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ちょっと待ってて下さいね…今ブログ生き返らせますので…(涙)
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「では、お待ちしてますからね!!」

円陣が解かれるとリディアが振り返る間もなく、女官達は一礼して部屋を後にした。
「いや~参ったなぁ。あいつらのパンだったのか…悪い事しちまった。」
「エッジ。面倒見るって何?何話してたのよ?」
それには答えずに、リディアに座る様促す。
「とりあえず、今夜は一息つけるな。明日…どうなるか判らねぇけど。」
「うん。戻ってこれてよかったね。てっきり、兵隊さん所で泊まりかと思った。」

「いや、戻ってきた、んだ。」
「え…そうなの?」
先ほどの乗りからすれば、思いも寄らぬ返事。事態は深刻なのだろうか。

「明日から本格的になる。まだ武力衝突の詳細も判らない。あれだけ人数の差があれば大丈夫だろう、と楽観する空気もあるけど、そうは行かない―――今日の昼の交渉、場所の施設が、爆破されたんだ。」

「え!?」
深刻な事態の想像を遥かに超えた言葉に、思わず声があがった。。
「―――!!何で!?あの人たちがやったの!?自分達の仲間も居たんでしょ!?」
エッジは立ち上がり、窓の外を示す。確かに、城下の軍事施設は、遠目からも判る程多くの明かりが灯されており、活発な動きが伺えた。一晩中明かりが消える事はないだろう。

「原因はわからない…こちらの騎兵隊長は外に居て無事だった。歩兵隊の班長が、身代わりを申し出たんだ。中にいたのは―――全滅だろう。市街地にいた互いの兵が小競り合いになったが、今はエブラーナの軍が街を包囲している。」
「そんな…」
交渉についたのは互いのいわば使者の様な立場の者たちだろう。どちらかに何かがあったとは考えにくい、と言うのはリディアですらも判る。
少人数の蜂起だというのに、何故そんな事が起きたのだろうか。

「まぁ、どの道今日は寝なきゃいけないし、朝日が登る前に施設に帰るよ。でも良かったよ。お前がそんな事になってるなんてさ。―――改めて、悪かったな。」
「エッジ…そんな…そんな大変な時、私―――ごめん…」
「いやいやいや!!俺、まぁ、お前足止めしたの…俺が、お前に側にいて欲しいって言うのもあったしさ。まぁ色々忙しくてロクに相手できないのに、本末転倒ってヤツかもしれないけどさ。」
「…エッジ…」

これ以上、ごめんなさい、というのもそらぞらしく気が引けた。
そもそも、何でこんなタイミングでこの国に来てしまったんだろう。 帰る方法があったとしても、はや戦、という今とても帰る気にはなれない。 勿論、エッジは何があっても自分に援護を求める事はしないだろう、と言う事も 判ってはいたが、それでももどかしさがぬぐえない。
 
―――何が出来るの?
―――今の私に…
 
家老の言う事は絶対に違う。守るための戦いに出てゆくのは、望まれればかまわない。 けど、エッジの望む事は一体どこなのか。
「じいの言った事は…俺のせいってやつだよ。俺も結構、熱くなると見境なくなっちまう。お前もこのごたごたが終わるまで帰れねえしな。まぁ…いい機会、かもしれねぇ。」
「エッジ…あのね、私…助けになれるなら、何でもしたいんだけど…」
エッジの話の筋が微妙に崩れてきている。何を言いたいのかがつかめない。傍にいて欲しい、と言う事と、国が問題に巻き込まれている、と言う事。

「エブラーナの統治者として、お前に頼みがあるんだ。どうか、力を貸して欲しい。」
「えっ…う、うん。」
戦いに参加する事ならかまわない。リディアは頷く。相手が魔道師を擁しているなら、こちらもそうした方が良い。攻められているのはこちらだし、他国の魔道師とは言え、一人援護に加わった所でエッジの顔がつぶれる事もないだろう。
「うん。一緒に戦うよ。」
しかし。その言葉に、ばか、とエッジの口元が動いた様だった。
「お前1人出てこなくったってね、ウチは優秀なの揃ってますから。だから…戦場でなくて、この国の民の―――俺の、後ろ盾になって欲しいんだ。」
「後ろ盾…?」
てっきり、出陣の話かと思ったが、意味が違うらしい。

「エブラーナには、今、王家の人間は俺一人だ。親兄弟もいないし、変わりに治める人間も。俺しか民が拠り所に出来る存在がない―――俺が王家とか名乗る奴を相手に出陣した何て広まったら、民の心が不安定になるのは目に見えている。」

エブラーナが完全な王の独裁政治を解いたのは先々代の事で、まだ議会等の力も弱く、国の宗教はあるがそれに頼る政治はしていなかった為、王の存在は大きな物だった。今エッジに何か起これば、統率する者のなくなった国が非常に乱れる事は判っている。
しかし、やってきた敵は王族を名乗る者。

「民がそちらへ気持ちを一つに出来るか、単に王家はその為の象徴だと思う。でも…俺一人じゃ、どんな強くても民を安心させてやれねぇんだよ。だからリディア、お前に…」
民を安心させられる、と言うのは何の事だろう。珍しく遠まわしに物を言うな、と、リディアは首を傾げ、言葉の続きを待った。
「俺に、力を貸して欲しいんだ。」
「…判らないよ、エッジ。私に、何が出来るの?」
ランプの明かりが一つ消えそうになっている。リディアはそれに手を伸ばそうとするものの、自分を見据えるエッジの面持ちに手を止めた。

「いずれ言おうとは思ってたが…王家の人間として、俺の傍にいて欲しいんだ。」
「…え…?」

止まった手を下ろすのを忘れ、目を見開く。

―――王家の…人間?
―――どういう事…?
 
一瞬、その言葉の意味が判らずに、自然にリディアは首をかしげていた。
 「それは…私に、ここにいてって事?でも何が…」
エッジはただ、ああ、と頷く。
「俺はお前を、必ず守ってやる。だから…帰らないで、俺と共に戦ってくれ―――」
 
―――え…?えっと、何を…

エッジは、戦うな、と言った。お前1人出すよりも優秀なものは多い、と。それなのに、今度は戦ってくれ、と言う。どういう事なのか。
 
「いや…すぐにお前の気持ちが向かないなら、せめてこの戦の間だけでも、俺の、 いや民の後ろ盾になってくれないか?…俺一人じゃ、心もとないんだ。俺自身も… そしてうちの国の民も。」
「王家の…人間?」
共に戦ってくれ。その言葉が、エッジから出るのは意外だった。そして、王家の人間として、と言う言葉だけが理解を超えている。
 
「俺の、最も近しい女性として、隣に居て欲しい。」
「何で?何でそんな事―――王家、って…」

いきなりの申し出。エッジが国を案じるのはわかる。でも何故、それに自分が必要なのか、判らない。 そして、何故自分がエッジと同じ王家の人間にならなければいけないのか。確かに、王家の人間はエッジ1人とは聞いた。そしてそれにつけこみ、末裔を名乗るものが戦いを挑んできている。自分が王家の人間の役をする、と言う事なのだろうか。 1対1なら人数だけ増やしてどう、という単純な問題でもないだろう。

―――そんなに…人手がないって事はないよね…
 
 「エッジ、ちゃんと説明して…お願いだから―――どうして王家なの?」
何時にもまして真剣な面持ちに、逆に不安が掻き立てられていた。一体、何を言っているのだろう。
「私戦えばいいの!?戦場に一緒に行けばいいの!?それとも、エッジの側に―――」
 「…俺の側に居てくれ。って言うんじゃ駄目か?この国に、ずっと。俺が…国の民の為にも、俺の…愛する人の為にも、負けたくないってずっと思える様に。」
いよいよ、大きく見開らかれる碧の瞳。
いきなり、全く予想のしなかった言葉が耳に飛び込むが、その人が誰なのか、と言う微かな疑問―――いや、ほんの僅かに確証の取れない確信が、リディアの心臓を大きく高鳴らせた。
「愛する人、って…?あ、あの…ま、待ってよ…」
うろたえるリディアの足元にエッジは跪き、ローブの裾を取った。
「エッジ!!」

「リディア―――翡翠の姫。俺と共に、エブラーナの民に希望をもたらして欲しい―――」

―――え…
―――エッジ、何でそんな所に…居るの…?
―――本当の事…なのかな?

自分を足元から見上げる男は、見知ったエッジとは全く違うものに見える。今彼が言った事は現実なのだろうか。夢が覚める時の様な眩暈の感覚。しかし目を閉じても、その世界が変わる事はなかった。

現実だと覚悟した瞬間。頭に、胸に、手に、そしてローブを押し頂かれた足のつま先まで、ものすごい速さで血が巡るのを、リディアは感じていた。自分を見上げるエッジの目は、真摯に求婚を申し込む一人の男のそれだった。自信過剰で気位の高い所もあるエッジが、自分の足元に跪いている。何時もの冗談、と言う空気は微塵も感じられない。
微かに、足が震えた。

「あ、あの、エッジ、私―――そんな、そんな事急に言われても…」
自分に対してどんな感情を抱いているか。勿論気がついてなかった訳じゃない。真っ赤になり、必死で言葉を選ぶリディアの姿を、エッジは立ち上がり、優しく見据えた。

「判ってるよ。俺も、こんな状態の時に言うのはちょっと卑怯かなって思った。でもさ。ウソは言ってねーから。俺。」
「うそっ…ウソだウソ!いっつも…ウソついてたじゃんっ!」

慌てて首を振るが、エッジの態度が真剣な事は既に気がついてしまっている。でも何故、こんな時にそんな事を言うの、となおもリディアは首を振り続けた。
 
 



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プロフィール
HN:
tommy
性別:
非公開
自己紹介:
FFは青春時代、2~5だけしかやっていない昭和種。プレステを買う銭がなかった為にエジリディの妄想だけが膨らんだ。が、実際の二次創作の走りはDQ4のクリアリ。現在は創作活動やゲームはほぼ休止中。オンゲの完美にはよぅ出没しているけど、基本街中に立っているだけと言うナマクラっぷりはリアルでもゲームの中も変わらない(@´ω`@)
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