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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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 11
 

リディアが帰るという意思を伝えると、数日のうちに幻界からの反応があった。
よほどに心配をしていたのだろう、特別に幻界が、向こうから時空を開きリディアをワープさせると言うことで、エブラーナ城中庭でしばしのお別れとなった。

真夜中にも関わらず、エッジだけでなく忠臣3人や家老、近衛兵隊長ガーウィンと妻のゴモラまでもが見送りに出ていた。

「じゃあリディア…最後にこれ、渡しとくわ。」
「ありがとう、って、エッジ、これ以上持てないよ…」
大きな風呂敷包みを背中に背負い、両手にも袋を抱えて、懐にはエッジにねじ入れられた書簡。全身に皆の餞別を持たされたリディアの姿。この上さらにエッジは懐から包みを取り出し、手に握らせる。

「おふくろの遺品。良かったら、使って。」
取り出したそれは、エブラーナの紋章が刻まれたシャンパンゴールドの首飾りだった。全体に細かな模様が彫りこまれ、縁に鈍い光を放つ虹色の七宝と、中央に赤い瑪瑙がはめ込まれていた。
繊細な美しさに、リディアは目を見張る。
「…こんなすごい物…受け取れないよ。」
「いや…その、別にそんな重い意味はねぇ。だってほら、しまい込んで倉庫にあったやつだし。城を守ってくれた礼だよ。まぁ、これからの事は向こうのご両親と話し合って…納得する様話し合ってくれ。こればっかりは、俺がどうこう言える問題じゃない。俺は、待ってるからさ。」
「若様…」
らしからぬエッジの言葉に、家老も神妙な表情。
「いいだろじい?王妃として振舞って貰った以上、手ぶらのまんま放り出す訳にもいかねーしさ。」

そしてオルフェがつと、前に進み出た。手には艶やかな皮の紐に、紫の水晶玉とビーズを通したブレスレットが握られている。
「あと、これはエルと私からです。」
「エルから!?…ありがとう。もう持てないから、手首に巻いてくれないかな?」
「何それ。却下。何だかガキの作ったのにしちゃモノがいい。」
「いえ、こう言った石類は、魔力にも微妙に影響を与えてしまうものですから、私が色々アドバイスをして一緒に…」
なにぃ、そんなもんをリディアの手に、とエッジが表情を変えかかるも。
「もうエッジ!いいじゃない!」

「わぁ…色が綺麗ね。」
「恐れ入ります。そう、伝えておきますね。どうでしょう?影響はないはずですが。」
ビーズを結んだ目はぎこちなさの残る子供の物だが、子供が選んだには地味なその深い色みと、丁寧に結ばれた大きな結び目は、大人の手によるものだった。
「大丈夫。ありがとね。エルによろしくね。」
言葉を返さずに、オルフェは静かに下がった。

月が真上に昇った時、リディアの身体に光がまとわりつき始めた。幻界への扉が開いたのだ。
「…もう行かなきゃ。じゃあ、皆…色々、ありがとうね!」
「最後みたいな言い方するな!!気をつけろよ!!」
「うん、エッジもね!!またね!!」
「リディア様、お気をつけてえ!!私達は何時でも待ってますわ!!」

一瞬、まばゆい光に包まれ、その場の誰もが目を閉じた。再び目を開けた時にはすでにリディアの姿はなく、真上に昇った月が煌々と城を照らし出していた―――


『  ―――幻界王・女王 陛下

リヴァイア様、アスラ様におかれましては、ご機嫌麗しく存します。
本来ならばお目通り願いまして礼を尽くすべきですが、書簡での非礼を
お許し下さい。

まずは先日、我が国で起きた内乱により、両殿下にとっては実の娘にも
等しいリディアを巻き込んでしまった事、深くお詫び申し上げます。
これはひとえに私の未熟さが引き起こした国の乱れであり、以後この様な
事の起こらぬ様、国内の動きに目を配ると共に、内外に知恵を求めて次期
国王として邁進する所存でございます。
さて、不躾ではございますが、両殿下にお願いがございます。
私の元、エブラーナにリディアを迎える事を、お許し頂けないでしょうか?
失態を犯しながら、この様な事を申し上げる無礼重々承知しております。

しかし私自身、リディアと共に旅をしている時から、共に歩んで行きたいと
思う気持ちが高まるばかりで、彼女が幻界に帰った後もそんな未来を夢に見て
おりました。
許せる事でないならばまずはどうか、幻界にてお二方にお目通りする機会を
お与え下さい。私は、生涯かけてリディアをただ一人の妻とし守って行く事を
誓います。

何卒、私の願いが真摯である事をお汲み取り下さい。         

                ――― エドワード・ジェラルダイン 』


 
「リディアを…妻に…という事ね…」

エッジの書簡は、幻界の奥に届けられた。
表情を変えずに、連ねられた言葉に目を通す美しい女性。傍らに居たお付きの侍従―――と、言っても人の姿をしてはいないのだが――― は、かすかな女性の呟きからその内容を察し、憤る。
「リディアを巻き込んでおいて、この上何と無礼な物言いだ。この様な者は相手にする必要ありません!!」
 
だが女性は書簡から目を離さず、口を慎みなさい、と静かに侍従をたしなめたのだった。
「卑しくも、この方は一国の次期国王。非礼な物言いは何一つありませんよ。…それはそうと、リディアの…いえ、あの子の周りの様子はどうなのですか?」
「は、はい、それが…やはり、危惧されていた通り…いえ、更に深刻です。エリアの一つに結界が張られています。人間の身体を持つ者は通れないものが。」
「なるほど…再び人間と関わるのを、よしとしない者達ですね?」

寄りによって、ならず者相手の内乱という人間の我欲争いに巻き込まれ、あわや命を落とす所だったリディアは、地上に戻ることをよしとしない一部の者達によって、幻界の一角は閉じ込められる形になっていたのだ。
そう…と僅かに息をつき、書簡を再びしまい立ち上がるのは。海龍の王と共に、幻界を治める統治者であり、リディアの母親代わりとなった女王・アスラ。

「女王様、如何なさいましょう、周りの意思は強固ですが、ご命令とあらば、如何ようにでも。」
「―――なりません。」
しかし、と侍従が口ごもる。バロン国王の戴冠、結婚式までにリディアを地上に戻さなければいけない。それは、女王の望みでもあるだろう。

だが、と女王は立ち上がり、滅多に使わない外出用のベールを持つ様に命じたのだった。
「アスラ様…どちらへ?」

「すぐに戻ります―――留守を、頼みますよ。」






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HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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