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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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再び四人はチョコボに再び乗り込み、急いでエブラーナ城を目指した。
今頃エノールの街では交渉が行われているはず。動きがあれば軍が出る可能性もある。城下を移動するのが困難になるかもしれない。無いならないで、エッジが城に戻るかもしれない。
いずれにしても、城を抜け出たのが知られれば、全員大目玉は必至だ。

エブラーナの城壁が近づき、ふとチョコボの背で、後方でほんのわずかな軋みを感じた気がした。

―――風かな?

振り向いたが、何もない。そのまま城下門近くまで来た時、振り向いたカレンが声を上げた。
「リディア様…あちら、エノールの方角です!のろしが上がっております!!」
「え!?」
西方から、かすかに煙がたなびいているのが見える。エノールの方向にある小さな山に、一筋に伸びる黒い煙が上がった。

『有事の際は、のろしで合図を送る―――』

各方面への緊急伝達。何かがあったに違いないのだ。
「皆、降りて!!ここからなら城へ帰れるから!!」
チョコボを幻界に帰還させると同時に、リディアは短距離の時空移動呪文を詠唱し始めたのだった。
「―――デジョン!!」
一瞬の歪みと共に、四人は姿を消した。

その頃。
城の中庭では貴族の子供達が遊んで居ると言う、全くいつもと変わらぬ光景があった。
ふと、庭師の男が空を見上げた時、上空に薄くなった黒い煙を目にとめる。

――― 何だ、何処かで火事でも起きたのか…?
だが、煙は上空に延び、遥か遠いのが伺える。問題のある事ではないのだろう、と再び作業に入ったのだった。


♪どーんなお化けが出るかな

からかさ一つ目ろくろっ首♪

「鬼だーれだ~」


「ぎゃあぁっ!」
「うわぁっ」
「きゃっ!!眼鏡が!!」

四人が落ちたのは、そんな王宮の中庭。しかも運悪く、子供達が輪になって遊んでいる中だった。リディア以外は見事にバランスを崩し、重なって倒れこんでいる。
「何だー何だー!?」
「すっごーい!人降って来た!」

子供達はいきなり輪の中に現れた四人に集まり、物珍しげに眺めてるも、身動きが取れない侍従3人。

「ねぇねぇ、どうやって落ちて来たの!?」
「アイネ~、眼鏡落っこちたよ!はい!」
「あれー、カレンじゃん!!」
あっちへ行け!とアイネとオルフェの下敷きになりながらも怒鳴るカレン。しかし子供達は騒ぎを聞きつけ、次々に集まって来たのだった。
「おい鬼婆カレン!!立ってみろよ!!」
「髪引っ張ってやる~~!!」

そんな中、リディアの顔をしげしげと見るのは、見慣れた少年。
「あ、リディア様だったのか~~!びっくりしたぁ!!」
「…あ、ああ、エル!ごめんね、びっくりさせて。」

エルが”翡翠の姫”とお話した、と言っていたのが本当だと判り、にわかに子供達は色めき立ったのだった。
「えっ…って事は…本当だ!翡翠の姫様だ!!」
「ねっ、本当だろ!!嘘じゃないだろ!!」
やっと立ち上がったカレンとアイネは顔を見合わせ、急いでリディアを連れて城に向かおうとしたが、既に遅い。庭師や通りすがりの兵士も、何事かとこちらを見ている。

「翡翠の姫…!?」
そして、リディアの事を、エッジと親しい旅の魔導師と勘違いしていたオルフェも。
―――あの方…そうじゃないか?
―――いらしてたんだ…本当に!!

「…リディア様…が?あの歌の…翡翠の!?」
「参りましょう、リディア様!」
女官達はうろたえるオルフェを置いて、リディアの姿を隠す様に城へ入って行った。


騒ぎから逃れ、エッジの自室に戻るまでにも、若干、伝達の者の動きがあった様だ何やら色々と、キナ臭い匂いの漂う状況である事に間違いはない。しかしそんな中、オルフェはただひたすら頭を垂れるだけだった。
「申し訳ございませんでした!翡翠の姫様とは存ぜず、大変なご無礼を…!!!」
「あの…気にしないで。何もしてないってば…私は立場的には、バロンの非公式な使者なんだ。だから…エッジの恋人とか…」

そんなじゃない、と、口に出すのは、何故かためらわれる。エッジの英雄談は、今は物語の歌となってエブラーナに広く知られているのだ。

共に戦った、心優しき月の民の聖騎士・誇り高き孤高の竜騎士・美しく気高き白魔導師。そして、清廉なる幻界の―――翡翠の姫君。
その一人を目の前にして、敬服するのも無理はない。正体も知らない最初の最初に、中々の失態を犯した女官2人はともかくも。今は取りあえず、自分とエッジの事実はどうでもいい事だろう。

「それより、外はどうなっているんだろう…」

部屋に戻り、大分過ぎている。様子を見に行ったカレンが戻った。
「城下の軍事施設に兵士が集まっている様子です。民の間に混乱はありませんが…」
「そう…」
いずれにせよのろしが上がる程の事が起きたのだ。軍も動いているのはあまり良い変化ではないのだろう。今日皆で外に出た事はエッジには内緒に、私がこっそり、少しの時間で帰った事にしておいてね、と3人に約束をした時、ふと、廊下の方から微かに足音が響いた。

「おや…誰か、いらしたようですね。この足音…エッジ様ではないな…」
オルフェの言葉に三人は一瞬、身構える。否が応でも高まる緊張感。城の中とは言え、先日の様な目に遭わないとは限らない。

しかし―――

「…家老さん!?」
「―――や、失礼致しました!!誰も居ないと思いまして!!」

ノックもなしに入ってきたのは家老だった。
「はて、リディア様。他の者達も、何時部屋へ?お調べ物があると、城を回ると書き物がありましたで。このじいめ、探し回っておりましたのですじゃ。」

やれやれ、と家老はソファに腰掛ける。エッジの居ない時は、こうやってくつろいでいるのだろう。
「年を取ると、どうにも…」
「ごめんなさい、探させてしまって…あの、実は…生活用品を買いに行ってたんです。その…プライベートなものなので、どうしても私自身で…」
流石に外へ出ていたとは言えない。
「なんと!!その様なものはどうにでも、この者達にお申し付け下さいませ!!い、いや、女性の身とあらば、確かにそう言うのも判りますがのぅ…ですが…それではあまりにも…」
「は、はい…以後はそうします…」

しかし家老は、はたと気が付いたようにリディアに向き直ったのだった。
「いえいえ!!そうではありませぬ!!実は此度の騒ぎ…思ったより大事に至りそうになりましてな…それをリディア様と、侍従の者達に伝えようと思い…」
「え!?」

その言葉に、リディアだけではなく、四人が一斉に声を上げたのだった。
エノールの方からのろしと花火が上がった。交渉決裂だけでなく、武力衝突の起きた合図だという。
いずれ混乱が起きるのが避けられないのなら、城に留めてしまったリディアにも、心配させないように出来る限りの情報を伝え、身の安全を確保させて欲しい、と言うエッジの考えだった。

「先ほど、通信用の鳩が戻ってまいりました。それを見た若様と将校の面々は、急いで先発隊出陣の手配を…状況次第では、若様ご自身の出陣も…」
それを聞いて、今度は侍従3人が声を上げる。
「何ですって!?エッジ様が自ら!?そんなに大事に!?」
「王族が自ら出陣とは…相手はどの様な!?」

交渉が決裂したとはどう言う事だろう。少数とは言え精鋭の護衛がお互い居るのだ。そもそも交渉と言っても今回は互いの言い分を持ち帰る、と言う範疇のはず。先方が交渉を望んで来たのだから、いきなり決裂するはずはない。
「うむ。仔細は判らぬが…反乱の首謀者が、あの…廃位の王の末裔、王家の血を引く者だと名乗った事…軽んじる事は出来ぬと若様は言われておる…」
「廃位の王の…」

―――廃位の…王?

何処かで聞いた言葉だが、何処だっただろうか。リディアは黙って、固まった三人と家老の顔を見つめるだけだった。
「もし事実なら、大事じゃ。城の兵だけでかたをつける問題ではない…若様御自らが出られる事になろうと、徹底的に制圧せねばならぬ。今、全力でその男の情報を集めておる。しかしまだ…確認が取れないのじゃ。今の小競り合いごときに若様自らが動かれれば、事が大きくなるからの…」
「急を要する事態かもしれないが、今はエッジ様が御出陣されるには早い…と言う事ですわね?」

アイネの言葉に、家老は頷く。
室内の空気が静まり返った。
「アイネ、カレン、オルフェ。城の中の者達に伝令を。城内の警備を厳重にせよと。」
「はい!」
三人は一礼すると一斉に部屋から駆け出して行った。

「家老さん…あの…」
高鳴る胸を押さえて、リディアは言葉を絞る。
「私に、何か出来る事はありますか?帰れる状態じゃないから…手伝いを…」
家老がエッジを案じる心には、並ならぬものがあるのはリディアにも感じ取れた。ましてや、得体の知れない魔力を操る敵。

「リディア様…若様をお留めする為、あなた様からもお言葉をお願いしたいのです…」
「…留める…エッジを、ですか?」
そう言うと、家老はソファから降りリディアの前に深々と頭を下げたのだった。
「家老さん…?」

「―――リディア様、この家老…恥を忍んでのお願いがございます―――」



[翡翠の姫君 10]
 

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tommy
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非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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