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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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そして。
その頃、エブラーナ城のリディアの元に、ローザからの筆魂の手紙が届いたのと、エッジが魔物による焼き討ちにあったとの情報が入ったのは、ほぼ同時だった。
エッジは既にエノールへ向かったが、それは忠臣達以外には極秘とされ、怪我をして待機している、と言う話が流れていた。
 
「エッジが…もしかしたら、この城も…?」
リディアは震える手先で、一句も漏らさぬ様にローザの手紙の内容を確かめている。
「リディア様…!?」
差し出された手紙は魔導師の文字ではなく共通語で書かれ、バロンの印章とローザの署名がされていた。リディア以外の人間に注意を促す狙いがあるのだろう。
三人は手紙を受け取り、覗き込んだ。

 
『―――リディア
 
幾つか気になる話があるので伝えます。
今から言う事に何か関わりがある様なら、すぐに行動を起こした方がいいわ。
 
まず、ミシディアが一人の魔導師を拘束しました。
バロン貴族の依頼で、禁忌の品である兵器『ボムの指輪』を作ったとの事。
それが海商人を通じエブラーナへ入った様です。この者を拘束し取調べを
した所、エブラーナ王族を名乗る者に頼まれ、高値で請け負った、との事。
その者は『国賊征伐』目的と言い、王家の印章の入った杓を示した様です。
 
その貴族の名義で、エブラーナのエノール港より、バロンへ輸入品運搬船が
10隻入港予定と記録があるのですが、実際こちらには向かっていない様です。
バロン近隣の港では、そう言った船は一切目撃も入港の記録もないと。
船の記録を改ざんし、どこかでその船が悪用されている可能性があります。
 
あと、これは関係あるのか…
少し前、エブラーナからアガルトに行く船に魔導師が保護されました。
その者はミシディアへの渡航を強く希望しており、アガルトの漁師が
ミシディアに届けたとの事。もしかしたら、関係者かもしれません。
 
リディア、今すぐ、エブラーナの城の守りを固める必要があります。
この手紙を、信頼できる人に見せてください。
動きがあったら一言でもいいわ、すぐに伝えて下さい。
 
                     ―――――ローザ・ファレル 』
 
 
「これは…禁制の兵器がエブラーナに入り…これ、エッジ様を焼き討った兵器の事!?更にエノール出港の船が悪用されている可能性がある、と言う事は…」
頷いたきり、震えるリディアの身体。
「これは…これは村一つ、焼ける程の力があるの…」
「何ですって!?そんな物が…家老様に報告しましょう!!カレン、一緒に来て!!」
カレンとアイネが部屋を飛び出すと、リディアは椅子に倒れこんだ。
 
―――間違いない…ボムの指輪…!
 
ミストの村を焼き払った、忌まわしい魔物の兵器。闇で高額で取引される、禁忌の品の一つだ。魔物による焼き討ち、と言ったらそれ以外考えられない。そんな物に、まためぐり合うなんて。
 
「リディア様!?」
カーテンの引かれた自分のスペースに入り、手早く服を着替えるリディア。
「城の外を見てくる!!」
オルフェはとっさに、その手を強く掴んだ。
「いけません!!お留まり下さい!!」
「だって、今にも誰が来るか判らないのよ!?」
 
しかし細身の魔導師は、普段の穏やかさとは裏腹に力を緩める事は無かった。

「いけません。今のあなたは―――王族も同然です!!ここに居るのはご本意ではないのかもしれない。でも、今は、あなたしか居ないのです!!」
「どうして!?私、まだ何日かしかここにいないよ。幾らでも皆―――側近の人とか、家老さんとか、エッジを支えてきた人達が居るじゃない!!私は何もないよ!!城が焼かれたらどうするの!?あの指輪―――」
「リディア様!!」
 
―――!!
 
普段は穏やかな目の厳しさに、リディアは我に返る。オルフェに掴みかかりかけた手を離し小声で、ごめんなさい、と呟いた。

「…ご心労もさぞと思います。ですが、エッジ様はあなた様を頼られて、あの様なお願いをされました―――勿論簡単な話ではないと、あの方も判っていた。エブラーナ国内の身勝手な事情である事、承知しております。ですが…そうせざるを得なかったエッジ様のお気持ち、どうかお汲み取り下さい。」
「…あ…」
膝をつくオルフェの姿。
 
―――どこかで…
かつてのローザの言葉。氷の壁の前で、幼い自分の前にひざを着き、優しく顔を覗き込んでくれたローザの姿。
 
―――リディアお願い。勇気を出して!この氷を溶かせるのはあなたしかいないの!!

ボムの指輪のために、恐れていた炎。自分が炎の魔法で、氷に閉ざされた山の入り口を開く事が出来たのはローザのお陰だった。
 
―――リディア。今は私達の分まで、エッジを助けてあげて―――
―――リディア―――城を頼んだ―――
 
強く杖を握り締めていた指を、一本一本緩めてゆく。
 
―――私はここから…離れちゃいけない…よね…

「…うん。判ってたの…」
リディアは閉じていた目を開いて、オルフェに答えた。
「私の母は火事で亡くなって、だから…街が焼けるって思ったら…ごめんなさい。だからもう立って、ね?」
 
瞬間に、胸に去来した様々な思い。
村を焼いた指輪。それを持ち込んだセシルに対しての憎しみは今は完全に信頼に変わっているが、あの出来事が忘れられる訳はない。
「ごめん―――でも、あなたでよかった。何だか、セシルに怒られたみたいだったよ。」
「…リディア様?」
 
そして、オルフェが立ち上がると同時に、部屋には家老が走りこんできたのだった。
「リディア様!!!こ、この手紙は…」
「はい。紛れも無く、バロンの次期王妃ローザ様からです。ごめんなさい…勝手に情報収集をしてしまって…」

秘密裏に進めてはいたけれど、さすがにもう隠す訳には行かない。余計な事をしたのかと、いささかばつの悪い思いもある。
「と、とんでもございません!!実は、先ほどのエッジ様陣営の焼き討ち…どうやら禁制の兵器が使われたらしい、との事でしたので、おそらくこの指輪かと!なればすぐにもう一つ、海岸の監視を強める必要があります。わたくしどもで城下に残った隊は動かすしかありません。」
「…私に出来る事があったら、教えてください。」
自分が口を出すなど、おかしな話かもしれない。ちらりとオルフェに目をやり、つぶやく。
「これで、いいのかな…」

見えない敵。だがそれは確実に、エブラーナへ近づいている。
そして先日自分達を襲った魔導師の遺品を調べた所、恐らくは自分達で作った杖とローブに、ミシディアの特徴が見られるのが判った。まさかあの国が何かをたくらむ事は無いだろうが、何処が敵なのかもわからない。ミシディアに渡航した魔導師は、関係者なのだろうか。
 
「オルフェ…あなたが私の代わりに、城下に行く事は出来る?」
「可能ですが…どういった事をすれば…」
自分の持っていた星屑が模された小さな杖を渡したのだった。
 
「城下を見回って、魔術的な仕掛けがないか調べて欲しいの。この間、城の外を回った様に。例えば城下に、外で見たような魔法陣が作ってあったら、小さな物でも爆弾や…炎や毒の魔法を直接送ったりできる。だから―――」
杖を軽く振ると、先端から星屑の様な閃光が迸る。

「これで魔力を増強すれば、大体は探知できるし塞ぐ事も出来る…あと、魔力をここから込める様に放出すれば、小さな光の弾が幾つも飛び出す。炎の属性はないから、火事の危険は少ないけど…どうしても、って時に使って。」
オルフェは、高等な魔法の込められたロッドを前にやや戸惑っていたが、やがて頷いた。
「判りました。では、城下に赴きます。」
「気をつけてね!!」
 
オルフェを見送り、リディアは息をつく。シルフからエッジの無事は聞いていたが、それがなければと思うと寒気がした。
敵はまずエッジを殺そうとした。少数民族独立と言うのは兵を集める建前だろう。相手の目的が最初からエッジ、そしてエブラーナ城と思えば全て納得が行く。回りにあった小さな魔法陣は、城内、城下に出入りした残骸。城に奇襲をかけるのなら、無防備なうちに城下に何かしら攻撃の準備をしてあってもおかしくない。再び作られたエブラーナの城壁は堅固だ。投石器や火器よりも、内部から壊したほうがいいだろう。

港町に入り込んでいたなら、恐らく相手がいるのは海。エノールの街を支配し、海運記録を改ざんし物資や兵を集め、密かに計画を立てていたのだろうか。エブラーナ城は海から近い。しかも、今回の内乱では城内の兵を集めた為、港は無防備な状態になっているはずだ。
 
―――全ては戦の準備…
―――エッジと精鋭をこの城からおびき出し、始末し、そして―――
 
「この城を、奪う気なのね…」
エノールの街でのエブラーナ国軍への侮辱。味方を犠牲にしてまでのその策略、エッジの気性を良く知っている。恐らく出陣してなくても、あの話を聞けばすぐに城を飛び出したはずだ。そこを焼き打つつもりだったのか。
幸いにも難を逃れたエッジは今、エノールへ向かっている。命を奪うという狙いは外れたものの、城は手薄になりエッジは城から最も遠ざかった。まだ城内にも守る兵はいるだろうが、エッジが居ない今、少ない人数でどう統率を取ればよいのか。
 
「リディア様…」
戦支度を終えた女官2人が部屋に戻った。
「家老様よりのお言伝でございます。大事があった時は、リディア様は、お城をお出になってはいけません。もしもの場合は、魔力をお使いになり、お落ち下さいます様―――」
「わかったよ。」

そう言いながらも、既軽装の若草色の服に袖を通す姿に、二人は苦笑する。
「…と言ってもお止めは出来ませんわね。何処までも、お付き致しますわ。ね。カレン。」
「勿論です。」
「ありがとう。あなた達も、だめって行っても来ちゃうよね。」
「言わずもがな、です。」

カレンがごそごそと包みを取り出し、いくつかの砂糖菓子を二人に手渡した。
「貴族用のお菓子から、失敬しちゃいました。いいでしょう?食べちゃいましょう。」
「ちょっとカレン~…ま、逃げ出されてしまった方々ですもんね。」
「そうだね。ちょっと元気、出さないとね。」
 
三人の顔に、笑みがこぼれた。



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tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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