起き、あの爆破の中に首謀者がいたのか。

「…とにかく全力でそいつを探し出せ。山中も含めてな。あと、船の出入りもだ。そこまで策を立てて…相手は少人数と思うなよ!!」
「心得ました」
 

近衛兵隊長ガーウィンが、エッジを案じて側に歩み寄った。
「エッジ様…一体敵の目的は…」
「…ああ。少数民族の事だけなら、そんな事する必要はない…狙いは一体…」

――― まさか… もっと、大きなものを?
 
その時だった。
 
ドン、と言う鈍い音が響き、地面が揺れる。幾人かがふらつき、あやうく倒れそうになった。

「な…地震か?」
兵士達はざわめき、外の様子を確かめようと駆け出した。しかしそうするまでもなく、陣営全体の空気が熱せられてゆく。ピリピリ、ピリピリ、と何かが力を発する気配と共に、見る間に所々から小さな炎が噴出した。
「な、何だこれは!!」
明らかに忍術や火器の類ではない。兵達に動揺が走る。
 
―――炎の魔法か!?
 
急いで外に出ると、そこに居たのは、陣地を縦横無尽に駆け巡る無数の火の玉。向かって来た一つをエッジが斬り払うと、それは悲鳴を上げ、吊り上がった目を向けた。
―――ボム!?何故こんなに沢山!?
 
「隊長!!魔物です!!見たことも無い魔物の襲撃が!!」
「ばかな!!何だこの魔物は!?」
この辺りは獣から姿を変えた魔物が多い。
多くの兵士にとっては、ボムは見たことも無い魔物だ。いるはずの無いものが、自然に集まり人間を襲うなど考えられない。明らかに襲撃だ。
 
―――なぜそれがこんな所に!?
 
いくら魔法を使う敵とは言え、召喚には及ばないだろう。たった一つ、名前を聞いた事がある兵器が思い浮かんだ。
 
―――確か…ボムの指輪…
 
魔導師に作られた禁制の兵器。多数のボムの力を秘め、小さな村なら焼き尽くせる力を秘めた指輪。リディアの村を、焼いた指輪。目の前に広がるのは、話に聞くその指輪の威力そのままの光景。
 
―――まさか…

それは大陸の禁制の魔術兵器であり、当然、輸出入は禁じられている。統治者クラスの許可なく製作する事はできないのだ。だが、統治者、と示せるものをもし持っていたとすれば、或いは、名乗るだけの根拠があるならば―――
それが示す事は、”敵”は、王家の末裔を名乗るだけの者ではないと言う事。
 
――― 迂闊だった… 敵は…本物、だ。
 
だが、と向き直る火の玉。
ボムを打ち落としながら、歯噛みする。個体の力は弱い。問題は、数だ。エッジは力を溜め、一気に空へはじき出した。
「雷迅!!!」
周辺にいたボム何匹かが、悲鳴を上げてはじけ散った。
「こいつらの一体の力は弱い!空中で爆発させろ!!絶対に近づくな!!」
兵士達は我に返り、ボムを打ち落としにかかる。幾つもの、小さな爆発が起きた。
「おもしれぇ…とことん汚ねぇやり方でやろうって言うのか。やってやろうじゃねぇか!!」
エッジは、空に向けて、再び力を溜めだす。
 
かつてルビガンテと戦った時、エブラーナの精鋭忍者隊は、次々に炎の中に飲まれ、その身を焼かれていった。その記憶が、一瞬エッジの脳裏によぎる。
 
―――くそっ!!!
―――たまるかよ…繰り返してたまるかよ!!!


再び雷の力が宙に放たれると、更に大量のボムが爆発して消えて行った。しかしボム達の勢いは凄まじく、炎を撒き散らしながら手当たり次第に兵達をなぎ倒してゆく。だが、術や刀で対抗できる敵の数ではなかった。
 
―――ここで武器を消耗したくはないが…
 
「影に隠れろ!!ガーウィン!!!!」
「はっ!!」
近衛兵隊長が兵達に準備の合図を送ると、エッジは空中のボムに煙玉を幾つか放った。小さな粉塵爆発が起こり、何つかのボムが墜落する。白く煙った空中には、視界を塞がれたボム達の影が右往左往してるのが見えた。
「長くはもたねぇ、一気に打ち落とせ!!」
それを合図に、一斉に矢やくない、手裏剣が放たれる。
元々投び道具の扱いは、世界の軍隊では類を見ない腕前であるエブラーナの兵の力は空中の魔物には強大で、やがてボム達は跡形も無く消え去ったのだった。

「エッジ様、お怪我の方は!?」
「俺はかすり傷だ…それより、怪我してるのはどれ位だ?」
衛生兵から薬を受け取り、軽くやけどをした頬に塗る。
「は…命に影響があると思われる者は少ないです。しかし、数名重傷を…」
「…ちくしょう…」
陣営は焼かれ怪我人は出たものの、精鋭部隊とエッジ自身は殆ど無傷のままだった。だが、あの数相手に運がよかったとしか言い様が無い。
集落の外れに、反乱勢力の人間と思われる男が焼け死んでいた。恐らくは、この男が指輪を持ち込んだのだろう。
「あの者…また仲間まで犠牲にしましたな。是が非でもとらえねば…」
ああ、と隊長の言葉にエッジは頷く。敵はどこまで姿を隠すつもりなのか。
「ガ-ウィン。兵を城にも送る。一応、守りを固めたほうがいい。」

急いで使える矢や武器を回収し、兵を集めると、新たに指示を出したのだった。
「重傷者はこの陣で待機だ!騎兵1隊は俺と近衛兵と共にエノールへ向かう。到着次第、エノールへ隊を突入させろ。住民には危害を加えさせない様にな!残った者はエブラーナへ戻り、城門を閉ざして城の守りにつけ!!」
 
―――狙いは…俺か!!
 
明らかに命を狙っての事だ。まさか、あれ程の物を持っているとは。何処で手に入れたのか判らないが、恐らくは相当値の張るものだろう。
 
―――『港の修理に700万ギルか…高くねぇかな?』
―――『王族用の魔術兵器輸入!?あ、書類違い扱いか…』
 
そうだ。今まで気が付いてなかった。ああ言う事で、国家から金が流れていった。恐らく、あの街に何年も前から巣食っていた反乱勢力の分子に―――
 
敵の本隊は何処にいるのか。万の大群と言う事はないだろう。もしそうならさすがに情報がもれない事はない。既にエブラーナへ向かっていたら、街道をそれたとしても隊を見逃す訳はない。
エノールの港からは、多数の人間が出入りした様子はないと言う。街を制圧し、そこの大将を捕らえるしかない。

「エ、エッジ様!!ま、魔物です!!」
「何!?」
まだ居たのか、と振り返ると、そこに漂っていたのは、魔物と言うには小さい光の玉。
「うわあああっ!!」
しかし初めて見るその物体。兵士達は光を中心に何歩か丸く下がっている。
「いやこれは…シルフ…か?」
現れたのはリディアの召喚獣。
「…様子を見て来いって?ああ、俺は大丈夫だって伝えてくれ。あとじいに、兵を少し戻すから、城の警護に充ててくれってな。そうだあいつらにも色々…何、難しい事は判らない!?ん~、じゃあ、俺は平気っのと兵の事だけでいいよ。えっと、あとリディアに…あ、いやいやこれはいいか。じゃ、頼むぜ!!」
  
小さな妖精と話すエッジの姿を、何とも不思議そうに円形に離れたまま見つめる兵達。だが程なくそれは終わり、さっさとエッジはハヤテに飛び乗ったのだった。
「よし!!出発するぞ!!」
「はっ!!」
 
―――リディア…城を、エブラーナを頼んだ!!

エッジははるか遠く東に霞むエブラーナ城を振り返ると、エノールの街へ出発した―――
 


[廃位の王 9]  へ

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「リディア様、ごきげんよう」
「リディア様。こんにちわ。」

「は、はい…」

その日玄関から戻った時から、侍従や女官の態度が明らかに変化していた。
今までは黙認の御忍び客人と言う立場の為か、女官達とすれ違っても会釈をされる程度で話しかけられる事は少なかったのだが、妃候補として顔を出した以上、何処へ行くにも常に最敬礼で迎えられた。王族のフロアを出れば、誰かしらの影が周りにあった。


恐らく、護衛についている者がいるのだろう。だが、慣れない雰囲気に、リディアは音をあげてしまうのは早かった。
「何だか…いつも誰かが居る様だね…もう~!」
「大丈夫ですわ。お部屋に入ってのリディア様の直接のお世話は、私どもがするようにとお命じになられました。お気を張る事ございません。」
いささか面食らい気味のリディアに、アイネが声をかける。エッジの命令があってよかった。そうでなければ流石に多くの女官や護衛が付くだろう。
「そうだ、アイネさ…っとアイネ、聞きたい事があるんだ…」
さんを抜かさなきゃ返事をしない、と言うカレンの先ほどの言葉。
「…そうですわ。っと、何でしょうか?」
 
「ウォルシア…あの人の事、何か知ってるんでしょ?何か教えて欲しいんだ。」
廃位の王、と言う言葉の意味するもの。刀、王勺…聞き逃して来た中で、判らない事が色々ある。少なくともあの男に関しては先日、馬小屋で襲われた時、女官達は何か心当たりがある様だったし、家老が言った、刀と言う言葉も引っかかっていた。
 
三人はしばらく黙っていたが、アイネが口を開く。
「エブラーナの歴史は、ご存じないですよね?獅子軍の乱も…」
獅子軍の乱。大陸の歴史は大まかに幻界の図書館で学んだが、聞かない名前だった。
「うん―――ごめん。私、何も…」
「いえいえ、失礼いたしました。国を開いていないのは、こちらですもの。えっと…あの戦があったのは100年、いや200…年表でもあるといいんだけど…」
その言葉に、はた、とオルフェが顔を上げる。
「…王族の書物庫には歴史などの資料や書物が…リディア様、本はお好きですか?」
「本?うん!!好きだよ。見られるの?」
「あ、それはいい考えかも。リディア様がいらっしゃれば、王族用のフロアは出歩き自由だし…歴史に関わる事だし、ちゃんと書物庫で見て頂いて説明したほうがいいわね。」

少々退屈していた中、エブラーナ書物が見られる思わぬ機会。
四人は連れ立って部屋を出た。エッジのいない間、リディアはエッジの自室を使ってよい、と言う事になっていた。本来ならば部屋を用意するのだが、いきなり違う環境で、見慣れない女官や侍従をあまりリディアに近づけたくない、と言う事もあるのだろう。王族用のフロアは書物庫は勿論、稽古場に至るまで、出入りを許されていた。
 
書物庫の兵士はリディアの訪問に驚いていたが、最敬礼で扉を開け、中の安全を確認した。アイネが、リディアにエブラーナの歴史のお話をする、と伝えると、快く三人にも道を開けたのだった。
 
「うわっ…広いね!!」
書物庫の広さはかなりのもので、壁一面の本棚があり、その真ん中に大きな机があった。
「完全な本棚を幾つも置いてしまうと、身を隠す場所になります。暗殺者が暗躍した時代の名残です。ここは必然的に、王族のみが使う部屋ですので。」
確かに、身を隠す場所はない。アイネが本棚を指した。
「共通語の書物は下から7段目までの全てです。それから10段まではエブラーナ語。それより上は、エブラーナ古語ですので私達でもちょっと…この辺がエブラーナの近代史。ここら辺が先ほどの話の資料の様です。魔法の書物もあります。もし、他にお読みになりたいものがあればお好きなのを御探しいたしますわ。」
 
リディアは広すぎる書物庫を見回し、頷く。
「う~ん、いいや。場所がわかれば、自分で探すよ。だってほら、結構本って自分で見ないと、どれが必要か判らないでしょ?」
「…確かに、そうかもしれません…」
そう言うオルフェの片目は、魔法書の本棚を見ている。カレンは既に後ろを向いて、本棚を凝視していた。
 
「あ!!!民明書房全集!!!」
「カレンお姉さま。何の為にここに来たのか覚えていて?」
リディアはそっと、若干こめかみに筋が浮きそうなアイネの袖をひっぱった。
「ね、アイネはさっきの歴史のお話を聞かせて。そ、それで二人はね…その、いい本だな、って言うのを探して来てよ。何でも良いよ。何でも…す、好きなの…」
「…はい!!」
そう言うがいなや、2人はそれぞれ、武器書、魔法書の所へ散って行った。王族の書物が見られる機会など、侍従には生涯ないだろう。
 
リディアは近代史の一角に寄り、幾つかの本を開く。アイネが慌てて本を机に運んだ。
「先ほどのお話の、獅子軍の乱―――ここです。今から、おおよそ100年ちょっと前ですわね。」
 
『エブラーナ暦1335年。獅子軍の乱。軍主力部隊を元にライオス王子を
擁した軍は、わずか3日でウォーレン王率いる軍を打ち破る―――
ウォーレン王は廃位の宣告後、脱獄し山中に逃亡。王家の勺が奪われる。
三種の神器の王勺・宝珠の行方は未だ知れない。その年の10月、エブ
ラーナ法改定により、刀のみを印にライオス王子が正式に戴冠―――』
 
ウォーレン。あの男のウォルシアと似た響きだ。
 
「この、ウォーレンって人は悪い人なの?ライオスさんって息子?」
「いえ…その…二人ともこの国の王子なのです。ウォーレン王が弟、その王を廃位においやり、王になったライオス王が兄でした。」
「あ、弟さんが王様になったんだ?」
その言葉に、アイネはわずかに首をかしげる。何と言っていいものか、と思案顔。
「…って、訳じゃないのかな??」
「そう…なんですよね。ただ、弟王子が即位したのは…いわばかなり強引な手段でした。元々は、殆ど同時期に生まれた腹違いの2人の王子。それぞれの母にあたる、先代の王の正妃と側室に確執があったらしいんです。立場上、正妃の子ライオス王子が兄、とされ後継者と目されていたのですが…弟であるウォーレン王子が、側室である母のそそのかしにより、王位を狙った、と。」
「へぇ…で、その弟の王様が廃位の王…追い出された王様…」
今は公には側室と言う立場は認められていませんけど、とアイネは付け加えた。

恐らくは先々代程までエブラーナは、身分あるものは完全な政略結婚をするのが普通。特に王ともなれば、治めている部族の首長クラスの娘が側室として差し出される事も多かった。
しかしいわば各地の代表として王の下に集まった側室達。その身分の扱いや順序を少々間違えただけでも、出身部族同士で諍いや武力衝突が起こるのが当たり前であり、また、1人の者が王の寵を独占している、と言う理由での側室同士の暗殺事件も少なくはなかったのだ。
人知れず、代々の統治者が頭を悩ませていたのも事実なのだろう。

 
「父である当時王が夭折されると、弟ウォーレン王子は兄王子を幽閉して即位。あろう事か外国侵略を企て、民の生活に負担をかけ、非常に国が乱れたと言います。ついには軍と貴族が兄王子を助け出し、反乱を起こして弟である国王を捕らえました―――」
エブラーナ史には、兄の王子を象徴する獅子の旗印を取り、『獅子軍の乱』として名を残すクーデターだと言う。
 
「弟は、悪い王様になってお兄さんに倒された…その人、どうなったの?」
「国王は廃位の宣告を受け、処刑される前に、王位の印の一つである王杓を持ったまま逃げ行方知れず―――狼の餌食になったとも、山に入って生き残り、子孫は小数民族をまとめている、との色々な噂は、私が生まれる前からある様です。一つの伝説ですね。」

古い時代の話の様だが、代で言えば数代程だ。伝説と言うには近い過去。
「その弟の王子…えっと、王様の孫の孫位の人が、あのウォルシアって人なのかな?」
「と、本人は名乗っているようですが…どこまで本当だか…」
ちなみに、とアイネは付け加えた。
「昔は、その金色の王勺、白銀の王家の刀、翡翠の宝珠が、三種の神器と言われ王位の象徴だったんですよ。王尺はその廃位の王が持ち去り、宝珠はかつての廃王の
即位の際、反対した勢力に城の中に隠されたまま、行方知れずとか。今では、刀だけが王の即位の時に使われるんです。当然それ程の大切なものですから、厳重に警戒され…宝物庫にあります。と言っても、飾ってあるのは本物か判りませんが。」
「へ??」
「一応、宝物庫にご立派に安置してありますが…大体は贋物を飾っている様です。相当精巧に作られているらしく、本物を見分けられるのは、代々王族だけですわ。」
「へぇ、何だかすごいね!って、事は…?あの人が言っていた刀?」
 
王家の刀、という反逆者の言葉。
本物を見分けられるのは王族のみ、という家老の言葉。偽物を見分ける目を持つ者ならば、宝物庫に置かれていたのは偽物とわかり、何一つ取らずに去ったのも頷ける。
勿論、それ程大切な物は更に厳重な隠し部屋に入れられているのが常だが、賊が偽物を見分けたという事実は、十分に王家に対して示すものはあるだろう。
エッジが自ら出陣したのも、それらを案じての事だろうか。
「ただ、エブラーナ法により、王家の神器の所有のみでは王位の証拠とはならないので、エッジ様の次期王位は、ご存命の限り確実です。」

ご存命の限り。
エッジが生きている限りならば、何が奪われようと王位が変わる事はない。
 
―――だとすれば…やっぱり、エッジの出陣は危険だったのでは…?
 
「…出任せか本当か。心配性の家老様のアレルゲンだった事は、確かです。」
「アレルゲン…?アイネって、難しい事沢山知ってるね…」
目をぱちぱちしながら、アイネの顔を見つめるリディア。
「あ、申し訳ございません…えっと、過剰反応、ですわ。」
 
ぱらぱらと本をめくると、殆ど外国の記述が無い時代も多かった。
「エブラーナって、完全に鎖国してた事があったんだ…」
「ええ。他国から攻められない様に、との政策でしたがやはり時間と共にあらゆる事が停滞してしまい、民間レベルの交流はすぐに再開されたそうです。えっと…これはバロンの歴史書ですが…

“国を閉ざし、発展の停滞が見られる。独特の武術が発展する。北西は山脈、
北東は砂漠を有し、平野部に人口が集中する。鉱業及び農・漁業は盛んだが、
軍の規模は小さい。兵の数は少ないが精鋭は多く、ゲリラ的な戦法を得意とする。”

これが、エブラーナの記述ですわ。」
 
リディアはその書物を取り、ページをめくった。
 
「ここが、私の故郷。」
「ミスト…と言う所ですか?バロン領内のご出身だったのですね。」
 
―――常に霧に包まれたミスト谷にすむ部族。
祖は、幻獣と子をなした魔導師との説もあるが、定かではない。特殊な魔術に
より異界より幻獣を呼び出し、血統維持の為に血族間婚姻が盛ん。
純血の召喚士は不妊・短命の傾向が強いと言われる。

「…リディア様は、純血の召喚士なのですか?」
アイネはその下りを読むと、少し表情を曇らせる。
「うん。お姫様なんかじゃ…両親は亡くなって…幻獣の国で育ててもらったの。」
「でも、エッジ様の大切な方だという事は変わりませんでしょ?」
なのかなぁ、ともれる苦笑い。

「大丈夫ですよ。リディア様。エッジ様はお考えあって、あなた様を出迎えへ―――兵士の前へお連れしたのですから。」
まさに気になっていた事を当てられ、リディアは思わずアイネの顔を見上げる。
「うん…私があんな所に出ていいのかって…」
エブラーナの歴史を知りたいのも、内乱はなおの事それが気になって、と言う事もあった。
机の上には、王族の子供向けと思われる簡単な歴史書や、エブラーナ固有のマナーの本等が重ねられていた。目を通した位で何がわかると言う事はないものの、見た事も無い、と言う様では余りに申し訳ない。妃になると言う事を考えてではないのだが、その振る舞いは女官達にとって喜ばしかった。
 
「実はですね、リディア様。先日、大貴族の大掛かりな国外逃亡があったんですよ。だからエッジ様は、それを逆に利用したんですね。」
「へ!?逃げちゃったの?何で!?」
家老の話を思い出すものの、今回は少人数の内乱。
「エブラーナでは、そうね…政治に影響を持つ程の大きな貴族が幾つかあります。それが殆ど、近々バロンで開かれる大掛かりな貴族の交流会に早々と出かけてしまいまして。残った大貴族の方々も、療養やら何やらで、あっと言う間でしたわ。」

何処の国でも財力が物を言うのは確かで、エブラーナでは忍術の腕を持つ武官貴族の位は高いものの、商業と縁のある貴族の方が実際の権力ははるかに上だった。
しかしその貴族達は、1ヶ月後にバロンで開かれる予定だった世界規模の貴族間交流会の準備、と言って早々に国を出て行ったと言う。
世界的な集まりに失礼があってはと言う言葉に、誰も強く足止めは出来なかった。
「先のルビガンテとの戦の時、早く国外に逃れた貴族は難を逃れました。廃王の末裔の噂が広まった様で、相当大きな戦が来ると勘違いした方々もいるようです。」
しかし、その動きは小中貴族や平民に大きな不安を与えたと言う。
民が安定しなければ士気にもかかわると言う事で、武官や宰相大臣達は、国民に知られた『翡翠の姫』であるリディアが、お妃候補として出る事を黙認したと言うのだ。
 
「そうだったんだ…う~ん。道理で話が上手く行過ぎると思ったよ…」
意外にも、策は練られていた。
 
「ですから、リディア様は今はあまりお考え込まずに、エッジ様やこの国の民の支えになって頂ければよいのです、後の事は、後の事ですわ。」
「うん…ありがとね…あ、でも、実際どうするかとかって言うのはその、また後の事で…」
 
―――後で大丈夫、か…

自分の言った言葉に、アイネはふと不安を覚えた。
元々は、諸手を挙げて賛成していた単純な相棒女官とは違い、とは違い、アイネはリディアがこの城に留まる事には慎重な見方をしていた。
しかしそれは、リディアが時に身勝手にもなるエッジに流されたのでは、と言う杞憂と、この騒動が起きた時本来なら真っ先に帰すはずの、客人の立場であるリディアの身を案じての事で、決して反対と言う事はない。リディアの気持ちが十分に反映されるべきだと言う思いがあった。
 
―――でも、もし…本当に帰ってしまわれたら…
 
エッジが他の娘と、婚姻を結ぶ事はあるのだろうか?
今は全く想像できないし、したくない。

―――不思議な方ね。私まで、この方に惹かれている様だわ…

リディアは魔法書の本棚にいたオルフェに近づき、声をかけていた。
「魔法の歴史は、やっぱり浅いんだね。」
「ええ、私の祖父などは、実際私が見せるまで魔法を信じていませんでしたよ。」
「そうか…」
それは恐らく、エブラーナの国全体と言えるだろう。山奥に魔導師が隠れ住んで魔法を学んで…と言う事はなさそうだ。
 
―――じゃあ、一体あの人達は何処であの魔法を?
 
馬小屋で自分達を襲った魔導師。師もおらず、全く何も知らない者が独学で魔法を会得するのは不可能に近い。
「オルフェ…部屋に戻ってからでいいんだけど、この間私達を襲った魔導師の杖とかローブとか、あったら持って来て欲しいんだ。」
「はい…恐らく保管はしていますから。」
 
本を片手に、小声で呪文の詠唱を始めると、小さな妖精―――シルフが姿を現した。自然界の精霊であるシルフ。か弱い存在である為に大きな事は頼めないが、伝言位の事には充分働いてくれる。妖精はリディアと2.3言葉を交わし、外へ飛んで行く。それを見て、上の棚に居たカレンが大声を上げた。
「あ!!ちょっとアイネ!!窓の所、おっきな蛍よ!!」
「カレン!!違うわよ!!!…すみません…リディア様…」
「蛍…そんな例え、初めて聞いたよ…」
くすくすと、二人の間に笑みが漏れた。
 
「ねぇカレンは何の本をさがしていたの?!」
棚から降りてきたカレンは、分厚い本から顔を上げ答えた。
「民明書房の戦術書です!私死ぬまでにいっぺん見ておきたかったんですよ!!」
覗き込むと、ゴルフやホッピングはかって戦術に使われていた、と言う様な奇怪な本。明らかに女性が読むには無骨で特異な物だ。そもそもこの本の言っている事はどこまで本当なのか。
 
「このページ!!この、『呂決斗乱茶亜』って言うの作ってみたいんです!!」
「ええと…『ろけっとらんちゃー』って言うのかな?カレン…すごいの作りたいんだね…」
「ええ!!一気にズバーンと!!トリガーを腕に連動させ、発剄を使用する事で質量及び火薬の量を従来の10分の1にまで減らし…持ち運びも可能だわ!!」
「そ、そうなんだ…ははは、見てみたいな…でもあまり、その…」

その言葉に、アイネが後ろに立ちはだかる。
「また新作!?あなた…一体何回、夜間警備兵怪我させれば気が済むのよ!!頼むから、夜中に中庭で新作武器試すのやめて頂戴!!こっそりになってないわよ!!」
「私のせいじゃないわ!!試し撃ちはしてるけど、狙い撃ちはしてないわよ!!」
「毎回毎回、私がもみ消さなければ大問題になるといっているの!!」

「皆さん…一応、ここは図書室なんですから…」
オルフェの声は静かに、三人の横を通り過ぎただけだった。
 


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プロフィール
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tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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