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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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エノールの手前にある集落で、情報収集をしていたエッジの元に、
エノール駐留隊からの知らせが来たのは、出陣二日目の事だった。
 
「何だって…!?」
エッジは報告を聞き、立ち上がった。
「…恐らくは、交渉に出向いた反乱勢力の代表は捨て駒だった、と言う事でしょう。」

爆発に巻き込まれたエブラーナの護衛が一人、奇跡的に一命を取りとめ、意識を回復した。そしてその報告内容は、驚くべき物だった。

先日の反乱勢力との交渉で、互いの代表者は5人の精鋭護衛を引き連れ、街の商工会施設で席に着いた。しかし、その護衛の見た限りでは、反乱勢力の代表で来たのは商人風の男であり、代表格の様には見えなかったと言う。
 
特に衝突もなく要求を出し終わり、皆が席を立とうとした時、その護衛は出口に一番近い所に居た反乱勢力の護衛の兵士の様子がおかしい事に気が付き、駆け寄った時には遅く、兵士の手元から炎が噴出し辺りは火に包まれた。
そして、施設が爆発したほぼ直後、エブラーナ軍は当然それを敵の策略と取り、反乱軍への攻撃を開始したのだった。
「兵士に化けた魔導師だった、って事か…だが何故味方まで!?」
「…爆発直後、一人の兵が火傷を負って駆け出して来たと聞きました。恐らくその魔導師でしょう。」
その男は、外へ出るなり両軍がぶつかり合う中、取り巻いていた街の者たちに叫んだのだった。

『エブラーナ軍の裏切りだ!!』と―――

「な…に…!?」
「本来、席に着くはずの将校が、身代わりを立てた事が裏目に出ました。街の者は我が軍が先制をしたと言う事もあり、こちらが交渉の場で反乱勢力の暗殺を企てたととらえてしまった様です。」
そして驚くべき事に、エブラーナ軍の中にも、反乱軍の暗殺を企てていた…と言う偽の情報が末端のごく一部に流されていたのだ。出所ははっきりとせず、それは恐らく、軍の混乱を狙った敵の作戦。
だが、事実確認などの混乱の中、それはほんのわずかに後発の情報としてエッジの元に送られる事になってしまった。
それは、事実確認の間第2陣の情報になるだけでも、致命的になる内容だろう。
 
―――俺達を貶めたのか…仲間を犠牲にしてまで…
 
エブラーナ国軍への侮辱。八つ裂きでは済ませたくない程の屈辱。手近の台を叩き割りたい衝動だが、唇をかみ締めて怒りを押し殺す。
「許せねぇ…そんな卑怯なやり方!!王家を名乗るヤロウは何処に居るんだ!?」
「街を密偵に探らせていますが、姿を見せません。しかし爆発後に、反乱勢力に若干の乱れが見える様です。統制が取れていない様子が見えると。」
 
統制がとれなくなった。それはどう言う意味だろう。首謀者が姿を消したのか。それとも、反乱勢力内で想定外の事が起き、あの爆破の中に首謀者がいたのか。

「…とにかく全力でそいつを探し出せ。山中も含めてな。あと、船の出入りもだ。そこまで策を立てて…相手は少人数と思うなよ!!」
「心得ました」
 

近衛兵隊長ガーウィンが、エッジを案じて側に歩み寄った。
「エッジ様…一体敵の目的は…」
「…ああ。少数民族の事だけなら、そんな事する必要はない…狙いは一体…」

――― まさか… もっと、大きなものを?
 
その時だった。
 
ドン、と言う鈍い音が響き、地面が揺れる。幾人かがふらつき、あやうく倒れそうになった。

「な…地震か?」
兵士達はざわめき、外の様子を確かめようと駆け出した。しかしそうするまでもなく、陣営全体の空気が熱せられてゆく。ピリピリ、ピリピリ、と何かが力を発する気配と共に、見る間に所々から小さな炎が噴出した。
「な、何だこれは!!」
明らかに忍術や火器の類ではない。兵達に動揺が走る。
 
―――炎の魔法か!?
 
急いで外に出ると、そこに居たのは、陣地を縦横無尽に駆け巡る無数の火の玉。向かって来た一つをエッジが斬り払うと、それは悲鳴を上げ、吊り上がった目を向けた。
―――ボム!?何故こんなに沢山!?
 
「隊長!!魔物です!!見たことも無い魔物の襲撃が!!」
「ばかな!!何だこの魔物は!?」
この辺りは獣から姿を変えた魔物が多い。
多くの兵士にとっては、ボムは見たことも無い魔物だ。いるはずの無いものが、自然に集まり人間を襲うなど考えられない。明らかに襲撃だ。
 
―――なぜそれがこんな所に!?
 
いくら魔法を使う敵とは言え、召喚には及ばないだろう。たった一つ、名前を聞いた事がある兵器が思い浮かんだ。
 
―――確か…ボムの指輪…
 
魔導師に作られた禁制の兵器。多数のボムの力を秘め、小さな村なら焼き尽くせる力を秘めた指輪。リディアの村を、焼いた指輪。目の前に広がるのは、話に聞くその指輪の威力そのままの光景。
 
―――まさか…

それは大陸の禁制の魔術兵器であり、当然、輸出入は禁じられている。統治者クラスの許可なく製作する事はできないのだ。だが、統治者、と示せるものをもし持っていたとすれば、或いは、名乗るだけの根拠があるならば―――
それが示す事は、”敵”は、王家の末裔を名乗るだけの者ではないと言う事。
 
――― 迂闊だった… 敵は…本物、だ。
 
だが、と向き直る火の玉。
ボムを打ち落としながら、歯噛みする。個体の力は弱い。問題は、数だ。エッジは力を溜め、一気に空へはじき出した。
「雷迅!!!」
周辺にいたボム何匹かが、悲鳴を上げてはじけ散った。
「こいつらの一体の力は弱い!空中で爆発させろ!!絶対に近づくな!!」
兵士達は我に返り、ボムを打ち落としにかかる。幾つもの、小さな爆発が起きた。
「おもしれぇ…とことん汚ねぇやり方でやろうって言うのか。やってやろうじゃねぇか!!」
エッジは、空に向けて、再び力を溜めだす。
 
かつてルビガンテと戦った時、エブラーナの精鋭忍者隊は、次々に炎の中に飲まれ、その身を焼かれていった。その記憶が、一瞬エッジの脳裏によぎる。
 
―――くそっ!!!
―――たまるかよ…繰り返してたまるかよ!!!


再び雷の力が宙に放たれると、更に大量のボムが爆発して消えて行った。しかしボム達の勢いは凄まじく、炎を撒き散らしながら手当たり次第に兵達をなぎ倒してゆく。だが、術や刀で対抗できる敵の数ではなかった。
 
―――ここで武器を消耗したくはないが…
 
「影に隠れろ!!ガーウィン!!!!」
「はっ!!」
近衛兵隊長が兵達に準備の合図を送ると、エッジは空中のボムに煙玉を幾つか放った。小さな粉塵爆発が起こり、何つかのボムが墜落する。白く煙った空中には、視界を塞がれたボム達の影が右往左往してるのが見えた。
「長くはもたねぇ、一気に打ち落とせ!!」
それを合図に、一斉に矢やくない、手裏剣が放たれる。
元々投び道具の扱いは、世界の軍隊では類を見ない腕前であるエブラーナの兵の力は空中の魔物には強大で、やがてボム達は跡形も無く消え去ったのだった。

「エッジ様、お怪我の方は!?」
「俺はかすり傷だ…それより、怪我してるのはどれ位だ?」
衛生兵から薬を受け取り、軽くやけどをした頬に塗る。
「は…命に影響があると思われる者は少ないです。しかし、数名重傷を…」
「…ちくしょう…」
陣営は焼かれ怪我人は出たものの、精鋭部隊とエッジ自身は殆ど無傷のままだった。だが、あの数相手に運がよかったとしか言い様が無い。
集落の外れに、反乱勢力の人間と思われる男が焼け死んでいた。恐らくは、この男が指輪を持ち込んだのだろう。
「あの者…また仲間まで犠牲にしましたな。是が非でもとらえねば…」
ああ、と隊長の言葉にエッジは頷く。敵はどこまで姿を隠すつもりなのか。
「ガ-ウィン。兵を城にも送る。一応、守りを固めたほうがいい。」

急いで使える矢や武器を回収し、兵を集めると、新たに指示を出したのだった。
「重傷者はこの陣で待機だ!騎兵1隊は俺と近衛兵と共にエノールへ向かう。到着次第、エノールへ隊を突入させろ。住民には危害を加えさせない様にな!残った者はエブラーナへ戻り、城門を閉ざして城の守りにつけ!!」
 
―――狙いは…俺か!!
 
明らかに命を狙っての事だ。まさか、あれ程の物を持っているとは。何処で手に入れたのか判らないが、恐らくは相当値の張るものだろう。
 
―――『港の修理に700万ギルか…高くねぇかな?』
―――『王族用の魔術兵器輸入!?あ、書類違い扱いか…』
 
そうだ。今まで気が付いてなかった。ああ言う事で、国家から金が流れていった。恐らく、あの街に何年も前から巣食っていた反乱勢力の分子に―――
 
敵の本隊は何処にいるのか。万の大群と言う事はないだろう。もしそうならさすがに情報がもれない事はない。既にエブラーナへ向かっていたら、街道をそれたとしても隊を見逃す訳はない。
エノールの港からは、多数の人間が出入りした様子はないと言う。街を制圧し、そこの大将を捕らえるしかない。

「エ、エッジ様!!ま、魔物です!!」
「何!?」
まだ居たのか、と振り返ると、そこに漂っていたのは、魔物と言うには小さい光の玉。
「うわあああっ!!」
しかし初めて見るその物体。兵士達は光を中心に何歩か丸く下がっている。
「いやこれは…シルフ…か?」
現れたのはリディアの召喚獣。
「…様子を見て来いって?ああ、俺は大丈夫だって伝えてくれ。あとじいに、兵を少し戻すから、城の警護に充ててくれってな。そうだあいつらにも色々…何、難しい事は判らない!?ん~、じゃあ、俺は平気っのと兵の事だけでいいよ。えっと、あとリディアに…あ、いやいやこれはいいか。じゃ、頼むぜ!!」
  
小さな妖精と話すエッジの姿を、何とも不思議そうに円形に離れたまま見つめる兵達。だが程なくそれは終わり、さっさとエッジはハヤテに飛び乗ったのだった。
「よし!!出発するぞ!!」
「はっ!!」
 
―――リディア…城を、エブラーナを頼んだ!!

エッジははるか遠く東に霞むエブラーナ城を振り返ると、エノールの街へ出発した―――
 


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プロフィール
HN:
tommy
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非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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