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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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17


二日後の夕方。
一隻の小さな飛空挺がエブラーナ上空を激しく旋回し、きりもみしながら城に近付く様子に、エブラーナの人々は何事かと皆家を出て、空を見上げた。
「あーよかった、何とか着いたぜぃ!!よし、中庭に下ろすぞ!!」
「だっ…だからあんたに運転させたくなかったのよぉ!!!」

空中でUFOの如く不規則な動きをしているのは、バロンから送られた小型の簡易飛空挺。
エッジとリディア、女官2人の他には、手土産が積まれている。シドが、運転しやすい様にギアを自動で入れ変えるオートマチックレバーをつけてくれた為、ハンドルとブレーキとアクセルだけで、操縦出来るはずだった。

しかしエッジは、かつて大きな飛空挺を運転した時の感覚が味わいたい!と、途中でレバーをマニュアルモードに戻し、一人運転席を独占していた。リディアは彼の手荒い運転には慣れているが、女官二人は初めての飛空挺。
「神様ぁ!!どうか無事に帰してくださいぃ!!」
「いざとなったら…堀に飛び降りるわよ!!」
「へーきへーき!!うりゃぁ―――!!!!」

ズガガガガ、ドスン、と言う音と共に、飛空挺は中庭に降り立つ。
女官二人とリディアは甲板転げてしまう。エッジもまたバランスを崩したが、身を翻して一人地上に降り立った。
「着地の逆噴射、足りなかったかなぁ…」
「スピード出しすぎなのよ!!」
幸いにも空きスペース内に収まったものの、城に突入してもおかしくはないスピード。手前の茂みから、様子を見ていた家老が恐る恐る顔を出した。

「…エッジ…様?」
「おう、じい!!セシル…いやバロン王からの贈りもんだ!!」
意気揚々と、宝物を見つけた少年の様に飛空挺を指すエッジ。しかし家老の目は、エッジの後方でアイネに助けられて飛空挺を降りるリディアの姿をとらえていた。
「おおっ、リディア様!!」
「家老さーん!!あ…オルフェ!!」
何、穏やかでない名前、とエッジが振り返ると、家老の後ろから蒼髪の魔導師が姿を現す。

「ただいま!!皆に会えて嬉しいよ!!」
リディアは背後のエッジの表情など知る由もなく、二人に駆け寄った。家老は喜びを全身で表し、オルフェは変わらぬ穏やかな表情でリディアに問いかける。
「お帰りなさいませ、リディア様―――エブラーナに、お戻り頂けるのですか?」
「う~ん…私で、いいのかなって思うけど…」

アイネがちらりと見ると、仕方ないと言う表情を浮かべているエッジ。何時もならいきなり間に入りそうだが、随分とたたずまいのある振る舞いだ。思わずカレンと顔を見合せた。
「あのう、エッジ様…」
「あ、ああ、何だ?」
「リディア様のお部屋…どうします?」

そう言えばまだ、リディアがプロポーズを正式に受けてくれたとは伝えていなかった。
そうだなぁ、と鼻を掻きながら、エッジは前髪を息で吹き上げる。さて、どうするか。だがとりあえず、と兵士が運び出しているバロンからの沢山の手土産を指した。

「リディアは俺の部屋でまだいいや。今夜は、ちょっと色々決めなきゃいけないからさ、用は無いと思う。だから、お前らはセシルのから土産に何があんのか見ておいて。国内で禁止されてんのは無いとは思うけど、まだ他の奴らには見せるなよ。まぁ明日でいいから報告くれ。おめーらのは、何があったか教えてくれれば持って帰っていいから。」
「は、はぁ。ではその様に…」
「今日の夕食は部屋でいいや。バロンで昼、ご馳走になったからごく軽くな。」

 一気に二人の表情が緩み、兵士に混じって荷物を運び出すのを手伝いに行ってしまった。ローザから、『リディアを助けたお付の方にも』と持たされた品物があった。おそらくは、二人はそれを楽しみにしているはずだ。それは豪華な宝石やドレスではなく、世界兵法大辞典・民明書房発刊の数々の本と言った、バロンの書庫で、正直置いておいても仕方ないよね的な扱いを受けていた書物や武器ではあるけれど。

―――さて、と…

エッジはオルフェにリディアを部屋まで送る様言いつけると、包みを一つ抱えて別の方に歩いて行った。
「なんだろエッジ。亀なんてバロンで買って…」

リディアはエッジの後姿を見ながら、オルフェと共に部屋に向かう。その時リディアから語られた事は、この若い魔導師を大いに驚かせた。
「バロンより魔法技術指導―――ですか?」
「うん。実現はまだ先の事だと思うけど…セシルとミシディアの長老と三人で色々打ち合わせてたみたい。だからエッジ、帰るのが遅くなっちゃって―――あ、まだ内緒よ!!非公式な打ち合わせらしいから!!」
「ええ―――でも2年後でも3年後でもいい、私も許されるなら―――」
元々、更なる高等魔法を修行したいと思っていたオルフェ。
リディアの力を目の当たりにし、その思いは強まっており、それはリディアにも判っていた。だから窓口が開いたのは伝えたものの、彼がミシディアに留学を命じられる事までは黙っていた。直接、命じられるべき事だ。
 
既にミシディア長老には、オルフェの三年間のミシディア留学の許可を取り付けていた。それを知った時のオルフェは、どんなに喜ぶだろう。 そう思うとリディアは、エッジが彼にそれを伝えるのが楽しみで仕方ない。オルフェは内乱の時に借りた星屑の小さな杖を返したいと申し出たが、すぐにでも、彼に必要になる物だからとそのまま渡してしまった。

久々に城に入ると、兵隊達は突然のリディアの帰還に驚きながらも、総出で迎えの儀の様な形を取り、丁寧に出迎えた。台所番は慌てて帰国の晩餐の準備を始めようとしたが、エッジからの伝言で明日へと変更になり、二人は久々に部屋で、簡単な夕食を取った。

「あ~あ~、久々ののんびりした休憩です!!」
夜着に着替えて、ソファの上に寝転び背伸びをするエッジ。
とりあえず、内乱のごたごたも終わった。後は公に貴族や大臣の承認を取れば、晴れてリディアはエッジの正妃になれる。

比較的王族の権限の強いエブラーナでは独断で話を進める事も出来るが、それではリディアがこの国になじめないだろう。内乱のお陰か、二人の婚姻に大きく反対する者はほぼ居ない様だった。

―――もう、いいよなぁ…

抑えていた非常に口には出しがたい欲求と願いが、頭をもたげた瞬間。
「あのぅ…」
「お、な、何だ!?もう寝るか!?俺と寝るか!?」
咄嗟に先走った期待を口にしてしまい、大きく跳ね上がるエッジの身体。

「その、ずっとちゃんと言いそびれていたけど…連絡しなくて、ごめんね…」
「…あ、そ、そっち。」
「心配、したよね…」
「…まーな。」

リディアは、アスラが訪ねて来た事を知らないのだろう。
幻獣達はリディアが地上に戻るのを反対していたが、女王アスラが、地上にはリディアを守る人がいると告げた事で納得した様だった。

「それから、アスラ様はこんな事も言っていたな。幻界もいずれは、多少なりとも外の世界と交流を持つ様になって行くのだろう、って。」
「そうか…まぁ、どんな世界でも、閉じたまんまじゃどうにもならねぇしな。いずれ人間も、幻界の奴らを普通に受け入れる位、いろんな意味で懐大きくなるかも知れないしな。」

それがリディアの生きている間かどうかは判らないが、絆が切れる訳ではない、二度と会えなくなる訳ではないと、力づける言葉である事は確かだ。
自分に託された娘にかけられた愛情の大きさを改めて感じる。

「リディア。」
「何?」
「…いや、あのさ。ほら、俺が留守の時、皆の前でさ…『エッジの子供、産んでもいい』 …って言ってくれたって聞いてさ。…嬉しかった。」
リディアはその言葉に、慌てて首を振る。
「あ、あれは今すぐって訳じゃなくて!!い、いずれはって話よ!!!」
「まぁ、勿論そうだ。だけどまぁ、今日はほら、色々カタもついてめでたい日でありまして。」
リディアもその言葉にそうだね、とうなずきつつも、いまいち話の流れが掴みきれない表情。

――― 今だ、俺!!!

しかし、全身の気力を振り絞って突き出した言葉は。
「つ、つ、つまるところだ、は、裸で祭り…」
「は、裸祭り!?!?」
エッジの言わんとしている事は通じたんだろう。しかし、リディアはあまりの奇怪な例えに、これはエブラーナ語なのかと必死で思案している様子だった。

―――くそっ!!この大事な時にマトモな口説き方も出来ねぇのか俺は!
―――すっぽんの生き血なんて飲まなきゃよかった…

どうかね、と言う半ばおどけた様なエッジの言葉に思わず噴出す。
「笑うなよ!!いや、一応、格好いい事も考えてたんだぜ!?」
「だ、だって…エッジ…面白い。どうかね、って何が?」
「そ、その、俺と―――今夜はいっちょ…その祭りというのをですね、うん。」
「なーにそれ!やだ、ごめん…すごくおかしい。」

たまらず、ころころと笑い転げるリディア。
つられて拍子抜けした様に笑みをこぼし、その髪の先を取り優しく口付けるエッジ。ひとしきり笑い転げた後、リディアは息を大きく付いてエッジの胸にしがみついた。
「じゃあ…おやすみのキスをして。」
「―――ああ。」
おやすみのキスは、唇に落とされた。いつもの様に軽く触れた後、少し離れる。
「今夜は、よく眠れる様に。」

そう言ってもう一度。唇の先を優しく撫でる舌に一瞬驚いたものの、リディアは肩に入った力を抜いて受け入れた。
「驚いた?」
「う、ん…少しだけ…」

エッジの口元が小さく、おやすみと囁いた。
自分を抱く腕の力が徐々に緩むのを感じた時、リディアの鼓動は急に激しさを増し始めた。離したくないんだ、とほどけて行くエッジの腕と指先から、その想いが流れ込む。
それに答える事はもうできる。

―――受け入れても… ―――良いだろうか…この人を…

リディアの頭が爪の先程、微かに頷くと、エッジの唇が再びリディアに重なった。
―――エッジ…?

徐々に自分の身体にかかる重みを支えられず、リディアは床に膝をついた。普段は饒舌で軽薄に振舞う男が、今は自分を抱く指先を震えさせている。
 
―――任せるから…エッジに、任せるからね。
 
 






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tommy
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非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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