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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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 碧き風の舞い降りた国

 

第1章 翡翠の姫君  1


月の血を引く英雄達よ
王子は仲間と世界を救う
翡翠の髪と碧き瞳
幻の国の姫君よ
時の流れたがう世界へ…
王子の嘆き誰が知らんや
王子の嘆き如何ばかりなん

「なーんて歌が流行ってるってもなぁ…」

近頃城下で流行っているのは、旅の吟遊詩人達が近隣に広めた歌。
これは王子の恋物語だと、エブラーナの民の間ではささやかれていた。

折しも海の向こうの大国バロンでは半年後、新王の戴冠式が行われる予定であり、その噂は遠くエブラーナにも及び、新たな王セシルは自国の王子の戦友、歌の通り月の民の血を引く英雄と讃えられている。エブラーナの人々が、王子のロマンスに心を躍らせるのは無理もない事だった。

かつて旅の途中、仲間達とエブラーナに戻った時。『王子と共に国を救ってくれた英雄』とエブラーナの民達は仲間を歓迎した。エッジに引けを取らぬ強さと、整った顔立ちを持つセシルとカインに娘達は色めき立ち、バロン屈指の美女、と言われたローザに兵士まで見とれる始末。

そんな中、リディアはその髪と瞳の色から『翡翠の髪の娘さん』と称され、エッジとの歯に衣着せぬやりとりを皆が微笑ましく見守っていた。

―――それがいつの間にか、『翡翠の姫』かよ…

全く、お陰で女達には
「エッジ様~あまり娘達を追いかけると翡翠の姫様に怒られますよ?!」
とからかわれる始末。やれやれ、とエッジはため息をつく。上向きに向けられた唇から息がもれ、短い銀髪の前髪はふわりと浮き上がった。端正な顔立ちと、切れ長の目が一瞬伏せられる。しかしそれは、目の前の老人には、子供がすねた表情にしか見えない。

「若っ!日頃の行いの報いですぞ!ここぞとばかりに娘達に槍玉に…じいは情けないやら…そもそもこのじいが持ってきた縁談を一体幾つ断れば…」
「26個目だろ!しかも時代錯誤なおメカケ希望!俺は種馬じゃねぇっつーの!!」
「28個目ですじゃ!若!」

どん、と机に置かれた書類の束。
「ったって、こいつら皆さぁ…俺と縁談うんぬんより…正式なカミさんもいねぇ俺によ?今どきメカケに、側室にしてくれとかおかしいだろ…どう考えたって、断る口実じゃねぇか!?」
「いや…そうですのぅ…今風の言葉で言うなら奥さんの前に『本カノ』 になって…うまく行けば正妃になって、だめなら別れて位の物じゃ…まぁ試用期間、お試し期間…」
最近の家老の『結婚しろ』攻撃の激しさ。まったく、とエッジは頭を抱える。
「だから何でそう良い方にとらえて…って、じい…何だよその本カノって?」
「大国の若者は、本命の彼女の事をこう呼ぶそうですじゃ。しかし、恋人に本命も他もあるかとじぃは思うのですがのぅ…」

どうやら、皆、流石に一国の王子との縁談をむげにする訳にも行かずに何とか断ろうと、『わたくしの様な者は側室でも勿体無く…』とか言う言い訳を用意しているらしい。
バロンの大貴族の家よりも小さな城を持つ、ただでさえ小さなこの国の王子。流石に平和な頃には縁談に困る、という事はなかったのだが、今復興真っ盛りの時に妃になろう、と言う奇特な女性は見当たらないと言う事だ。

今王家に嫁げば国内復興の資金を負担する羽目にもなりかねない、しかし娘が責任や公務の無い側室、と言っても側室と言う制度自体は今は無いから、今流に言えば彼女だろうか、になれば国が安定し上手くいったらゆくゆくは…と言う貴族達のしたたかな目論みもあるのだろう。

はいはい、と返事を流しつつ、エッジは書類に目を通しながら頭をかいた。
「去年の港の改修に700万ギル…高くねぇ?エノールの街の港だろう?規模からすると…これ知事の足元洗っといて。地元の民から勝手に税、搾取してるかもな。おまけに何コレ。王族用の兵器輸入…あ、書類手違いの扱いか。全く…」
「若…」
「えーと次々。バブイルの洞窟を漁業用に改築したのか。ああ、そりゃいいな。」
家老は泣きそうな顔をして、エッジの顔をまじまじと見つめている。

「気持ち悪ぃな…何だよ、じい…」
「ご立派になられて…常に民を守り思いやるお気持ち、正に王と王妃より受け継いだ物ですじゃ…若…じいは判っております、若のお望みは…翡翠の姫君を妃に迎え、エブラーナを治めて行く事…しかし…」
その言葉に一瞬、エッジの手が止まった。

―――あいつは、ふつーの生意気なガキだ。翡翠の姫君なんかじゃねぇよ…

が、またも書類に落とした再び目が軽く伏せられているのに、家老は気がつかず言葉を続けている。
 
即位こそしてはいないが、エブラーナの次期国王。
自分の立場を判っているし、世の中も平和になり、ここで一つめでたい話でも上がれば国民の気分も上がるというもの。だから家老が縁談を持って来るのは止めない。でも、それに気が乗るかと言えば、残念ながら話を聞く気にもなれない。
今は国の再建専念を建前に、来た所で一切話を断っている状態だ。

家老は家老で、エッジの気性を判っている。彼の気が済む様にしても大きな間違いはない事も。しかし、国がかかっているとなればそうは言っていられない、というのが現実だ。

ここ、エブラーナは他国と違い、忍術を始めとした独特の文化を繁栄させている。
先代の王の時代に飛空挺でバロンの使者が訪れるまで、国家レベルの外国との国交は殆ど無いに等しい状態、独立国家である事が不思議なほど小さな蛮族国家、と揶揄される程だった。
確かに歴史をさかのぼると国は長く乱世、諸侯は血で血を洗う争いを続けており、度重なる戦は国の人口や経済活動を停滞させ、そういった事は徐々にひずみとなって国家を衰退させ勢力は分散、国家中枢の権力も他国に比べればかなり小さく、今、エブラーナに反発するもっとも大きな勢力は、数代前は王族の一人だったと言う話もある位だ。

国の乱れは時と共に和らぎ、今では人々は農業や鉱業にいそしみ、小さい国ながらも穏やかに暮らしているが、未だ国を取り巻くイメージは特殊である事に変わりはなかった。

「亡き王も…王妃を迎えられる折はご苦労されました…」
エッジの母は、武勇に秀でた地方貴族の娘―――先王の地方公務で出会った二人は恋仲になったものの。政略結婚の気風が濃かった時代、大きな力を持つ家の者でも、隠密組織の優秀な女忍者でもなかったエッジの母の輿入れに対する反対は大きかった。

だが、それを押し切って妻に迎え入れられたのだった。
やがて生まれた待望の子には、『刀』の意がその名につけられた。

―――エドワード・ジェラルダイン―――エッジ。

王妃にとっては不慣れな宮廷の生活だったが、王は常に王妃を守り、またエブラーナを平和的に発展させる為、力を尽くしてきた。王の代になってからルビガンテとの戦いまで大きな戦は起こらず、文化や商業面で民間の外国交流が広がり、二人は亡くなった今でも名君と讃えられている。

「…エブラーナにも新しい風が入っております……しかし今や王家は若様お一人…」
大仰な事だ、とばかりに、へっ、と鳴るエッジの鼻。
「ああ、じゃウチもバロンみたいに議会で次の王様決めちゃおうか。世襲王政じゃなくて。」
「わ、わ、若様!!!!」
「煮えきんないなぁ。じい。いいよ、思い出したら言ってくれ。ささ、出てった。」

…煮え切らないのは、俺の方じゃないか…

全く、誰がそんな歌を作った?―――あながち嘘でもないけど。

例えば、の話。碧の髪の 『翡翠の姫』 は。
確かに王族と外国の村娘。身分で言えば反発はあるだろうが、世界を救った英雄の一人であり、優秀な魔導師。今や世界一の大国であるバロンとの縁の強さ。人格。全てが身分の差を補って余りあるだろう。行動を起こすのに足りないもの、それは自分自身の覚悟。

―――妃ってさ…大体よ、あいつ、俺の事何とも思ってないかも知れねーんだぜ?

「リディア…」
ようやく、その名を呼んだ。
バロン新王戴冠式…セシルとローザの結婚式は半年後。エッジは再びため息をつく。これを逃したら、もう二度と会えないかもしれない。

―――どうする?俺。

ここしばらく、気を抜くとそんな言葉ばかりが頭に浮かぶのだった。


*******************

その頃、城の周辺では―――

「お疲れ様です!」
夕刻も近いエブラーナ城門近くでは、勤めを終えた女官達が次々と城下の家と帰路についていた。門番の中に珍しく壮年の将校を見つけ、女官の一人が立ち止まる。

「ごきげんよう、ガーウィン隊長。外へお帰りですか?」
「うむ。お勤めご苦労。妻が実家に寄っているからな。迎えに行ってくる。」
ガーウィンと呼ばれた壮年の将校。かつての戦で、直接ルビガンテと対峙し生き残ったのは、エッジとこの男だけだった。しかし下々への気さくな振る舞いからは、彼がエッジの近衛兵をまとめる隊長だと気づく者は少ないだろう。

「では頼んだぞ。まぁ世も平和になった。狼藉者もそうは現れないであろうがな。」
将校が笑いながら馬にまたがり、踵を返そうとした時。
「ガーウィン殿…あれは…?」
兵士の示す方に、城下町の通りから門に小さな影が近づいていた。
その者は、頭から全身を黒いローブで覆い、明らかに異国の魔道師の風体。エブラーナへの来訪者としては、極めて異質な雰囲気を漂わせている。

「…何だ。あの者は…来客の予定はあるまい…」
兵士達が刀に手をかけるのを、将校が制する。
「無用に刀を抜くな。見た所、敵意は感じない。」
「しかし、ガーウィン殿…密使であれば、もっと目立たぬ方法で…」
「…敵であれば尚更。それに、あれは若い娘だ。」

「そこの者!ここより先はエブラーナの城。面を明かせ!」
兵士の声に一瞬その影は身体を固まらせたが、差し出されたのはバロンの印章。将校は様子を伺っていた背後の兵士に控える様に指示すると、立ったまま目立たぬ様に、礼を示す。

人影は、およそ姿とは想像できない、少女の様な声でささやいたのだった。
「あ…えっと、近衛兵隊長さん…でしたよね?洞窟でお会いした…私は…」
「お久しぶりです。若様の大切なご友人を忘れる事など…ようこそ、リディア様。」
ローブの間から垣間見えたのは、碧色の瞳。
「バロンの非公式な使者として伺いました。エッジ…エドワード王子にお会いしたいの。お時間かかってもかまわないから…待たせて頂けますか?」

「承知いたしました。恐らくは、すぐにでも大丈夫かと。おい、こちらのお客様をサロンにお通ししろ。」
将校が振り返ると、兵士達はリディアの顔を目の当たりにし、腰を抜かさんばかりに驚いている。

―――エッジ様と…ルビガンテを倒した…
―――翡翠の…

将校が大きく咳払いをすると、兵士は慌てて背筋を伸ばし、大仰な礼をしたのだった。
「しょ、承知いたしました!!では御内密に、若様にお取り次ぎ致します!!」
裏返った兵士の大声に、務め帰りの女官達が振り向き、通り過ぎて行く。

―――ねぇ…今の方…
―――似てるわよね…エッジ様の…
 
そして程なく、エッジの自室に現れたのは。
「わわわわ若様っ!!セッセッセッセシル様よりの隠密でございます!!」

いきなりのノックもなしにエッジの自室に入って来たと思ったら、騒ぎながら部屋を回っている家老。こう言った事もまぁたまにはあるけど、今回は一体何事か。
「何セッセッ言ってんだよじい!しかも隠密!?」
「黒のローブに身を隠しておりますがゆえ…」
非公式の使者ねぇ、と大儀そうにソファから身を起こすエッジ。

…何の用だろう?戴冠式の用事なら、公式な使者を出してくるはず…

正式な使者であれば後日に時間を設けて王の間での謁見と言う事になるが、国の用ではないと言う事で使者は来客用の簡素なサロンに通され、エッジを待っているらしかった。直接通されると言う事は、相当身分のあるものか、或いは公には出来ない内密にも緊急な話と言う事だろう。

「エ、エッジ様!」
そしてエッジが回廊に出ると、女官二人がひどく慌てた様子で駆け寄ってきたのだった。二人とも、幼い頃から自分に仕えている胆の据わった者達だが、珍しく揃いも揃って慌てている。

「すぐにお部屋を片付けますか!?お、お茶は緑茶でよろしいのでしょうか!?」
「…シブチャ・ヨーカンじゃぁ外国の方だし…そうそう!!クッキーをお持ちしますわ!」
「部屋を何だって?全く、何言ってんのお前ら。」

そのクッキーだって確か外国の輸入品だろと半ば呆れるも、自分を囲みながら騒ぐ女官達。エッジは、かまわずサロンの方へ足を進める。
「お、おい…非公式の使者だろ?そんな騒がないでやれよ…大体さ、何で俺の部屋片付けんだよ?せっかくエブラーナ来たんだから、良いお茶とヨーカンでも出してやって…」
「はぁ、ですから、とりあえずエッジ様がいつも食べてるヨーカンをお出ししておきました。」
「ちょ、俺のヨーカン勝手に出すなよ!!あれトラ屋ので高いんだぞ!!!!!」

そこまでするなんて一体どう言った用件だろう、と半ばいぶかりながらサロンの扉を開けた瞬間。栗ようかんを爪楊枝でつまんでいた使者はこっちを向き、立ち上がったのだった。

「エッジ、久しぶり!!…っと、エドワード王子…お久しぶり、です。」
「んあ、おひさ…って…」

ローブのフードが外されこぼれたのは、碧色の髪。愛らしい瞳が自分を見て微笑んでいる。
「 … え!?!?えええええ!?!?」
それは、夢にまで見たかったけどそうは中々見れなかった者の姿。

―――!!!

反射的に、エッジは後ろを振り返り、控える女官達に叫んでいたのだった。

「こ、紅茶とクッキー二人分!って言うか早く出しとけ!!しけたヨーカンなんて食わせてんじゃねぇ!!俺は過労でダウンだ!公務は繰上げだぁ!!行けえええ!!!!」



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自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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