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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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若様の出迎えの準備をお願いいたします。兵士がリディア達に告げたのは少し前の事。

「もっと膝を曲げて腰を落として…そうです。」
「えっと、それで一礼だよね?」
「そこは自然な礼で大丈夫ですわ。」

が、しかし。リディアは、結局訳も判らぬまま『エッジの刀を受け取る練習』にひたすら励んでいた。簡単な事だから、と説明を受けたものの。まずは練習と言う事で、事情はよく判らない。

「えっと…まずは“お帰りなさいませ、ご主人様!”」
「若様、かエッジ様で大丈夫ですよ。」
くるくるっと周り、流れを確認する。確かに動きやする事自体は短く簡単、すぐにでも出来るものだった。

―――これが、エッジの手伝い…?

手伝い、と言うからには書類整理とお使いに明け暮れると思っていたが、どうにも様子が違う。
何の助けになるのかはよく判らないものの、リディア様でなければ勤まらない、と女官達に強く言われ、とりあえずはその役目を受ける事にした。
「大丈夫ですよ。右左間違えたとか、意外と判らないものですわ。ホホホホホ…」
ころころと笑うカレン。どうも、機嫌が良いとこの笑い方になるらしい。
エッジを出迎えて刀を受け取ればいいらしいが、兵士の前に出るとは思わなかった。どうやら、裏方ではなく、表に出て形式的な王族としての仕事に関わる、と言う事の様だ。本当にそんな事して大丈夫なのだろうか、と今更緊張感が沸き起こる。

―――自分、とんでもない事受けちゃったのも…

後悔しても、もう遅い。
そう言えば、ローザとセシルも戴冠が決まってから、色々な上位儀礼を身につけたと言ってたっけ…と思い出す。ローザは事も無げに言っていたが、セシルは苦笑いしきり。リディアも礼一つで実感し、改めて二人の努力に頭が下がる思いだった。
「でもこれって…何で私がやるの?いいの?王家のお手伝い、って言われたけど…」
「本来ならば…いえいえ、未来こそ本来。エッジ様がやると言えばやるのです。」
若干意味不明なカレンの言葉に、アイネは頷く。
「そうです。まぁ何故かって…お教えしませんわ。終わるまでは。」
「え~!?ずるいよ…」

どうも、三人の様子がおかしい。しかし疑問を感じるまでも無く、侍従三人は自分達も軽く身づくろいを済ませると、リディアの髪を手早く結い上げた。
「ええ…こ、こんな事までするの…?」
アイネが碧の髪のバランスを見ていると、ゴリゴリと黒髪を結ぶカレンが声をかける。
「夜会巻きはちょっとね…お若いんだし、半頭垂らし結いでいいんじゃない?」
「お姉さま…ハーフアップ、って方が言いやすくないのかしら。う~~ん、サイドの…下で結ぶのも可愛いけど…確かに、その方がいいわね。」
女官達は話しながらも、手早く身づくろいを整える。珍しくカレンも薄く化粧をしていた。

「まぁまぁ、そう固くならずに。身づくろい、程度ですから。」
カレンにボフッ、と豪快に粉を叩かれ、リディアは思わず咳き込む。
「カレン!それじゃ濃くなるわよ。もっと肌に近い色の…あら…鼻にまで入ってるわ。」
アイネがそっと顔の粉をふき取るも。
「私化粧なんてした事ないもの。あんた化粧上手いわねぇ。この顔、私じゃないみたい。」
「それでよく粉、手にしたわね?化粧くらい自分でなさいな。」
口の中に残る奇妙な感触。

「…何か…小麦粉みたいな白粉だね、これ…」
黒髪女官はリディアの顔を拭いた布をこすると、途端に背を向けて小声になったのだった。
「あ、この袋小麦粉だったわ!!昨日の余り持って帰ろうとして無くなってたあれよ!!」
「…あなた…何て事したのよ!!」
「リディア様、テンプラだわ…ハァッオ゛!!」
カレンが吹っ飛んだのは、恐らくアイネの掌打によるものだろう。

今度はアイネの手で、色味を抑えた薄い化粧が、手早くリディアに施されて行く。
「お胸元は品良く閉め気味に…カワユスだわ!!!ホホホホホホ!!!」
笑うカレンの頭には、大きなコブが出来ている。
「そうね。エッジ様はボ~ンとかより、清楚な感じを好まれるのよね…実は。」
「えーっ、そうなの?“俺、グラマー美人じゃなきゃヤダ~”って言ってたよ…?」
「それはそれ。騒ぐ時とそうでない時は別ですよ。リディア様。」
「え~っ…そうかなぁ…」
 
女性三人は、めいめい好き勝手な事を言ってきゃあきゃあ騒ぎ出すも、置いてけぼりの魔道師1人。
「皆さん、一応お迎えの前なんですから…」
手持ち無沙汰に、伸びてしまった後ろ髪の結び目を整えているオルフェ。
「ねぇオルフェ、あんたならどっちがいい!?グラマーと…」
「だからカレン!人の話を聞いてください!!幾ら人の良い私でも怒りますよ!!」
こんな調子で、エッジの『我がまま』が仕事の邪魔とあらば、女官や侍従も『丁寧に』物言いをつける。馴染んでしまえばこう言う雰囲気の方がすごしやすいかもしれない。

―――でももし…私がここにずっといる、なんて事になったら、皆どう思うんだろう?

リディアが袖を通したエブラーナ風のドレスは、大陸の物に比べデザインこそシンプルではあるものの、袖口や合わせる襟に細かい刺繍が施され、軽く暖かい。仕立ての良い物だ。この服を自分が着て皆の前に出てよいのだろうか?
「リディア様、緊張されてます?」
気がつけばアイネがそっと、背に手を回している。リディアは黙って、首を振り微笑んだ。


再び、兵士がやって来た。
「失礼いたします。エッジ様、間もなくご帰還されるとの事でございます。」
「は、はい…」
一体、何が始まると言うのだろう。
「いよいよですね、リディア様!!我々もご一緒しますから、ご安心下さいね。大丈夫、5分くらいですから。」
「う、うん!!」
リディアは深呼吸一つして、背筋を伸ばす。
 
―――よくは判らないけど、やるって決めたんだから…よし。
 
四人はエッジを出迎える為に、部屋を後にした。兵士達の最敬礼に会釈で礼を示しながら、リディアは顔を上げ階下へ向かう。略式の服とは言え、慣れない長い裾に手間取ったが、女官達が手を貸してくれた。
角を一つ曲がると言う所で、カレンは覗き穴を示し、迎えの間の様子をリディアに見せる。
「ん~、30人ってとこね。何時もより多いわね…こりゃ。いつもせいぜい10人位だし。」
「各隊の隊長さんが来たのでしょう?やっぱり、エッジ様の言わんとしている事が判っているからでしょうね。」
「…?」

天井の高い、大きな玄関先のフロア。石の重ねられた壁に色のない彫刻が施された玄関間には、左右に刀と杖を構えたエブラーナの守護神の漆黒の塗りの像が祭られ、後ろの壁には数々の武器が飾られていた。その前に忍姿の兵士達が並び、城主の帰りを待っている。兵の数こそ部屋の広さには少なかったが、張り詰めた空気が漂っていた。
 
―――エッジの言わんとしている事…?

聞いた限りでは、城主の刀をわざわざ出迎えて受け取る、と言う事で、城内に注意を喚起する効果がある、と言っていた。
オルフェが後ろからそっと、耳打ちする。
「リディア様。ご普段の様に、お力を入れずに参りましょう。お出迎えだけですから。」
「…ありがとう、ね。」
四人は、手を取り合って、気持ちを落ち着かせたのだった。
 
迎えの玄関に入ると、兵士達がリディアの方に向き直る。一斉に出された礼に戸惑いつつも、少しだけ頭を下げた。顔を上げたリディアを見た兵士から、声こそ立たなかったが、ため息が漏れたのだった。
 
―――翡翠の姫だ…
―――今日はまた御美しいな…
 
はっきりと目は向けないものの皆、リディアの姿に見入っている。リディアは女官2人に先導され、後ろにオルフェを従え、兵の控える中を前に進んだ。

―――これで大丈夫かな…

心臓が早鐘を打っている。兵士の間で感じる緊張感は痛い程ではあったが、顔だけは正面を向き、開かれた扉を見つめるリディア。

―――ここからエッジが帰ってくる。そうしたら…

中ほどまで来た時に、兵士が一斉に扉の方を向き、最敬礼の構えを取った。ぴくっ、と驚きに一瞬身体を震わせるも、静かに、大きく息をつく。
「エッジ様、到着でございます。」
アイネが脇から囁くと、三人は跪き、リディアはわずかに腰を落として顔を伏せた。
 
―――エッジ…
 
聞きなれた、かすかな足音で判る。兵士達が中央に向き直ったのと同時に、リディアは顔を上げた。
 
―――!!
 
よう、と小声が聞こえた気がしたが、目が合った瞬間、反射的に顔を伏せた。
兵の最敬礼を受けたエッジの姿は、戦が始まる前の険しい表情をしている。自分が目を伏せたのは、形式でなく一瞬の畏敬の念と判る程。この人は、王子だ。そう疑いもなく感じられる品格。
 
―――こんな人と、いつも一緒に居たんだ…
 
それでもエッジは、リディアにだけ判る程度に、微かに案じる様な表情を浮かべていた。
 
お帰りなさいませ、と慣れない言葉を振り絞ると、エッジは小さく答え、刀を差し出す。教わった通り両手で押し頂き、互いに礼をする。
エッジは手を放す直前までゆっくりと力を抜いて行ったが、手渡された細身の刀の重さはずしり、と細い腕に響いた。エッジが片手で振り回していた刀。細身だが、自分はとても片手では扱えない。
 
―――結構、重いんだ…
 
そのままエッジと近衛兵は奥へと進み、リディア一行も付き従う。背中に兵士達の視線を感じながら、部屋を後にした。

それは、わずか数分の間の出来事。
 
―――終わった…のかな?

「ありがと。」
息をついたリディアの腰をエッジは無言で引き寄せ、握り締めていた刀を再び受け取り、その腰に差したのだった。
 
それから一同はしばらく無言で進んでいたが、回廊に入るとエッジは近衛兵に振り返った。

「おし、お前らここまででいいよ。後はこいつらと部屋に戻るわ。」
「はっ。」
 
一瞬、若い近衛兵がカレンと目を合わせたが、カレンは鋭い目で一瞥するとすぐに目を反らす。エッジは口笛を吹き、下がりかけた兵士に声をかける。
「トマス、お前、部屋まで来る?今日はコイツも少しめかし込ませてみたけど。全然違うよなぁ。」
「い、いえ!!失礼いたします!!」
慌てふためいて下がる若い兵。忍びの姿で口を覆っていたが眼元と声からすると、馬小屋に駆けつけてくれた若い近衛兵だ。
「フン…近衛兵ともあろう者が動揺して。失笑者とはこの事。」
知り合いのはずのカレンの言葉には、何故か棘があった。
 
「にしても…緊張したぜ!お、今日はいいカッコしてんじゃん!!」
兵が下がればまたいつもの調子に元通りし、エッジはリディアの肩を抱き寄せて、笑いながら頬を撫でる。
「ちょっと!何やってんのよ!!私も緊張したんだからね!!」
「ああ。手数かけたなお前ら。礼言うよ。今日はすぐ出るから、休んでくれ。」
だが、女官二人は、にやりと越後屋笑いを浮かべ、エッジににじり寄り何やら小声で囁く。

「ホホホ…エッジ様もワルですわねぇ…」
「リディア様に何も言ってないのでしょう?」
「…そう言うなよ…いや、うるせーヤツらは逃亡しちまったし、まぁ事後承諾…まぁそこん所、融通利かせられるお前達には感謝してるよ…」
エッジと女官達との密談を、リディアは目を瞬かせながら聞いているが、やはり内容は聞こえない。
「…エッジ様も…あなた方も…全く…」
オルフェが額を押さえてため息をついた理由など、知る由も無かった。
 
自室に入ると、エッジは三人に礼を言って下がらせた。
「さ、いっちょ行ってくるか!!」
だがその前に、とごろん、とそのままソファに寝転がり、四肢を伸ばしたのだった。
「午後、兵士に出陣の令を出す。明日出陣するよ。さっさとカタ付けたい。」
「…やっぱり、始まるんだ…」
大丈夫だって、と微笑むエッジだが、やはり緊張感はある。
「ついでに…まぁさっきみたいので、御見送りのナンちゃらもあるんだけど、夫婦で近衛兵の前だけだ。大勢の兵士の前で…ってんじゃないから。」
「夫婦?あの…エッジ、私何も聞いてないんだけど…その、今回のコレは一体…」
刀を受け取ってお帰りなさい、を言うだけの事だったが、にわか仕立ての自分が前に立って何が出来たというのか。

すると、とん、とエッジが立ち上がり、リディアの前で頭を下げた。
「いやぁ、リディアちゃん。王妃様の代理役、ありがとうございました!!」
「へ?何言って…」
「王様の刀を受け取れるのは、王妃様しかいません。これ当たり前。ま、俺まだ王子だけどさ。」
「…今、王妃って言った…?」
 
にやにやとエッジの顔が歪む。
「だから、お前にやって貰ったのは、王妃の代理役。本当の事言うとさ、ウチの国、何かキナ臭い事になりそーだな…ってなると、文字通り『奥さんが出てくる』と言う訳です。ははは。」
「は、はい!?!?!?」

めまいを感じ、何か叫ぼうとするものの、リディアの口はぱくぱくと動くだけだった。今まで荷物一つ自分に持たせなかったエッジが、刀を持ってくれと言うのは意外だった。三人の笑顔はそう言う事だったのか。それを兵士の前でやったと言う事は。出迎え云々兼ねて、リディアがそれを皆の前でするのが目的、暗にお披露目、という事だ。
 
「ちょっとぉ!どうするのよ!!私どう見てもあんたのお妃様じゃないの!?」
 
―――伝統、しきたり、うるさい貴族。反対、許さん…
 
ありがちな色々な言葉が、リディアの頭に一気にスパークした。
「いや、こーゆー事に反対する大貴族は既に国外逃亡。欠席裁判。じいは何か後ろめたいのか、程ほどの反対。で、決定。」
候補候補、と笑うエッジ。出陣と聞いてこみ上げた不安が一気に吹っ飛んだ。
「ちょっと!!そんな事でいいの!?」
「大丈夫だって。お前が絶対、そうならなきゃいけないって事じゃないよ。俺も昔破談とかあったし、ま、俺のやる事、またかって皆思う位だろ。」
「エッジ…そうじゃなくて…!!」
 
―――何言ってるのよ!!!
―――こんな事して、平気なの!?あんた王子様なんでしょ!?
 
言いかけて、飲み込んだ。エッジが明らかに心にも無い事を言っているのが判る。
 
―――破談、か…嫌な事思い出させちゃったかな。
 
この国に来て、まだ数日。こう色々あると、もう何年も居る様な気がする。してしまった事は仕方ない。多分、エッジなりに対策がある…と願うしかない。そう思いながら、隣に腰掛ける。
 
―――…あればいいけどなぁ…もう
 

「リーディアちゃん。起きてますか?」

ぱたぱたと、エッジが目の前で手を振っているのも目に入っていない様子のリディア。
「あれ?お前まだ緊張してんの?それとも何か心配事?」
かぽっ、とその手が頭を掴むが、リディアの表情は晴れずにいた。

「だって…戦いに行くんでしょ?心配しない訳ないじゃない…」
 
判らない事は山積みだ。そもそも、何故、エブラーナ城に近い街をこうもやすやすと占拠出来たのか。本当に少人数で蜂起したのだろうか。城の周りにあった無数の移動魔法のポイントは、混乱させたり、盗みを働く為に潜入しただけなのか。
 
そして、王家の名を名乗った男―――要求は少数民族の独立。
廃位の王、と言う言葉の意味も、はっきりとは理解していない。女官達が口にする位だから重要機密では無いだろうが、全ての事を、何から誰に尋ねればいいのか。
 
「少数民族の独立要求…って、そんなに厳しい政治だったの?」
「昔は、な。侵略で無理やり統合した部分も多い。けど今は実質、個々の政治には口出ししていないし、王都から遠ければ遠いほどいわゆる上納金みたいなもんだって、名目上少し取ってる様なもんだ。ただ、エブラーナは小国だ。幾ら関わりが薄いからって一つの国としちまうと、他の大国にそこを落とされたら、いい足がかりにされちまう。それが理由だよ。」
確かに要求はあるだろうが、圧政とは言い難い今、武力によって強引な独立をした所であまり得られるものはない。その一つでは蜂起の理由には乏しいのは間違いないだろう。

「城の外で隊を組み立てて、明日の日の出と共に出発だ。王の間で出陣の令を出したらすぐ行く。俺、少しまともな服、着てくるわ。」

―――本当に、出陣してしまうんだ…
 
「エッジ…」
「ぜってー無事に戻るからさ、そしたらご褒美でしてくれ、その、お前から。」
「…?」
「えっと、お子様風にはチュー。いや、いってきますのちゅーでも…むふっ」
「バカッ!!!」
一体、今日は何回この言葉を口にするのだろう。
だけど、と思い立ち、リディアは立ち上がると背後からエッジに近づき、腰に手を回す。
「おっ、何だ何だ!?相撲か!?」
「い、行ってらっしゃい…の…」
鼻を思い切り背中に押し付けた。
「し、してあげない!!帰ってこないと、してあげないからね!!」
それ位なら、と思って背中をつかまえたものの、それ以上動けない。折角だからそのお願いを聞いてあげたいとは思いつつ、顔を上げる事は出来なかった。
「何だよ~?ここまでしておいて…」
「わ、判らないから。そんなのした事無いから、判らないのっ!!」
「じゃ帰って来たら、ゆーっくり教えます。」

にやにやと笑うエッジが何処までの事を考えているのか、リディアの判断は甘かった。
「いいって!!ち、ちゅー位…そ、そうだ、女官さんとかに教えて貰うよっ!!」
「…いや、それはヤメテ…あ~、何かしおしお~ってなっちまった…アイツらが思わせる物は男と何一つ変わらねぇ…くそぅ…」
首を振りながら、エッジは部屋を後にしたのだった。
「…しおしお?ヘンなの…」

その言葉通り、午後エッジは王の間で出陣の令を出し、兵士達が慌しく出陣の準備をしていた。
相手が少人数と言う事で、近隣から兵の召集をかける事はなかったが、それでも大分の人数が集まり、エッジの隊は、明日夜になる前には小さな集落に陣を張り、そこで指令を出す流れになった。
リディア達は同じ迎えの玄関で、近衛兵のみの見守る前でエッジに刀を簡単に手渡した。

「それじゃ、行ってくるぜリディア!!カレン達、後は頼んだ。難しい事はじいとか宰相に任せてあるから、まぁ一緒に城を頼むわ!!」
「うん!エッジもね!!」
「心得ました!」
四人は連れ立って中庭に出ると、エッジは馬にまたがって手綱の調子を確かめている。軍馬達の体調はまだ不安定だった為、兵たちは訓練中の馬、エッジはハヤテに乗っての出陣となった。
 
「―――気をつけてね…っと、ご武運を…お祈りしてます。」
近衛兵の前で、抑えた口調でそう告げると、エッジの目が優しく細まる。
「ああ。城の事は頼んだよ。」
 
片手を挙げて手綱をさばくと、ハヤテは城門の方に向き直った。近衛兵隊長がリディア達に一礼し、エッジと共に城門へ馬を走らせる。リディアは城門から出てゆくエッジの姿を、小さくなるまで見つめていた。

―――エッジ、必ず…必ず、帰ってきてね!!



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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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