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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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エッジはリディアをソファに座らせると、真顔で向き直る。
「今、お前らを襲った連中を探して、兵が動いている。お前からも聞かせてくれ。何が起きたんだ?」
「まず…アイネさんカレンさんとお散歩に出たの。そしたら、子供達と…オルフェさんに会って…」

馬小屋に入った途端襲われた事。魔道師を連れていた事、
その男はジェラルダインと名乗った事―――

「ああ。馬小屋の馬達は血をかなり抜かれていた。ハヤテだけ逃げ出したみてーだな。馬屋係は、別の馬達を外で世話してて無事だったよ。一番はずれの宝物庫の方も来たみたいで…兵達が何人かやられた。死人は出なかったし、何も取られなかったが…」
「ひどい…盗賊!?そんな風に見えなかった…あ、でも、刀とか言ってたし…」
何か、他に言っていた事があっただろうか。
刀を頂きそこねたがと言っていた事、エッジを憎んでいる風だった事が印象にある。だが、リディアのその言葉に、エッジは身を乗り出した。

「刀…?それ、本当か!?」
「うん。何だっけ…刀を頂きそこね…だったかな。何か盗みに来たのかな…」

そうか、とだけ返し、再び腰掛けるエッジ。
「…やっぱり、泥棒?」
「いや…まぁ、ウチも一応王家だ。宝くらいはあるしな。」

王族へのたちの悪いいたずら、にしては度が過ぎる。半年後には大国バロンで祝典が開かれる。世界常識からいえば、こう言った時に
戦を仕掛けるのは考えられない事だ。その後の関係を考えれば、例え勝利したとしても世界中からの非難にさらされる事になる。エブラーナは今の所、どの国とも軍事的な同盟は結んでないが世界常識から無縁の国ではない。
そして、どうやら魔導師が、この動きに関わっている事も、戦いで魔力を使う時は、自衛のみに徹すると言う魔導師社会の掟を破っている。

―――宝物を目の前にして、何も取らずに?
―――宝が目的なら、何で馬小屋にも…

あの男の敵意。物取り、の程度ではない。自分達を殺そうとしたのは、王家の人間への見せしめになると踏んだ為だろう。そうでなければ、わざわざ姿を現す理由が無かった。

「エッジ、反対勢力がある、って言ったよね。潰せない人って、同じ名前の…」
「リディア。」
頬に置かれた手に、リディアは言葉を止める。
「バロンに帰れよ。こんな危険な目にあわせて、俺…」
「エッジ…」

それはそうだけど、とリディアは一瞬うつむいて、言葉を搾り出したのだった。
「今は、帰らない方が良いと思うの。」
「…何でだよ?」
「私が城のだいぶ前に降り立った事…相手は、どんな力があるか判らない。すっかり油断していたとは言え…今のエブラーナから、私一人の魔力でワープするのは危険だと思う。…あの人たち、まだ城の周りにいるかもしれないでしょ?だとすれば、何処が安全か判らない…」

そして、あの男は自分の顔を覚え、強い魔力を持つ国王の味方と認識しただろう。とすれば、次に会った時には無事で済む訳がない。
魔力での移動ならば安全かもしれないが、何の補強装置もなしにひと飛びにバロンに帰るのは不可能だろう。そして、確実性に難がある。同じく魔力を使っている場所に、引き寄せられないとは限らないのだ。
そこがもし、先ほどの男の場所だったなら。

「…そうか…確かに、相手の力が何処まで及んでいるのかまだ判らない。無事に着く保障がないな。判り次第海路でも陸路でも…一番安全な手段でお前を帰してやるから。」
ふぅ、と息をつくと、エッジは片手でテーブルに置かれたサンドイッチを二つつかみ、一つはほおばり、もう一つはリディアの口元に差しだした。
「しばらく外出は控えてくれるか。こっちの…王族用のフロアは自由に使っていい。兵が増えるから、ちょっと窮屈になるかもしれねーけど。」
「うん。私の方こそ、ごめんなさいね。何だか悪い時に来ちゃったね。」

ばーか、と小さく呟くと、エッジはリディアを再び抱き寄せる。
「な、何すんのよ!?怖がってなんかないってば!」
冷静さを取り戻したのか、今度は気恥ずかしさが先に立ち、慌てて身体を引きはがず。そう言えば、さっき家老にこんな姿を見られていた。どう思われただろうか。
「そろそろ行かなきゃな。情報収集の成果があるかもしれない。何かわかったら、久々に軍の会議だな。動かしたくないけど。」
「うん…気をつけて…」
心配そうなリディアに、エッジは微笑みかける。腕に微かに力が入った。
「なぁ。」
にんまり、と上がる口元。
「何?」
「行ってきますのちゅーとか…」
「…バカじゃないの?」

「っと、誰か来るな…」
エッジ様、と呼ぶ声が廊下に響いた。足音が大きくなる。
「何だろ…急いでるみたい。」
相当の早足を響かせ、兵士はエッジの部屋に向かっていた。
「ああ。さっきの事、何か判ったのかもしれないな。」

「エッジ様!!」
慌てふためいた様子で忍服姿の近衛兵達が駆けつけ、開けたままの扉の前に跪く。冷静沈着、とされる忍びらしからぬ、息の上がった姿にエッジは一瞬、そこまでの何がと首をかしげる。
「お、おい…落ち着けよ…」
「エッジ様!!一大事にございます!!」
だが、告げられた内容は、驚くべきものだった。

「大陸西部山麓、エノールの街に武装勢力らしき集団が陣営を構えたとたった今報告が!!魔導師を擁する小規模勢力に、町が占拠されました!!」

―――武装占拠…!?

「な…何だって!?早急に、各部隊の隊長を呼べ!!」
「エッジ…!」
「リディア、ちょっと部屋にいてくれ。」
エッジは、リディアに頷くと、駆け足で部屋を出て行く。

魔道師を含んだ武力の一団が、近隣の町に陣を敷いた、と言う事は―――
内乱が発生したのだ。

 

―――エノールは目と鼻の先じゃないか!!何の情報もなかったのか!?
―――人数が判らない!?正確な数は!?規模も不明なのか!?
―――相手の要求は何だ!?首謀者は!?

城内の動きが、にわかに慌しくなる。
エノールとは西部にある街道沿いの港町。西にバブイルの塔と山脈があり、平野部の少ないエブラーナでは、この都市はエブラーナ城の西口の様な扱いとなっており、人口も城下の町とさほど変わらない。エブラーナからは早馬であれば1日とかからない場所だ。

これだけ近いのにこうなるまでに何の情報も無かった、と言う事が軍関係者を驚かせた。城下の人口が少ないエブラーナにしてみれば、小さな一群でも一つの勢力、それに街道沿い、港町が押えられたという事は、陸路も海路も危険になったと言う事だ。

町とはいえ、全く何の軍備も無い訳ではない。ただ、忍術の精鋭はルビガンテとの戦で壊滅状態になり、まだ日の浅い精鋭部隊は城下に集中している。反乱勢力の中に魔導師が数人でもいれば、十分制圧は可能だ。

―――まさか…さっきのあの人が?

街を占拠したと言う魔道師を有する団体と、全く関係がないとは思えない。先ほどの男は、自分達に呪縛の魔法を使った。確かエッジも『影縛り』と言う技を持っていたが、明らかに別のものだ。しかしエブラーナが魔法の研究を始めたのは先代の頃で、名前を聞くようになったのはそれこそ少し前の事。エブラーナに国に楯突けるような魔導師が居るのだろうか。

「リディア様…」
遅い昼食を用意したカレンとアイネが、扉の向こうに佇んでいた。
「…ありがとう…こんな時まで…大丈夫だった?」
「これでも結構、鍛えてますから。」
包帯を巻いた二人が笑顔で答える。
「ともかくも、お召し上がり下さい。大丈夫ですわ。エッジ様は、先の戦いをも乗り越えられた方。少数勢力など制圧は容易でしょう。」
そうだよね、もリディアはようやく笑顔を返した。エッジの強さは、よく判っている。けど、エブラーナ城周辺の少ない人口の中で反旗を翻すには、そこらから集めた人間だけではなく、海賊などの国を持たない無法者がいるのは当然だ。
多数の魔導師。国際的な常識の無視、何を考えているのだろう。

―――翡翠の姫様!!
 
先ほど聞いた子供の声が耳に浮かぶ。

―――胸騒ぎがする…

その日、夜までエッジが帰る事は無かった。


 

「…リディア?」
エッジが夜半に自室に帰った時、ベッドにその姿は無かった。
「リディア!!」
エッジは一瞬の寒気に襲われたが、かすかな寝返りの音に自分のベッドを振り返る。リディアの姿はそこにあった。

―――驚かせんなよ…頼むから…

夜までかかった会議。明日より、将校率いる隊、忍術精鋭、国軍付魔導師がエノール制圧に向かう。エッジは城内に残り、エブラーナ城近辺の警護を指揮。伝令を出し、周辺集落に自衛を喚起。城下付近に相手の姿が見えない以上、相手を監視し情報収集に徹するしかない。いくら小国とはいえ、国中から集めれば兵は集まるが、敵の数は少なく、今すぐに武力衝突の危険もないとの事だった。
ならば、まずはエブラーナ城下内の兵士で行動した方が早いだろう。

―――頼むから、早く終わってくれ…民を苦しめるのはもうごめんだ

ルビガンテとの戦いで、力及ばす城を去り、両親を亡くした。エッジの中には別の不安がいやおうにも湧き上がる。相手が何処までの事を考えているのか判らない。街の勢力同士の小競り合いが過ぎたのか、国家に対して何か欲求があるのか。

もし、相手が忍術に匹敵する程の魔法の使い手を揃えていれば、軍が手の内を知らない分苦戦は必至だ。魔法に対する実戦経験は、エッジがこの国では一番だろう。それ程の不利なフィールドに、相手が引き込もうとしているのはありありと判る。

―――にしても俺…情けねぇなぁ…

情けないが、リディアに関しては身勝手になってしまう。巻き込みたくないと願う一方で、側にいて欲しいと言う思いが勝ってしまった。

―――何とかバロンから飛空挺、呼んでやるから

その一言が言えなかった。方法は幾らでもあったのに。セシルが無理やり用事を作ってくれたのは判っている。今リディアを帰してしまえば、おそらく再びエブラーナを訪れる事はないだろう。リディアはそんな思惑は露知らず、静かに寝息を立てている。

「…側に、いてくれねぇか…こう見えて、俺も結構度胸なくてさ…いいかな…」
「いいよ…」

寝ている筈のリディアの言葉に、エッジは思わず立ち上がった。
「…う~ん…あれ、エッジ…お帰り…何か言った?」
明らかな寝ぼけ眼。
「ごめんね…待ってたら…うとうとしちゃって。」
どうやら色々気になる事もあったらしく、早寝のリディアには珍しくエッジの帰りを待っていた様だった。後はベッドに腰掛けたが最後、と言うやつだろう。
「いいよ。そのまま寝てな。俺もすぐ寝るからさ。おやすみ。」

軽くリディアの唇を引っ張る。
「ん~~… くすぐったい…」

―――味気ねぇ…怒りもしねぇよ…

隣にもぐりこむと、まだ夜は寒い季節だからか、もぞもぞと身体を寄せてくるリディア。抱き寄せると、不思議な程すっぽりと胸に収まるその身体。
 「…おやすみ…な…」
額に軽く口付けた。
「エッジ…おやすみ…」


―――あ、れれ?

目を覚まし、怒り出すとばかり思っていたが、リディアは既に寝息を立てはじめている。

―――マジかよ…
―――いや、それはちょっと…

広い筈のベッドが、これほど小さいと思った事は無い。ベッドの端まで行っても、リディアの寝息から逃げられないのだ。

―――寝るヤツがいるか!!バカ!!

今の自分をリディアが見たら。毛布に包まったイモムシ、と笑われるだろう。当たり前だ。若い女と同じ床についているのに、そんな気が起こらない訳じゃない。

―――何考えてんだ、バカ!!
―――でも…難しい事はない…よな…

男の寝床に潜り込んできた娘がどんな目に遭おうと、誰が自分を責めるだろう。そっと、碧の髪に手を伸ばす。髪を引かれたリディアに、起きる気配は無かった。

幻界の生活は判らないが、自分も地上で恵まれた方の暮らしをさせてやれるだろう。少なくとも、自分の身近な忠臣達はリディアの訪問を心から歓迎している。昔の様に周り全てが敵、と言う様な王宮ではない。バロンとも友好関係を築いた。呆れる位慕っているセシルや、仲の良いローザとも会おうと思えばいつでも会える。

ここで一時憎まれる事になっても。リディアを今よりも幸せにする自信はある。
リディアの性格。セシルを兄の様に慕っている事。そのセシルに頼まれたお使いで、口に出来ない何かがあったとしたら。おそらくリディアは、信頼を裏切ったと筋違いに自分を責め、後ろめたさにセシルの顔を見る事も出来ないだろう。

手に入れてしまいさえすれば。リディアの性格なら、バロンには戻らない。そして、ここを離れる事も出来ないだろう。セシル、セシルがと口癖の様に言い続けてきた事に、何も感じてない訳じゃない。

―――手に入れてしまえば、バロンには…

「くしゅん」
リディアの肩が、一瞬小刻みに震えた。
「へっ!?リディア、寒いか!?」
不意のくしゃみと、凍りつく様な心の声に、 エッジは我に返る。

「…悪ぃ。空恐ろしい事、俺考えてた。寒くもなるよな…」
リディアの身体をそっと動かすと、柔らかな枕に抱きつかせ、ベッドを出ると、カーテンの中、リディアの為に用意されたベッドに潜り込んだ。

―――ま、一大事の前だから、な。
そんな言い訳を何度も繰り返し、エッジは眠りについた。

 

翌朝、服を取りにカーテンの中に入ったリディアは、出かけたと思っていたエッジが何故か自分のベッドに寝ている事に気がつき、驚く。
「あれ?エッジ、横に居たんじゃなかったの?何で私の方で寝てるの?」
「…」

ふてくされた様に身をかがめて、背中を向けているエッジ。
「ごめん、もしかして、いびきかいてたかな私。」
「…かいてねぇよ。」
「じゃあ、寝言言ってた?」
「言ってねぇ!!その年で男と同じ布団で寝るヤツがいるか!!バカ!!」
「?あ、セシルと寝てた時の事?それは子供の頃で…」

―――ぺしっ!!!

「痛っ!!!何するのよ!!!」
「うるせ―――!!!俺の、俺の…俺のバカぁぁぁ!!!」
「!?!?!?何であんたがバカで私を叩くのよ!?」

訳わかんない、と憤慨しながら部屋を出るリディア。エッジは前傾姿勢のまま、しばらく動こうとはしなかった。


 続く


 

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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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