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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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 19
 

 
内乱騒動の後処理も殆ど片付き、オルフェがミシディアへ旅立ち、ついでにカレンの結婚式も執り行われ。

秋の風が深まる午後、家老はエッジの自室を訪ねた。国内の諸般の書類と、エッジの結婚式の予定――実は忠臣達が何ヶ月もかけて考えていた草案――― を渡す為だった。
「こちらは先日行われたカレンの結婚式に贈った品です。一応の御目通しを。それがなんと、既に身ごもっていたそうですじゃ。」
気の無い返事で家老の書類に目を通していたエッジは、椅子からずり落ちそうになる。
 
「はい!?カレンが何だって!?」
「既に身ごもっていた、です若!!あの武人娘、体調が悪い悪いと言いながらまるでその方と思わず、更に体力作りなんぞを始めようとしておったそうで…近頃の若者は…」
「へぇ、アイツがねぇ…ま、まぁ気がついてよかったな、うん…」
エッジの表情はどこか上の空。最近は気が抜けたのか結構生返事が多い。家老はかまわず言葉を続ける。

「こちらはバロンに留学させた魔導師の報告書、こちらはミシディアに行ったオルフェの、 ―――あと、こちらは―――まだ予定ですが、若様の結婚式のこれからの流れなどを書いてございます。大体今から半年掛かり、来春…と言う所でしょうか。」
「え、そんなもんで出来るんだ?セシル達は一年かけてたぜ?」

そんなもん、とは何なる言葉。
疲れているであろうエッジに何を言ってもと、陰ながら身を削ってここ数ヶ月念入りに準備をしていたのは、他ならぬ家老。

「若!!このじいが何ヶ月、忠臣達と共に計画を練っていたと思っているのです!!若様には国の公務に専念して頂こうと思っての…」
「わ、悪かったよ!!」
「それに余り早くお伝えして準備に時間を使いますと、若様がまた短気を起されます故。国の規模を考えますと、品格を失わずかつ相当な範囲で行うのが良いかと。」

―――ああ、やっぱり判ってやがる。

ふぅ、と息をつく。
結婚式なんて、本当は明日にでもやっちまいたい。それで、後は世界の仲間を呼んで、思い切り騒ぎたい。

―――って訳には、いかねーよなぁ。

「…若様?お加減でも?」
「いや、え、えーとだな、そ、そうだなぁ、カレンがなぁ…う~ん…子供かぁ…」
「…お子様は、授かり物ですよ。若様。」

実は適当なごまかしだったが、その言葉にほっほっと家老が目を細めた。
「…へ?」
『結婚しろ』『王家の血を』攻撃が終わったと思ったら、ずいぶんとまたおおらかな事を言うもんだ。流石に図りかね、今度はエッジが顔をしかめる。悪いものでも食べたのか。
「いえいえ。今回の事で我々も、もっと広い意味で王家…いや、国家の存続を考えた方が良い、と相成りましてな。」

ま、実際若のご結婚が現実になりますと、子だ何だと無粋な事で騒ぎ立てるのも、意味のない事です、ともごもご呟きながら、更に新しく資料を取り出し、エッジの前に差し出したのだった。

「そうか…見つかったのか?」
「ええ。探せばあるものです。先々代の従姉妹が外国に嫁いでおる事は聞いておりましたが、末の王子も幼い頃、後継者を外れる形で養子に行っていた様です。共に、先方国の歴史学者の裏付けもとれました。他の末裔の中には…ダムシアン王家に近い家の方もいるようで。」

エブラーナは数代前まで、側室やその子同士の、命の奪い合いも当たり前と言う争いが後をたたなかった。だが、そんな非情をよしとしていた者ばかりではない。基本的に鎖国状態ではあったが、あえて外国に婚姻の縁を結ぶ者も多かった様だ。

「これはまだ非公式の範囲ですが…エッジ様のご活躍を聞き及び、エブラーナ新王が誕生した暁には、遠縁のよしみを結びたいと言っている所もあるようです。」
「そうか…」

公に王家の血を引くのは、国内では自分一人。
今回の戦でその事を嫌がおうでも実感した。しかしだからと言って息巻いて、その為だけの子供の誕生を待ち望む様な空気を作る事はしたくない。側室をはべらせ、無用な争いを起こす事もお断りだ。

血に固執した反逆の徒の末路は、付け込まれた王家にとっても哲となった。どの道、王族に何かあった時の方法は考えておいた方がいい。少し前まではとても聞き入れられなかったであろう意見も、周りが受け入れる様になっている。

しかし正直な所、元々エッジは国と民を守るという事さえ出来るのなら、統治の形にはさほどこだわってはいなかった。
民が望むなら王政を続ければいいし、王族以上に、民を思い平和的に国を発展させられる存在があればそれもよし、自らの力で国を動かしたいと思う時が来れば、民意が国の方向を決めると言う時代も来るのだろう。
とにかくあらゆる方法に目を向けて、この国の人々に幸せになってもらいたい。それだけだった。

「各国の遠縁の方々と交流を深めるのは、国家にとっての利益もありましょう。ただこのじいとしましては、早く若のお子様の顔が見たい事には変わりませんぞ。」
「ま~な。だが、俺もこれで肩の荷が下りたよ。」
「まぁ…じいは若様共々に、エブラーナが繁栄して行くのを願っておりますよ。」

「と、言う訳で。おめーの肩の荷も軽くなるって事だ。」
「?何が…と、言う訳なの?」
「話、聞いてなかったか?」

リディアはぱちくり、と目を見開く。
「えっと、遠縁の王族の関係者と仲良くしよう、って事だよね。」
「ああ、まぁそれでもしほら、今回みたいに万が一みたいな事があったら、まぁ養子でも貰う方法も、って事だ。ウチの国も、臨機応変に行かないとな。」
リディアは今一つ理解しかねた様で、小首をかしげた。

「?子供、産んじゃいけないって事…かな?」
「…!?!?!?!?バカ!!!!どうしてそう取るんだよ!?!?!?」
エッジは思わず、手のひらで軽くリディアの頭を叩く。
当然猛抗議を食らうも、どうにも本人がかつての家老の言葉に傷ついたものの、その辺の事を気にしていた訳ではないと判り、胸を撫で下ろした。

「なーによ!!!」
「いや、いやいや!!いいか。お前も、これからは自分一人の身じゃないんだ。この国の事は徐々になれてゆけばいい。無理するなよ。こればかりは変われねぇ。」
はぁい、と答えるリディアを抱きしめて、その髪を梳く。
「いや、お伽噺みてーだなと思ってさ。」

「?」

王子は幻の国の姫に恋をするが、それを告げる事のないまま国へ帰って行った――― 住む世界も、背負った物も違う二人。この恋の成就は、あり得ないと思っていた。どれ程思いが強くても、現実はお伽噺ではないのだから。

だからあの時、幻界に戻ると言っていたリディアを引き留められなかった。そんな夢のような事、ある訳ないと思ったから。

けど、思い出とは生きられない。それが判った時、奇跡が起きたのだ。

―――国に争いが起きた時、幻の姫は再び王子の前に現れた。二人は力を合わせて国を救い、結ばれて何時までも幸せに暮らしたと言う―――

「へんなの。現実だってば。だってここにいるよ?」
エッジはそれに答えず、黙ってリディアの髪を梳いていた。
庭先で、旅の詩人の奏でるメロディが聞こえる。今となっては懐かしい旋律。

月の血を引く英雄達よ
王子は世界を救う
翡翠の髪と瞳の乙女、幻の国の姫君よ
…   
…   王子の嘆き誰が知らんや
王子の嘆き如何ばかりなん…


「あれ?」
「続き…かな?」
その歌に、二人は顔を見合わせる。


国乱れし騒擾の徒に  
王子再び戦火の中へ   

碧き風、舞い降り立ちぬ
霧の竜の背に乗り
翡翠の姫は降臨す   

遠く離れて時を超え  
ただその愛に希望を抱き  
ただその愛を力にし  
栄光抱く王子の帰還   
碧き風の舞い降りた国―――

この二人引き裂かんとも
この愛を押止めとも
例え天地の神であっても
例え冥府の王であっても

二度と二つに分かつ事ない
交わした誓い永遠に―――


「リディア。何て言うか…これからも、ずっと俺の傍に居てくれよな。」
もうこれ以上言葉はない。リディアはエッジを見上げ、うん、と笑みを返す。

「うん。ずっと―――ずっと、一緒に居ようね。」


―――こうしてエブラーナ王子の婚姻は世界各国に公にされ、国を挙げての祝いとなった。

知らせは各地の仲間に及び、すぐに各国の祝いの使者がエブラーナを訪れた。

異国からの祝福はエブラーナの人々にとっては今までにない事で、嫌がおうでも国内はお祝いムードに染まっていった。
 
 
[101日目のプロポーズ 20]
 

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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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