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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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序章


夕刻の農村の片隅に、その風は突然に舞い降りたのだった。

一陣の渦が巻き起こり、柔らかな光が地面に集まる。それは、典型的な移動魔法の前兆ではあるが、魔法を知らぬ者が見れば、驚くのも無理はない。
「おかーさん、何か光ってるよ。」
「―――!!中に入るのよ、早く!!」
運悪く?それに遭遇してしまったのは、エブラーナ城の近くの農村の親子。二人は家に入ると扉を閉ざし、かすかに開けた隙間から外をうかがっていた。

「あ…れぇ?」

降り立ったリディアは、周りに広がる田園風景に目を見開いた。いきなり目の前に現れた者に驚いたのか、馬小屋の馬達が騒いでいる。粗末な小屋はかたく扉が閉ざされ、ただ鶏と馬の鳴く声がする。どう見てもここは農家の庭先。 
目の前にあるはずのエブラーナ城は遠く東の方向にあった。

―――城…が遠いなぁ…

デビルロードを改良したバロン城の最新魔力増強装置を使いワープしたが、やはりエブラーナでは距離が遠かったのか、着地点がずれてしまった様だった。しかも、既に太陽は西に傾きかけている。
あと一時間もすれば日が暮れてしまうだろう。

セシルの書簡を持って非公式の使者として、エブラーナを訪れたリディア。バロンを出たのは昼過ぎ。僅かながらにもこの世界に存在する時差と言う物を忘れていた。客が訪れるには、少し遅い時間だ。

「あのう、すみません。どなたかいらっしゃいますか?」
リディアは目の前の井戸に近付きながら、声を上げる。

「井戸を使わせてください。あのぅ・・・」
目の前の小屋に人の気配はするのだが、物音一つしない。

「お水、頂きます・・・」
井戸から水を汲み上げるとほんの少し水を手に取り、口に含む。かたり、と小屋の方で音がした。
「ねぇお母さん、女の人だよ。怖くなさそうだよ。」
横開きの扉の隙間から、小さな男の子が顔をのぞかせると、その後ろから母と思われる女性の声が小さく聞こえた。
「顔を出しちゃだめよ!!あの黒い魔導師の奴らかも―――」
「え、でもぉ、ほら、碧の髪。きれいだよ。」
僅かに扉が開けられ、子供が奥に引っ込められ、女性が顔を出す。

「あ・・・どうも」
リディアが頭を下げると、その女性も礼を返した。
「あの、すみません。勝手に井戸を使ってしまって…」
「え、ええ…お城に御用の方、ですか?」
若干の警戒を感じ、前に進むのを止める。しかし女性の脇の下から顔を出す先ほどの男の子は、照れた様にこちらに笑いかけている。

「私、バロンから来た魔導師です。ごめんなさい、驚かせてしまって。」
女性は、黒いローブの下にいたのは小柄な少女と判り、扉を少し大きく開けたのだった。
「・・・そうでしたか。まぁ・・・ご無礼しました。最近、この辺りに変な人達がいるもので・・・」

忍者の国エブラーナでは、魔導師は大陸の様に一般的な存在ではない。いきなり黒いローブをかぶった人間が現れたら、警戒するのも無理はないだろう。

「私は…エブラーナのとある貴族の方まで、書簡を頼まれたんです。」
さすがに王宮の用事とは明かせなかったが、女性の驚き様を見ると正直に外国からの貴人への使者、と言った方が安心させられるだろう。確かにリディアの身づくろいはエブラーナでは異国風、平民と言うには小奇麗な物だ。

「ねぇねぇ、バロンって空飛ぶ『ひくうてい』がある所だよね?」
母に抑えられていた男の子が口を開いた。
「お姉ちゃん一人で行くの?あの黒い人達に遭わないでね。気をつけてね。」
「黒い人…?」
「これ!!あ、あの、恐れながら、暗くなってのお一人の移動は危険です…実は先ほど隠れていたのも、近頃…あなた様の様な黒い服を着た人達が居て…」
「え・・・?」

母親の話によれば最近夜になるとごくたまに、黒いローブを来た人間が近くの林や野原に数人で集まっているらしいのだ。近くに人が通ると人目を避ける様逃げてゆくが、その一団の去った後は地面が丸く焦げていたり、まるで『儀式の跡』と思われる物が残されているので、村人達はその黒衣の一団に警戒心を強めていると言う。
しかし特に誰かが襲われた、と言う事もなく、またその『跡』も長く続く物ではないので、あえて城の方に報告する事はない、と思っている様だった。

「魔導師かな・・・?でも、夜中にそんな事する儀式なんて聞いた事ない・・・いえ、そんな事しないわ。」
首をかしげるリディア。

しかし、西に傾きかけた夕日が目に入り、はたと自分の用事を思い出し慌てて、親子に再び頭を下げた。
「・・・っと、すみませんでした驚かせてしまって。私、移動の魔法が使えるので、城まで移動できます。心配してくれてありがとう―――」

恐れ入りながら頭を下げる母から離れて、男の子はリディアに近付き、髪と瞳をかわるがわる見始める。
「珍しいかな。エブラーナでは。」
「あ、そっかあ!!お姉ちゃん。エッジ様に会いに来たんだよね!!」

―――へ!?

思わぬ言葉だったが、まさにその通り、リディアは目を丸くする。
「こ、これ!!すみません、この子ったら…あ、あの、気にしないで下さい!!」


そして、女性が渡してくれた麦飯をほおばりながら、リディアはローブのフードを胸まで外し、村はずれへ歩いて行った。時折農夫とすれ違ったが、顔をさらした少女を怪しむ様子もなく、挨拶をして通り過ぎた。
魔導師に対しては警戒している様だ。誰もいない場所を捜して、移動魔法で城に向かおう。

―――夜の儀式・・・何かの怪しい集団なのかな?
―――ご飯、おいしいなぁ…でも何でエッジって判ったんだろ。あの子。


「ねぇお母さん!あの人、翡翠の姫かもしれないね!!」
小さな暖炉の前で夕げの支度をする母に絡みつき、男の子ははしゃぐ。
「そう…ねぇ。でも、あれは歌のお話でしょう?」
「でも、歌の通りだったよ。ほら、翡翠の色の髪と瞳、って。エッジ様きっと喜ぶね。」
「そうね…こんな歌、だったっけ?」
母は男の子の頬を撫でながら、小さく歌を口ずさんでいた。

―――翡翠の髪と瞳
―――幻の国の姫君よ・・・


太陽がいよいよ沈む頃。城壁の側にワープしたリディアは、急ぎ足で城門へ向かっていた。

―――エッジ、遅くなってごめんね。

これから自分を待ち受ける大きな運命のうねりには全く気付かぬまま、リディアはエブラーナ城の門をくぐるのだった―――



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プロフィール
HN:
tommy
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非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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