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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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・・・まさか・・・

「バロンよりセシル・ハーヴィ様の使者として参りました。魔導師、リディアと申します。」
にっこり、と笑顔でおどけた自己紹介をするその表情。

―――リディア…!?

「どしたの?」
「夢じゃ…ないよな…」
リディアへ歩み寄ると、その頬を軽くつまみあげるエッジの指先には、懐かしい感触。

「な、何すんのよ!!」
かまわずもう一方の頬をつまみあげる。やはり懐かしい感触。
「離しなさいよっ!」

リディアもまた頬に手をかけようとするが、腕をのばしたエッジの顔には届かない。頬の手は離され、小さな身体は急に、エッジのマントで包まれたのだった。

「ちょっと~!!!」

もさもさと暴れる小さな体。そのまま、頭に当る部分を手荒く撫で回す。
「うっわ本物だよ!お前!!リディアだ!!!」
たまらず、暴れるその塊に頬ずりを繰り返した。
「やめてよ!!!気持ち悪い!!」
「おおおお!!!そのひでぇ言い草!!!まさにおめーだ!!これは夢か!?」
「夢だったら自分の頬でも引っ張れば!?」

やっとエッジの頬を捉えたリディアは、顔を近付けて怒っている。拗ねた表情で乱れた髪を必死に指で梳く姿。何もかも変わらない。

…何もかも?

「あれ?お前、もうちょっと年取ってると思ったんだけど…」
ぺたぺたと髪に、頬に触る。本当に、目の前に居るのはリディアだ。
「年、年って言わないでよ。おばあちゃんになったっていいじゃない。はい!!」先

程のじゃれ合いで危うく放り投げられる所だった書簡は、無事エッジの手に渡されたのだった。


『 ――――  エッジ

お返事届きました。戴冠式に出席してくれると言う事で、ありがとう。
エブラーナの名もこちらの近隣諸国でよく聞くようになりました。
君が来てくれる事で、各国の友好関係にも発展があると思います。

ひいては友好の印として、戴冠式に来てくれた際、小型の飛空挺…と
言っても本当に小さい、エッジ個人用位だけどね…を、バロンから贈りたいと
思っているんだ。

ただ…どうだろう?
君の国では、そう言った物は気に入って貰えるかな…もしそうでもないなら…
…隠し倉庫を用意しておいて下さい。

では、当日は楽しみにしています。…



                   ―――  セシル  』


「…ああ、出席の礼だな。」
リディアも気になるだろうと、ぶつぶつと書簡を小声で読み上げていたのだが、文末に差し掛かり、何やら心躍る一文を見つけ、ひときわエッジの声が大きくなった。

「で、何々!こちらが遣わした可愛いおつかいは、エッジのお嫁さんとして進呈いたします。勿論返品不可。一生大切にして下さい…だってさ!!」
「へ!?!?」
不可解な言伝に、リディアは一気に頬を紅潮させ、手紙に手を伸ばす。

「ち、ちょっと!そんな事書いてないでしょ!?」
「書いてあるもんね~!」
「見せなさいよ!!」
「お~っと、お子ちゃまに王子様の大切な書簡は見せらんねぇなぁ。ほれほれ!!」
リディアの体が飛んでもはねても、高く上がったエッジの手の書簡には届かない。
「じゃ、決まり!今から結婚式だ!」
「やーよっ!あんたのお嫁さんになる位なら、ゴブリンの方がマシよ!!」
半ば涙目での必死の抗議。その目には恥じらいと意地の色が浮かんでいる。

その時。
大切なお客さんが居るにも関わらず、バタン!!と大きな音がして、ドアが開いた。驚いて振り向くと、家老と女官2人が掃除用具を手に、肩で息をしながら立っている。先走りやすい家老。勢いの余りやすい女官達。揃ってしたり顔。嫌な予感がエッジを貫く。

「お部屋は完璧ですじゃ、若様!!」
「お床の片付けも整ってございます。一応枕はもう一つ、下に入ってますわ。」
「あ、シーツの換えは幾らでもございますわよ!!ホホホホホ!!!」

「へ?!床?シーツ?」
目を丸くするリディアに、あらゆる意味で最もエッジに忠実であり、それ故この行為の首謀者である直属女官の一人・カレンが鼻を膨らませて答えた。
「ホホホホホ!!!さぁ、用意は万端でございますわ!!」
「これカレン!!スタミナの薬はどうしたのじゃ!!」
「すっぽんなら確か在庫がありますが…」

―――言うな、バカ!!!!「

も…もういい!!お前ら下がれ!!!」
家老は話を聞いていない。女官は女官で、そう言えばあのクッキーはバロンのお菓子だった、と慌てふためいている。理解しがたい状況に、リディアは少し青ざめていた。そしてエッジは涙目。

「お前ら…頼むから消えてくれ!コイツが帰っちまったらお前らのせいだからな!?」
「何とっ!!不始末とあらばじいは腹を切…」
「出てけ、って言ってるんだ―――――っ!!!」

ついにエッジは無言で女官達の首根っこをつかみ退場させ、ついでに家老も蹴り出したのだった。


「あ、あのねエッジ…このお店のクッキー、ローザ大好きなんだよ。」
「そ、そうか…」
しばしの沈黙の後。リディアがやっとの事、口を開く。
5分ほどの時間だったが、眉間からも汗が出る程の緊張感をかもし出していたリディア。流石に女官の言った意味も何となく判ったのだろう。
「か、勘違いされたみたいだね、あはははは。」
「そ、そうだなおぅ。お、俺達は別に、その、ふ、ふつーの仲良しなのになぁ。」
普通の仲良し、と言う言葉がしっくり来てしまうのが悔しいが、正にその通りの現状。

「そ、そうだこのクッキー、小さいお店だけど、ローザの実家の近所では結構人気のお菓子屋さんでね、ローザは子供の頃から好きだったんだって。今でもこっそり献上してもらってるらしいよ。あまり有名にしちゃうと、おじさんおばさんが大変だから、って。」

バロンに滞在し、忙しいセシルとローザの周りで色々な使いをしていたらしいリディア。
「そ、そうか…で、こっちに、戻ってたのか?」
「うん。セシルがバロンに呼んでくれたの。…黒魔道師の老師さんが亡くなったから、呼んでくれて…色々、手伝っていたんだ。」
「ああ…そう言えば、そんな話も流れたな…」

バロンの大魔道師が急逝した、と言う話は少し前に聞いた。
その為、儀式用具や封印文書を整理するのに強力な黒魔法の力が必要になり、セシルはリディアに助けを求めたと言う。
本来ならばミシディアに助けを求める所だが、かつての戦いの爪あとか、事情を知ってはいるものの未だにバロンにあまりいい印象を抱いていないミシディアの民も多かった。セシルもまた、それを判っていたのであえて協力を求める事はしなかったのだろう。

しかし、それでバロンにリディアが来ていたとは。
「幻界にすぐ帰るのか?」
「う~ん…セシルとローザ、忙しそうなんだよね…でも…」
「忙しい?へぇ、ウチの国なんか一週間もありゃ戴冠式の準備は…って、聞いてるか?」
何か考えていたものの、ぷにっ、と頬をつままれ、ふっと我に帰るリディア。
「うんと…迷ってるんだ。実は…」

リディアはぽつりぽつりと、皆と別れた後の事を話し出す。
「幻界に戻ったら皆喜んでくれたんだ。嬉しかったよ。ただ…皆に置いてかれるのは嫌だなって思う事も…う~ん…でね、ちょうど、セシルがバロンに呼んでくれて…もしこちらで暮らすならどこかの国、バロンかミシディア…の保護を受けた方が良いってセシルが言うんだけど、そう言う…難しい事からも少しだけ、離れていたくて…」

白魔導師であるローザは、戦いで培ったその強大な魔力故、今では聖人の称号を与えられ、バロン白魔導師団の総帥に推薦されている。リディアも魔力のレベルで言えば、国家クラスの保護下に置かれる立場だろう。強大な力を持つ魔導師が、ふらふらとしている訳には行かないと言う事だ。
「アスラ様も、お友達の所でゆっくり考えていらっしゃいって言ってくれたし…でもあまりゆっくり…」 

しかし。
人間とは比較にならない寿命を持つ幻獣にしてみれば、リディアが100年、地上で『考え事』をした所でゆっくり、の範疇だろう。直ぐに帰っていい用事なら、何もリディアをよこしはしない。多分それはあの二人にも不本意だ、とほくそ笑むエッジ。
にまぁ、と見る間にその顔がゆがんでゆく。

「さっさと帰る、と言うのなら俺は強硬手段を取らせてもらう。それがセシルの望みだ。うん。」
「…?」 
「お前は俺の部屋に監禁します。」
その言葉に、リディアは目を先ほどより更に大きく見開き、ぽかん、と口を開いたのだった。
「…へ?どうかしたの…?監禁って…何の冗談…」
「い~や、俺は本っ気でお前をもてなしたいの。俺王子様。俺の方が偉い。命令絶対。」
「ちょっと!!め、命令って…何がもてなすよ!?」

―――がしっ。
逃げる間もなく、大きな腕がリディアの両肩を掴んだ。
「よぉし、じい!!女官ども!!カレン!!アイネ!!このお客さんのベッドを俺の部屋に運んでくれ!!まぁだコイツ、おねしょするかもしれねぇからな。同じ床じゃ眠れねーよ!!」
「ぶ――――っ!!!!」 

声にならない声で反論するも、またもやマントに包まれてしまい暴れるリディア。
「わ…若様!!!ジイはこの日を待ちわびましたぞ!!どうか良きまぐわいを…」
「まぁ、やっぱりそうでしたのね!!ホホホホホ!!!」
「え、ちょっと待って!?!?何それ!?!?いっや――――――!!!!」

むせび泣く家老と女官達に見送られ、ばたばたと暴れるリディア包みを抱えたエッジは、意気揚々と自室へ戻って行くのだった。


***********************


「どうだ、居心地は。結構広いだろ?」
「もう…檻にでも入れられるのかと思ったよ…」

辿りついたエッジの自室。一部カーテンが引かれリディアのスペースが区切られていたが、それでも十分な広さがある。正に一部屋あてがわれたと言う感じだった。エッジはようやく繰り上げた公務の残りを終え、やや疲れ気味でソファに身を横たえている。

「え~、こほんっ。」
咳払いひとつも、リディアはそっぽを向いている。いささか、昼の騒ぎが効いているのだろう。
「冗談はさておき…お前、よかったら本当、この国で暮らさねぇか?こっちで生活して幻界に遊びに行くってのもありだろ?お前、もう一人じゃないんだし。色々難しい事考える必要もないだろ。」
うん、と頷いたリディアだが、言葉は無い。

さっきの騒ぎが効いたのだろうか、とは思うものの、何やら目を閉じ、若干心ここにないご様子。何か、瞑想でもしている様な雰囲気だ。
「…どうした?何か気になるのか?」
「うん…えっと…西が強いな。エッジ…西には、何があるの?たくさん人がいるの?」
「へ?山だよ。山。ずーっと山。俺たちが隠れ住んだ洞窟もあるけど…近くの町なら、大きめな港町が一つ、後は海岸沿いに小さな集落かな。それ以上の山を越えちまうと、各地の知事に殆ど任せてるし。」

何でそんな事聞くんだ、と首をひねったが、リディアの目は西を見つめたまま。
「えっと、その港町は下手すりゃ城下より人多いぜ?何なら、観光しに行ってもいいけど・・・後は山岳部に少数民族がいくつか…山を超えた辺りにも小さな町はあるけどな。あと…定住はしてない様なんだけど…昔、バブイルの塔のあった辺りの急斜面に…組織みたいなのが一つ、かな。」
「…組織?」
「いや…あまり。まぁ何て言うかさ、反対勢力ゲリラって言うの?うちも色々歴史があって、壊滅させるには問題のあるヤツが束ねてて…ここ最近は大人しいよ。何で?」
「ううん。魔力を使う人、いるのかな…黒い服着て。魔法で移動したんだけど、失敗しちゃって。」

農村の親子の事を思い出し、魔力の歪みの様なものを探っていたのだが、ほんの微かなにしか察知できなかった。
魔力での移動は、着地点によっては周辺の魔導師が儀式を行っていた時など、その力が磁力の様に絡まり、若干のずれが生じることもあるのだ。しかし、魔法の歴史の浅いエブラーナにそれ程の作用はないだろうと思っていたから、何も対応しなかったのだが。

「…移動魔法で城につけなかった?だから、魔道師が近くにいたのかも、って?」
魔導師。エブラーナではその存在は、殆どが城の中。地方に行けば、未だに信じていない人もいるだろう程、なじみの無いものだ。
「影響が出る程の魔道師かぁ…ない、と思うぜ。エブラーナでは、魔導師は数える程しかいない。対外的に話が通用するから置いている様なもんさ。外で練習してもたかが知れてるし…」
「うん…何だか、なぁ…」

エブラーナにも魔導師は居るが、あくまで研究員的な立場。移動魔法に影響する程の力はない。
「大丈夫だよ。一応、うちにいる少ないのも、エブラーナ国家公式の魔導師として、ミシディア魔導師社会のルールとか叩き込まれてんだぜ。内緒で外でデカい事なんてしないよ。」
「そうなの?エブラーナも、加盟しているんだ。」
大陸では、魔導師はミストの様な小さな村であっても、少なかれ国家の監視下に置かれる。干渉を受ける事は殆どないが、魔導師達も力の悪用を避ける為、独自の規律を作り、ミシディアが内政干渉にならない範囲でそれを管理していたが、各国の方としても、力のある魔道師を抑える存在はあった方がいい為に、魔法規律の部分でのミシディアの介入は容認している部分があった。
それが忍術の国であるエブラーナにも及んでいるとは。

「そうだったんだ…意外としっかり管理されてるんだね。」
当たり前だ。俺は頭の固い王様にゃならねぇ、とエッジは鼻を膨らませる。

「明日は、夕方しか空きがねーんだ。女官達に城内案内させるから、ゆっくりしてくれ。」
「ありがと…じゃ、お先に眠らせてもらうね。」
おいおい、つれねぇなぁ、と言うエッジの声をよそに、一人、カーテンをくぐるリディア。
「…監禁なんて言うからびっくりしたよ…」
リディアのスペースは、幻界の部屋よりもはるかに大きく、置かれた簡易ベッドはリディアが三人は寝られる程の大きさ。

―――エブラーナの人って、面白い人多いな…さっきの女官さんとか…

明日は、その女官達に城を案内してもらおう。
旅と騒ぎの疲れから、ベッドに入るとすぐに眠気が押し寄せて来た。


・・・リディア・・・

眠りに落ちる前。微かに、エッジの声が聞こえた気がした。




[翡翠の姫君 3] へ

 

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HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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