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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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18


「よ。おはよう。」
「う、うん…」

朝が来るのは、早かった。
シーツに包まったリディアは、珍しく朝の稽古に出かけず裸のまま隣で寝転がるエッジに、ちらりと再び視線を移す。」

「あれ?今日は稽古に行かないの?」
「へ?お、おめー…今この状況で…」

リディアの肌着を取り、ほれ、と手渡すとエッジもベッドから飛び降り、裸のまま、脱ぎ捨てた服を探し出す。
カーテンに隠れて服を着たリディアは、目に飛び込んだエッジの裸体に顔を赤くしたのだった。
「な、何してんの!?早く服着なよ!?」

エッジは構わず、引き締まった全身をさらけ出して目を丸くしたリディアに近づく。
「何…って言うか今更恥ずかしいもないだろ。全部見ちゃったんだし」
「み、見ただけでしょ!?バ…バカッ!!私はデリカシーない人は嫌なの!!ちょっと止めてよ!!信じらんない!!何が裸祭よ!!」

必死で目をそらそうとするリディアだが、あっさりとその腕に捕まり。
「ほれほれ、ハダカーマンだぞぅ~!!」
「きゃああああ~~!!ちょ、ちょっとおおおお!!!」

結局、震えるリディアと肌を合わせるだけで終わってしまった昨日。
まぁどんな薬が効いていようと、リディアの怖がる顔は一番見たくなかった。焦る必要はないんだし、少しずつ、重ねて行けばいいだけだ。

「きゃぁあ!!やめてよっ!!離してってば!!ケダモノ!!!」
まあ、無理やり事に及べば口もきいて貰えなかったかもと思えば、それでよかったんだろう。

―――あ~あ。俺も、丸くなっちまったなぁ…

若かりし頃。夜、しょっちゅう貴族の娘がそれぞれの家などの事情で寝室に送り込まていれたが、おそらくは本人全くその気がなかっただろう娘や、行けと言われて来ただけで、全く持って夜の作法を知らない娘もいたのだった。

そう言った娘達にただ苛立ち、その気がねぇなら親ん所帰れ、と怒鳴りつけた事もあった。
あらゆる方面での理不尽さは判っていた。だが仕方ない、自分はそう言う立場なのだから、女性はもとより、人に心を許す事など、いずれは出来なくなる立場なのだから。

だが自分が裏切られ人の痛みを知り、戦いに身を投じ、初めて王子の名のいらない友と出会って判り合う事を知り、愛する者と出会って、慈しむ事を知った。

―――もう、こいつは離さない。
「リディア、俺、世界一幸せ。」
「離してってば!!私は世界一逃げたいわよっ!!誰か!襲われる――!!」

バタン。
「へ…!?」
その言葉に答える様に開いたドア。二人があっけにとられていると。

「リディア様!今の悲鳴如何しましたか!?待ちかねた狼藉者!!新作・発頸稼働小型襲撃砲の餌食になるがいいわッ!!!敵は!?」
なんか胡散臭い小型の筒を持ってきた黒髪の思わぬ来訪者に、流石にエッジの顔も青くなって行く。

「お、おう…居たのかよ…そ、そうか、メシの時間…か…ははは…そ、それ新作…?」
そう言えば、先日図書館で何か小型の飛び道具を作りたいと言ってた様な。

忠臣は全裸で立ち尽くすエッジと、既に身づくろいを終えたリディアの両方を代わる代わる見、思わず武器をすべり落とす。
一瞬、部屋の誰もが無言になる。

「ち…朝食のご準備が…整いましたので…その…お呼びに…そう言えば昨日、一発決めるって言ってましたよね…ホ、ホホホ…気が利かず…」
「お、お前、そりゃ色々決める、だよ!!」

「いいえっ!!あの、その―――が、頑張って下さい!!」
カレンは相当動揺したのか、そうとだけ言うと脱兎の如くに走り去ったのだった。

「おい!!バカ、違う、見ただけ…ってそうじゃねぇ!!朝食はしまうなよ!!」
エッジは全裸のまま廊下に飛び出し、小さくなる忠臣の背中に大声で叫ぶも。廊下の兵の絶叫。リディアも慌てて、エッジの上着を持って後を追う。
「ちょ、なっ…何言ってんのよ!?早く服着なさいよ――――!!!!」

兵士達の眼差しの中、すごすごと部屋に帰る2人。

「あ、あのねエッジ…」
「何?」
「あの、結婚式…終わってからなら、いいよ」
「へ、何が?」
「その、裸祭、最後まで…」

「リ…リディア、その、裸祭ってのは、別にエブラーナ言葉じゃなくて、その…」
最後まで言い終わる事なく、エッジは卒倒したのだった。


そしてその日の午後。
エッジは臨時の会議を開いて宰相、将校、神職長や貴族の代表達を招集し、リディアを正妃に迎えると公言した。
 
おおむね将校や宰相は賛成に回ったが、貴族の中には、彼女のバロンとの縁の深さや民衆の支持などの利は認めながらも、身分と国籍を理由に慎重な意見もあった。
しかし今回の内乱で城を守り、再び王位三種の神器をもたらした功績は貴族の位を与えるにも等しいと言う事で、まずはリディアに国家功労者として貴人の地位を与える事を条件に満場一致で承認した。

また、バロンの魔導師兵団に将校魔導師を留学させる事、王宮付魔導師オルフェをミシディアに留学させる事―――それらの承認を取り、手続きが始められた。

エッジは部屋にオルフェを呼び、一足先にそれを伝えると、あまりに想像以上の話に若い魔導師はただ目を丸くしたのだった。
「私が―――ミシディアに留学!?」
確かに先日、リディアから、魔導師を外国に派遣する準備を始めたとは聞いていたが、まさか自分が総本山に留学させて貰える、とは夢にも思っていなかったのだ。
「ああ、おめーはやっぱ、バロンって感じではないからな。俺の令は後々出す。まぁ今日にでも、魔導師団の隊長から話は行くだろ。出発は一ヶ月後。大丈夫だろ?ま、無理なら他当たるけど。どう?」
「いいえ―――身に余る光栄です!!」
オルフェは深々と頭を下げる。
「ま、それでしっかり勉強して、うちの国の発展に力を尽くしてくれ。まぁ―――何て言うか、アレだ。」
エッジは彼に背を向けて、ぶっきらぼうに言い放つも。喜ばれるのはまんざらでもないのだ。

「…おめーには、色々世話かけたからさ。俺にはこれ位しか出来ねぇ。最後の最後まで。でも、リディアは俺のカミさんだから。そこは手、引いてもらうから。」
「リディア様は…」

彼に思いを寄せた女官や貴族の娘を次々に横恋慕した時も、オルフェは決して、エッジに対して何かを表す事は無かった。
今になって思えば。修行や読書研究に夢中だった若い魔導師にとって、言い寄ってきた女性がエッジのアプローチに流れてゆくのはさして大きな問題ではなかっただろうが、到底その心の動きが理解できずに、何なんだ恐ろしい、と思った事もあったのだ。

そんな卑屈な考えはしたくないけれども、でも。
今は、例えそのつもりはなくとも。誰にも邪魔はされたくない。穏やかでも頼りになる男にリディアが『弱い』のは、判りきっているから。

「だからぁ…おめーのやりたい事、させてやるから。」
「私は」
オルフェは静かに首を振る。
「エッジ様、何かを思い違いされているのでは。王族の方の様な身分も権力も無く、何も与えられない男に、何が出来るのでしょう?」

身分がないからとは、大した自信だ、と口笛をふく。
「それこそ身分が同じなら、おめーは俺に勝てたかもしれないがなぁ。うん、実に惜しいもんだ。」
「―――エッジ様。この度の任命、ありがとうございました。私は、新王と王妃の戴冠式が早い日に行われる事を心よりお望み申し上げます。」
エッジの言葉には答えず、オルフェは再び頭を下げ、部屋を後にした。廊下の角を曲がった所でそっと、腰に差していた法器に触れ、小さくリディアの名を呼んだ。

「翡翠の姫様に生涯のご恩を―――ありがとうございました―――」
 


 
[101日目のプロポーズ 19]

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HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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