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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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「う~ん…三秒以内にウソです、って言ってただろ、いつも。困らせんなよ…」
こりこりと鼻っ柱をいじりながらエッジは顔をしかめているが、困らせられているのはこちらの方。エッジも無神経にその様な事を言う人間ではない。それは判っているんだけど。

「…だってさ。さっき…『奥さんを迎える時は段取り踏んで…』って言ったよ…」
「あ~…ごめん、今は例外って言う事で…いや、だからさ…それに関しては、今すぐ急いでどう、ではないよ。ただ―――」

―――例外…言うに事欠いて…

「ほら、ウチの民はさ、どーも変な歌に影響されて、お前を魔法の国のお姫様みたいに思っているみたいなんだ…えっと…だからお前が俺と一緒にいて、それ見たら結構元気出るんじゃねーかと思って。民が、そう民民。」
「えっと…つまり、私が翡翠の姫君役になれば、皆の心の助けになれるのかな…」
「ま、そう言うところ…だな。」
そう頷きつつも、心なしか少し、エッジの表情は曇った様子。勿論理解した上での、リディアなりのさっきのいきなりの仕返しのつもりだったが、思ったより『効いた』様だった。

「ただ、その…この戦が終わったら考えてみてくれねぇか?」
「えっと、ほら、いまは…戦、だよね…」
返事にならない返事ではあったがこくり、とリディアはうなずき、二人は再び食卓に着いた。
「う~ん。とりあえず、今はそのお姫様になってもいい、かな。感謝してね、エッジ。」
「ああ、王子様の愛で、一生かけて返すからな。」
「一生もいらないよ!!」
頬を膨らます小さな頭を、テーブル越しにエッジの手が軽く叩く。

小さな内乱ではあるが、エッジは一国を背負って死を覚悟しなければいけない立場になった。現時点唯一の王族。正直な話、家老といいエッジといい身勝手な物言いとも思うが、それでも『翡翠の姫』が降臨してエッジの勝利の女神となるなら、その役目を負いたい。小さい国だからだろうか、どうにも放って置いたらあまり良い事にならない様な雰囲気。後の事は、後の事だ。

「…どうして、王には王妃が必要だと思う?」
「えっ?」

いきなりの、エッジの問いかけだった。
「いや…いい加減な事言うとさ、王様が一番偉くて、子供だけ作って王家を繁栄させてって…だったら、たった一人の妻とか、どの女が一番かってのを決める必要はないよな。でも、世界中どの王族でも正式な夫婦としての王と王妃がいる。」

言葉の真意がわからず、リディアは黙って頷く。

「必要だからさ。まぁ親父の受け売りだけど…どんなに王や女王が有能でも一人の人間である以上、限界がある。二人なら、発揮できる力は全然違う。俺もまぁ…結構華やかな時もあってさ。いよいよまぁ、ちょっと問題っつぅか…ね、起きちまった時…親父に言われたんだよ。飾り物の様な娘達にうつつを抜かすお前では王にはなれない、それが判ったか、とか何とか。」
言葉を続けながらエッジは、リディアの皿に残った小さな肉をつまみ上げる。
家老の言っていた、婚約者の話だろうか。半ば濡れ衣の様な醜聞なのだろうが、エッジの日ごろの行いがそう弁解する事を許さなかったのだろう。
 
「最初は意味が判らなかった。でも、実際親父もお袋も居なくなって、仇討とうとしたら返り討ちにあっちまった。それでお前らに会って。俺も一人じゃたかが知れてるって…何となく、親父が言いたかった事判って来た様な、そんな感じでさ。」
お茶を飲む手が自然と下に下り、リディアはその言葉に引き込まれていた。
「俺だって王子様さ。正妻希望の縁談は日照り気味だけど、なーんの公務もねぇ気楽な御寵妃になっていい生活したい…そんな女はいくらでも寄ってくる。最近28件断ったよ。でも俺、そんなのいらねぇ。うっとおしい。」
「ご寵妃?何それ?お仕事?」
「ち、違う違う!!えーと…お偉いさんの彼女だよ彼女!!ったくよぉ、大体俺が何時彼女募集したってんだよ…どいつもこいつも余計な世話焼きやがて…」

仕事と言えばそうかもしれない。身分の高い人間の遊び相手になる代わりに、面倒を見てもらう。ただ、リディアには聞かせてはいけない言葉だった、と慌てて話を変える。

「だから…おめーとなら、そんなんじゃなくてちゃんとしたふ、フウフ…いや、アレになれんじゃないかなって、ずっと思ってたの!!俺の、その、勝手なアレだよ!!!」
「に…28件…」
エッジの熱弁にも、リディアの関心は別の所に向けられているご様子。
「そこかよ!!まったく…らしくねぇ事言っちまった。最後だけ聞いてくれりゃいいよ。」

だがしかし。あ、と声を上げ、首を振るリディア。
「でも私、エブラーナの文字読めないよ!!!」
「あのなぁ…そう言う細かい事は全部面倒見るから!漢字ドリル用意するから!!って言うか、ウチの国だって半分は共通語だから大丈夫だよ!!」
はて、と首をかしげたまま動かない小さな顔。
しばらくの間、王族としての仕事をする。そこでリディアの思考はとまっている様だった。
「う~ん…で、エッジ、私どうすればいいの?えっと、何か今日明日からやる事ってあるの?」

「そだ、な。カレンとアイネ…あと、まともな奴が必要だな…オルフェにも手伝って貰うか。」
「ま、まともな人って…」
やはり、あの女官二人はまともではなかったのか。
「ところでさ…あいつ、おめーの好み?ガキの頃から知ってはいるんだけどさ、結構、オンナに騒がれてんだぜあれでも。ヤサ男だから、ちょっと気にくわねぇ。確かに大陸ならあいつの方がモテる系の顔かもしれねぇけどさ、でも俺とアイツが同じ位っておかしくねーか?どーみたって俺の方が…」
「ちょっ…そんな事言ってる場合なの!?」
呆れながら、リディアはエッジの皿のあらかた残されたグリーンピースを掬い取った。

「あ~ん、ってしてくれたら全部食べる。」
「バッカじゃないの!?」

あえなく撃沈した様子。
「う~…ま、あいつらだけにお前の面倒見させるわ。それで…明日、本格的に 兵を動かし始める、まぁ結構特別な日になりそうなんだ。」
「…そうなんだ…」

内乱の現状は、言葉以上に緊迫しているのだろう。
交渉の場所が爆破された事で、もはや話し合うと言う方法はなくなり、軍の中でも兵を増やし一気に殲滅を、と言う声が高くなってきたのだ。そして王の血を引くと名乗る者を自らの手で捕らえたい、と言うのはエッジの望みでもあった。
 
それでな、とエッジが、若干言葉の調子を整える。
「明日、俺が城に帰って来たら、玄関の迎えの間で俺の刀持ちしてくれないか?」
「刀持ち?」
「そ、玄関で、俺の刀持ってくれ。」
はて、と、昔読んだ本の、遠い異国のチョンマゲ殿様の後ろに控える刀持ち少年を思い出すリディア。 刀を持ってエッジの後ろをついて行くと言う事だろうか。
うんうん、とエッジは頷き、簡単だろ?と言いながら顔を覗き込む。
「ほれ、王族にありがちなさ。どーでもいい事をおおげさにやって、権威見せてやろう的なもんだよ。まぁこーゆうのを下に見せると、『緊急事態』って感じするだろ?」

元々エブラーナの宮廷儀礼は簡素な物が多く、他国では王の帰りは兵総出で迎えるのに対し、この国では玄関を守る兵だけが出迎える、と言う程の差だった。

―――でも…それに、私が出ていいの…?

「判った…とにかく、二人に聞いてやってみるね。」
その言葉に、わずかにしてやったり感を出しながらも、エッジは頷き席を立ったのだった。
「?」
「おし。決まりだ。ああ、食べ終わったら、ワゴンは廊下に出しといて、先に寝ててくれ。じゃ、おやすみ。歯磨き忘れんなよ。」
サラダをほおばる頬におやすみのキスをして、そそくさと部屋を出てゆく。
「全くっ…」
お出迎えとか刀とか、色々考えている様だ。随分急いでいたけど、あの二人と何を話すのだろう。
―――まぁ…エッジに任せておくしかないか…
サラダの大皿を抱えながら、リディアは最後のレタスをかき集め、ほおばった。

部屋から出たエッジに、音も無く近づいてきた影。
若き近衛兵トマス。先日の襲撃の際、リディア達の元に駆けつけた青年だった。
「トマス…調べついたか。消えた連中は、どの位だ?」
「はい…商業に縁のある大貴族の当主は、交渉施設爆破の情報が入った直後、ほぼ全員国外に出た様です。」

想像通りのその言葉に、くそっ、と短く吐き捨てる。
「情けねぇな。貴族のくせに国を守ろうなんて、思っちゃいねえ…もういいさ。こっちは都合よくできる。明日、出迎えをするから、近いのには知らせといて。」
近衛兵は一礼し、すばやく立ち去った。

そして夜は更けて行き。当然のことながら、エッジは部屋に戻る事は無かった。
夜着に着替えたリディアが一瞬、魔力的な軋みを感じた時、机の上に置いたペンが、にわかにカタカタ…と音を立てた。立ち上がり、紙を横に置く。するとペンは一人、つらつらと魔導師の文字を連ねて行った。
高等魔導師同士の連絡手段である、筆魂の術。それも、魔導師の中でも最高峰の位を持つ『聖人』の筆だ。その辺の魔導師に妨害できる物ではない。

「ローザ…」
リディアは、かつての戦友であり、バロン王妃に戴冠するその女性の名を呼んだ。家老の来訪の後に書いた筆魂の手紙、海を隔て、魔力的な土台の少ないエブラーナでの術には不安もあったが、ローザには無事届いた様子。


『―――リディア

手紙をありがとう。無事そうで安心したわ。

実はエブラーナ内乱の話は、ミシディアには既に知られています。
そこからこのバロンにも、昨日情報が入りました。魔導師が加わって
いると言う事で、長老はじめ魔導師組織も動き出した様です。

話を聞いた限りでミシディアに分析を依頼しましたが、、反乱勢力の魔力の
使い方は、独自の魔力訓練で攻撃魔法を培った感があり、基本的な部分を
習得していない非常に危険な使い方、と言っていました。

少し前よりエブラーナ国内の動きは、魔術的な部分で監視をさせて
貰っている様です。

―――勿論、貴国の益になる部分のみと思われますが

恐らく、ミシディアにとって、何かしらの予兆はあったのでしょう。
公に動く事は出来ませんが、もしもの事があったら、協力は惜しみません。

今は私達の分まで、エッジを助けてあげてね。

何か情報が入ったら、すぐに連絡するわ。


                                  ―――ローザ 』

 

「ローザ…ありがとね…」

バロンに助けを求めるほどの事ではないけど、伝えてはおきたかった。しかし、思わぬ所まで話が広がっている事には驚く。

―――ミシディアに情報が行っているなんて…

確かに、先日馬小屋で会った男たちの魔法は、本来ならば彼らが使いこなせるレベルではないものだろう。何と表現していいのか判らないけど、それは例えるなら、分不相応な力の使い方だ。魔法の素養の無いものでも、数年学ぶ事で基本的な魔力の使い方は判る様になるが、それを実際に使う、と言う段階になると様々な制約が入る。
それは、術者である以前に人間として長く生きる事を優先させる為、肉体や精神の磨耗や疲弊を防ぐ為だが、あの者たちにそう言った備えはあるのだろうか。
恐らくは、『力』を得る為の修行のみをしてきた者たち。それは、術を使う全て者の禁忌なのだ。
 
他にも、侵略、暴動行為に魔法を使う事など、様々な意味での魔導師社会の掟破りとあらば、ミシディアが介入する可能性がある。魔道師を中心に組織され、強大な力を持ちながら中立を貫く非常に穏やかな国。 しかし裏では魔導師社会の元締めとして、組織犯罪加担等で魔導師の中に非人道的な振る舞いがあれば、容赦なく鉄槌を下す事もある。

力のある魔導師であればあるほど、国の利益になるが逆もある。魔導師に絡んで問題が起これば自国で解決できない事も多く、その部分の非公式な介入は、世界各国が黙認する事も多かった。ただ、エブラーナは他国との国交も薄いし、魔法の歴史は浅い。
小規模の内乱ならば自国で解決できる事。恐らくミシディアは静観するだろう。

―――とりあえず、良かった。

かつての仲間の後ろ盾があるだけでも、気持ちが違う。今エブラーナに来てしまったのも何かの縁、エッジの力にならないと。

―――後ろ盾、か。見守ってくれてる人がいるって…いいな…

リディアはエッジのベッドにもぐりこみ、目を閉じた。耳を澄ました所で、下の話が聞こえる筈はなかった。
 

 
[廃位の王 5] へ


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tommy
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自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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